デス・イーターの章8
感情も空気も読めない
「よう」
俺が声をかけると、アッシュはうにうにしながら振り向いた。そこから感情はやはり読み取れない。「退屈」かと聞くと「特に」と答えた。どうでもいいがな。
「見てもらいたいものがある」
俺はさっきとは違い、その場に今度は簡易な机を置き、以前に宇宙船から奪ってきたモノを広げた。アッシュを見ると、何やら不安がっているような、にやけているような、・・・やはり読み取れない。ただ、淡々と話し始めた。
「ねえ、キック」
アッシュはすでに俺のことをキックと呼んでいた。
「あん?見覚えあるのでもあるのか?」
まだモノを一度も見ていないが、一応聞いてみた。アッシュはかぶりを振った。見覚えないのかよ!?と突っ込む前にアッシュは言葉をつなげた。
「体は、大丈夫?」
「おかげさんでな。それがなんなんだよ?」
そんなことより机の上のモノをよく見ろ。って言おうとしたが、アッシュがやはり言葉を続ける。その内容に俺は呆気にとられた。アッシュの感情はやはり読み取れない。
「君さ、僕らの仲間食べてたよね」
「見てたのか?」そりゃ目の前にいたから当然か。
「ま、まあね。でもまあ、そんなことはどうでもいいし、仲間を食べられたことに対しての怒りなんてない。でも、あの場面でいきなり食べたことに関しては驚いたけど。・・・そんなことも今はいいんだ。僕は君たちから見たら宇宙人だし、この星の文化は一通り勉強したけど、書物に記載されてないことだってあるのはわかってる。僕だって自分の星のことを全部知っていたわけじゃない。この星ほど、歴史っていうのをあまり重要視してなかったからね」
「・・・話が長いな。宇宙人の文化だと、話が長いのは常識なのか?回りくどいと嫌われるぜ。誰かに」
「それはごめんなさい。いつの間にか少し話が反れてしまった。問題は、食べたこと自体にあるんだ。君たちが普段食べているのは、ある意味、君たちの遺伝子に刻まれているものだから食べても平気なんだ。食べても無害。でも、僕たちは違うよね?この星にはない遺伝子を持っている。キックはそんなものを食べたんだ。体が、いや、遺伝子が拒絶反応を起こしてもおかしくない。それがどんなものかは想像もできないけど、まともでいられるとも思えない」
「・・・そうなのか?今のところ何もないが」
「そう・・・ならいいけど。一応気にはしておいて。で、キックの話はなんだっけ?」
俺は、めんどくさそうに机の上に並べたモノを指差した。アッシュも思い出したように「あ、それね」といい、机に目をやった。あまり関心もなさそうだ。
「これは、テレビ(てきなやつ。正確に言うと持ち運びの小型ビデオみたいなもの)。こっちは歯ブラシ(のようなもの。正確には口の中を完全に殺菌するもの)。これは簡易トイレ(そのまま)・・・これは、こ・・・これは?これは!!!!」
「なんかあったのか?」
感情が読めないで有名なデス(俺の中で)だが、この時だけはわかりやすいほどにわかった。もしかしてこいつら、ただのポーカーフェイス?これもどうでもいいが。アッシュはその驚いていたモノを手に取った。慎重に、少し震えながら。でも、手に持つときにはその震えが止まっていた。誤作動を起こすわけにはいかなかったらしい。なんだというのだ?俺は、それをまじまじと見た。手に取ろうとしたら「だめーーー!!!!」と大声を出されたので手を思わず引っ込めた。やはりポーカーフェイスなのか?ただのポー・・・くどいな。
「で、これはなんなんだ?」
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