キジンとデス・イーターの章4
戦いの前デス。
あかきは考える。デスたちがこの場に着くまでの間に。昨日まで普通の高校生だった(もう4月から大学に行くから大学生か?)のに、いつの間にか当たり前のようにこんなところにいる。いつの間にかデスと呼ばれる宇宙人たちと戦い、未来から来たというキッピーやしんごという(変な)やつらと一緒にいる。キッピーたちは未来を取り戻せると信じ、未来の悲劇もすべて知っている。だけど、俺は何も知らずここにいる。いいのだろうか?一応、俺にも力がある。もしかしたら、キッピーたちはその力をただただ、利用しようと考えているのだとしても、俺は一向に構わない。俺は、それでも1度、友達たちの死を見ている。体験している。俺の力を利用してくれて一向に構わない。そう、一緒に戦わせてくれるのならそれで・・・それでいいんだ。あかきの瞳には、キジンたちの光が宿っている。まだその力を使っていないのに、その瞳にはキジンたちの意思が確かに流れた。
キッピーは思う。あの日まで俺はただの旅人だった。そう、空っぽのただの旅人だった。何の目的もなく、ただただ生きていた。ただただ、足りない好奇心の穴埋めをするだけの日々を過ごしていた。それでも、埋まるのは一時だけ。何も残らない人生を歩んでいた。今は、違う。仲間たちには悪いが、俺は地球だけのためには戦っていない。自分のためだ。デスを殺すのも、すべて自分のため。なんやかんやで、ただの自己中に過ぎない。だが、後悔も後ろめたさもない。結果、人類のためにつながってるんだ。自己嫌悪と自己満足の狭間でもがいているけどな。ジャンキーだし。それでも、俺は自分のために人類と地球の未来を背負おう。俺にできることはそれだけだ。それしかできない。
あかきは、空を見上げ、真剣な面持ちになっているが、どこか笑っているようにも見える。過去にいるので力はほとんどない。なのに、妙に力強い。早く、力を使いたくてしょうがないって感じだ。
キッピーは顔は上を向いていたが、目は下を向いている。リラックスしてるのだが、どこか焦燥しているような印象を与える。無理もない。どんなにデスたちを殺戮してきても、心の根っこにこびりついた恐怖は簡単にはなくならない。
しんごは、2人を見守りながら空を見上げた。キックは、久しぶりに会っても相変わらずで、いつものように頼りになる男だ。いつの間にか、自分のほうが年上になっていたが、それ以上にキックは大きくなっているように思える。でも、少し感じが変わった。以前のように芯の底から滲み出ていた禍々しさが少しだけ薄れている気がする。何人も寄せ付けないようなそんな雰囲気があったが(でもそれ以上に惹かれるものがあったから一緒にいるし、リーダーなのだが)、今では優しさも感じる(それなりには以前からも感じてはいたが)。キックにすれば、自分と別れてから数日しか経っていないはずなのに。飛躍する何かが起こったとでもいうのだろうか?
それもこれも、完全にあかきによるものだろう。あかきがどう思っているかわからないが、自分たちには考えられないほど、キックはあかきを守っている。それだけに、怖い。キックが無理をしすぎてしまうことが。そんなことはないだろうが、キックには今と言わず、自分たちの世界を・・・デスどもから取り戻した後でも、存分に生きて活躍してほしい。いや、してもらわなければ困るのだ。だから、自分は何としてでもキックを守る。
それにしても・・・。しんごは胡乱気にあかきの横顔を盗み見る。こいつには・・・本当に守る価値はあるのか?・・・としんごが疑問視するのも、しんごはあかきにキジン化の能力があることを知らないからだ。なぜ知らないのか?・・・それは、単に話をしていないから。なら、なぜ話していないのか?それは、単に話し忘れてたからだ。しんごは、キックとあかきを同時に見て思った。あかき、足引っ張るなよと。完全に余計なお世話だ。
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