キジンとデス・イーターの章2
会話してます
まだ、俺たちはあかきの時代にいる。傾向と対策だ。どうしようか悩んでいた。どうやってまたあの宇宙船に乗り込もうかと悩んでいたのだ。しかし、そこにもちゃんとしんごには考えがあるらしい。奴らと会話したのは確かに有益だった。命を懸けた甲斐があったのだ。実際には本当に危険はなかったのだが、下手をしたら間違いなく殺されていただろう。でもご安心あれ。しんごは今後、またデスどもに誘拐されてもすぐに逃げますから。
「聞いてくれ2人とも」
急に改まるしんごに、2人ともちょっとだけ緊張に色を見せる。しんごはちょっと深刻すぎたかと後悔しつつも、それは表に出さずに無駄に小声になる。ひそひそと。
「俺の命がけで得た情報によると、奴らはミステリーサークルと呼ばれる印でほかの仲間とコミュニケーションを取っているらしいよ」
「あのミステリーサークル!?」
「知ってるのか、あかき?」
しんごとキッピーの態度に逆に驚くあかき。無理もない。未来ではもはやミステリーサークルなんて話題にも上らないほど過去の産物と化しているのだ。あかきが一生懸命ミステリーサークルのことを説明するも(しかもそれが本物だと知り、かなり興奮しながら)しんごとキッピーは「へー」と言うだけであまりにも反応が薄く、そのことであかきがさらにヒートアップするも2人にはあまり伝わらず、途中であかきはあきらめた。
あかきの興奮に反比例して、キッピーがあまりにも冷静に話し始める。
「あかきの興奮ぶりはともかく、単にそのミステリーサークルってやつで奴らをおびき出して、まんまと近づいてきたら乗り込んで、そのまま奴らの船を奪い取ろうってことだろ?」
珍しく、キッピーがセリフを捲し立てた。そのことで、しんごの顔が引きつっている。キッピーがしたり顔でにやけた。しんごが不意に悲しみの顔で歪んだ。キッピーの口元から「くううううう」と笑い声を必死に抑える声が漏れ、しんごが膝から崩れ落ちた。あかきが慌ててしんごを抱きかかえると、しんごは力なく、「ひどい男だよ、キックは」とだけ言ってため息をついた。あかきはなんのこっちゃと状況を理解していない。キッピーはそんなしんごは完璧に無視して、しんごが言いたかった話を続ける。
「じゃあ、しんごにあかき。そのミステリーサークルってやつはどんなデザインにするか考えようぜ。で、そもそもどんなデザインのがあるんだい、あかき君?」
妙な言い方をするキッピーにさらに落ち込むしんごを見て、やっとあかきにも理解できた。軽くキッピーを睨み付けて、しんごに説明するように促した。しんごはあかきに「ありがとう」とつぶやくと、目をこすって深呼吸した。キッピーがやれやれと薄ら笑いを浮かべる。あかきがそんなキッピーをさらに睨み付けると、「怖い怖い」と言いながらも口笛を吹いて悪びれる様子もない。別にいいけど。
気を取り直してしんごが言う。
「ミステリーサークルってのいろいろな形があるようで、単純な丸から複雑な幾何学模様まで様々。でもやつらもその模様があるとどこでも出てくると、一応全部確かめているようだ。その大半が、初めに奴らが作ったやつを誰かが真似して作ったらしいが、それでもデスどもはひとつひとつ確認している。てことは、奴らにミステリーサークルの区別や特有の形もないと思える」
「じゃあ、どんな模様でもいいってこった」
「ああ、そういうことになるな。奴らがそれをミステリーサークルと認識して確かめに来ればいいんだからな」
「じゃあ、また単純に丸でいいんじゃないの?」
あかきに意見にキッピーどころかしんごも苦笑いを浮かべる。「なになに?なんか変なこと言ったか俺?」
キッピーがやれやれといった感じで答える。しんごは横でうなずくだけだが。相変わらず出番少ないなーしんごは。
「あかき、ただの丸なんてダメだろ。むしろダメに決まってるだろ。おもしろくないし、なにより、オリジナリティーがなさすぎる。だめだめ。まじでダメダメ。怖いね。もうここまで来ると怖いね」
わざとらしく震えてみせるキッピーとうなずくだけで何も言わないしんごに、さすがにカチンときたあかき。じゃあ何かアイデアでもあるのかと2人に問いただす。しんごは無言で「当たり前じゃん」とうなずくが、ジーとみると顔をそらした。まだ強がっているらしい。何も考えてないな。しんごに構う必要はもうないらしい。ならば馬鹿にしてきた張本人、キッピーに目を向けてみた。しんごとは対照的に、キッピーは自信満々だ。いつもだが。なにか案があるようだ。
「しんごの名前を書いたらいいんじゃねー?」自信満々にそう言い放った。「えっ!?」と当然聞き返す2人。「なんだよ?」とキッピー。「なんだよじゃないだろ」としんご。
「だってお前、どうせデスどもに名前も名乗ってないんだろ?・・・この際だ。教えてやれよ。お前の名前を。知らしめてやれよ。お前という存在を」
キッピーがしんごの肩に手を置く。その眼を見たら、マジだ。全くぶれてない。しんごだけではなく、あかきもつい「うへーーー」と声を漏らした。でも、ほかにアイデアもない(出してもキッピーに却下されただけだけど)。だがしかし、しんごはごねた。
「やだよ。そんなのできるわけないじゃん。そんなんじゃデスどもだって相手にしねーよ。だめだめだめ。無理無理無理」
「なあ、しんご。やってみよう。やってみなきゃ相手にするもしないもわからないだろ?」
あかきも、だんだんめんどくさくなってきたので、キッピーに加担してしんごを説得する。どちらかというと、自分の名前にするとか言い出されると嫌だったので説得したのだ。しんごは、「えーーーー」と言いつつも、なんだか満更でもなくなってきている。それはあかきが、「でも、かなり目立って注目集めるよね。失敗してもなんにしても」と言ったからだ。段々とだけど、あかきにもしんごの性格が分かってきたようだ。あまり出番のないしんごは、少しでも目立つことがあるならやりたがるのだ。にやっとしんごにはわからないようにあかきに笑顔を見せるキッピー。
「よし、じゃあ決まりだ。じゃあ、その場所に連れて行ってくれ、しんご」
まだ、どこか納得していないような顔を見せるしんごだが、瞬間瞬間に隠せない笑顔になるからいいのだろう。計画はこうだ。しんごがデスどもの宇宙船から脱出した瞬間に合わせて、しんごの名前ミステリーサークルを完成させる。それをデスどもに見せつける。呆気に取られてるデスどもに、そのまま奇襲攻撃を行い、宇宙船を奪い取る。
「てな流れでどうよ」
キッピーの問いかけにあかきもしんごも「いいよ」と答える。キッピーが得意げになって手を大空高く突き上げて叫ぶ。改めて確認するが、ここは渋谷のど真ん中だ。
「よっしゃー、じゃあ決まりだ!!!行くぜーーー!!!!」
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