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キジンとデス・イーターの章

新章です

俺が見上げる空は、いつも青空だ。あの空にあるのは希望だけだと思っていた。なのに、まさか、あの空がこれほどまでに脅威になろうとは。あの瞬間までは思いもしなかった。青い空。宇宙。地球。キジン・・・デス・・・デス・イーター・・・しんご。俺の人生にはまるで関係なかった事柄が、今では俺の人生の核をなしている。また俺は空を見る。空は、いつの時代も裏切らない青空だ。あの日もあの青空に救われた。雲がひとつ、二つ、三つ・・・青の中に白が3つ。今の俺たちのようだ。そう思うだろ。しんご・・・キッピー。雨の時は空なんか見ないだけだけどね。傘差しているし。

 あのときは、あかきの時代を守れた喜びから空を見上げることができたけど。今でも空を見上げることは、俺にとって怖くてたまらない。あの空を見なくなってから、もうどれくらいになるのだろうか?あの日以来、俺はこの空が怖くなってしまっている。特に、こんな青空の時だ。空が青ければ青いほど、澄んでいればいるほど、怖い。あの青空がまた真っ暗な闇の中に消えてしまう恐怖。そんなもの、俺はもう体験したくない。あかきはよく、あの空を見ている。なんだかうれしそうで、うきうきしているように見える。それは、きっとあかきだけじゃない。人類みんなそうなのだろう。俺は、そいつを守りたい。その思いを守っていきたい。この恐怖を打ち殺してでも。でも、えーと、ふー。俺は、そのために生きているんだ。必ず、俺もいつかあの空を見上げられる日を・・・。

 しんごが教えてくれた。次にどこに行けばいいのかを。実際にその時代に行って、実際に会って見てきたそうだ。何に?って、当然デスたちにだ。80年代のアメリカ合衆国。よく見つけたなーと感心していたが、どうやら見つけるのにもコツがあるらしい。さすがに、不本意ながらも(といってもしんごの意思だが)初めに10年前にタイムスリップしてしまっただけのことはある。

歴史上、どうにも説明できない事柄が存在するのは当然だが、その原因の一部にデスどもが関わってるのではないかとしんごは考えたのだ。UFOの目撃談、怪事件、その他もろもろ。その中には嘘やでたらめも多いが、調べてみる価値が大いにあると考えたのだ。

 もっとも、デスどもの頼れる情報も、デスどもをやみくもに探せるほどの時間も人材もないだけだが。おかげでしんごは、また2年の年を取っていたが。今ではなんやかんやで1番の年上だ。誰もそんなの気にして接してはいないが。(あかきだけは、まだしんごと話しなれていないらしく、話し方がぎこちない)

 「今回会うデスたちは、少し変わっていた。話をしたんだけど、今までのデスたちと違って思ったほどの不快感はなかった」

 今の時代はあかきの時代。しんごはさっきまでデスと話をし、そこからすぐにキッピーのもとに来たのだ。キッピーからすれば、1週間前に会ったばかりだからそんなに懐かしくもないが、しんごにとっては2か月ほど経っていた。時間の流れがよくわからなくなる。

 「話をしたって!?だ・・・大丈夫だったの?」

 あかきが声を荒げて驚いた。キッピーはというと、意外にも驚いた様子だった。さすがにそんなことまでしているとは思わなかったのだろう。あかきが大声を出したおかげで、また周りを歩く人々に白い目で見られてしまった。てか、なんでそんなに人ごみの中で話をしているんだと思われるかもしれないが、しんごにとっても、そしてもちろんキッピーにとっても、人々の中にいることはとてもうれしいことだったのだ。未来には人がほとんどいない。いたとしても、出会ってもそのほとんどが、生き残るためにほかの人間を殺す。殺してでも生き残ろうと考えているのだ。そんな暗いことはあかきにはわからない。わからないので説明はしていなかったので、あかきにとってはただ話しがしにくい場所なだけのようだが何も言わないでいる。

まあどうでもいいが。それはそうと、しんごは少し得意げになった顔であかきとキッピーを見た。口元が緩んでいかにもバカ顔だ。あかきは、それでもデスたちに会ったということをまだ心配しているようだが、キッピーはどうにも不快そうだ。しんごは気にせず、ますます口元を歪ませた。キッピーの拳がしんごの頭に突き刺さり、しんごはおとなしくなった。

「お前の力で殴んなよ!!マジで痛い。マジで、痛いから」

ギラッとキッピーの睨みに臆したのか、しんごは黙る。頭を擦りながら、何かぶつぶつ言っていたが、もう文句は言っていない。

「そんなことより、話してどうなったんだ?なんかされたのか?」

殴っても一応は心配しているようだ。あかきは殴られたことにも心配しているが、そのことに対してもっと心配している。また「大丈夫だったの?」と聞いてきた。

「ああ、なんてこたないね」

今だから言えるが、ここにデスがいないから言えるが、本当はめちゃくちゃ怖かったのだ。泣くのも漏らしてしまいそうになるのも、必死に堪え、無理に強気で話をしていたのだ。それもそうだ。相手は未来の地球を支配している連中の仲間だ。下手をすれば一瞬で殺されると思っていた。

情報では、その時代、宇宙人に誘拐された人間がいるというが、不思議と誰も殺されずに戻ってきていると聞いていたのでそれを信じたのだ。それでも、初めは会って話そうなどこれっぽっちも(欠片も)考えていなかった。だから空を見るだけで、「いるかなー?」程度で宇宙船を探していたのだ。そしたら、なんと突然光に包まれて、気が付けば、デスどもに手足を縛られ、捕らえられていたのだ。たまたま、というかお守り代わりに奴らの装置を持っていたから、いつでも逃げだせてよかったが。だから話もしてみたのだ。本当に怖かった。

「デスどもも哀れだぜ。奴らも星を乗っ取られて仕方がなくここに来たようだ。しかも、過去に来たデスどもは、未来の奴らのやり方が気に入らないようだぜ。だから反発して過去に来たらしい」

「・・・」

「だ・・・だからって、デ・・・デスどもを全部こ・・・殺すことには変わりないが」

「・・・その通り」

「・・・ああ」

なんだか、雰囲気が暗くなってしまった。誰にとっても、デスたちは殺すべき、憎むべき敵だ。そこは動かない。なのにしんごは、余計な同情心を感じさせるようなことをうっかり言ってしまった。あかきは、複雑な表情を浮かべ、キッピーはどこか遠くを見ているような表情をしている。

「っていっても本当に関係ないけどな」

しんごはごまかすようにでかい声で笑った。結果、もう一度キッピーに頭を殴られたことは言うまでもないか。


ここまで読んでくれた方がいるなら

ありがとう。次もよろしく!!

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