デス・イーターの章7
なんかシュール
アッシュは、何も答えなかった。どこか、しかたがないという空気を出している。その空気自体を俺はアッシュの出した答えだと判断し、続けた。
「文句があっても抵抗するけど。そこでここからが本題だ。お前・・・アッシュは、これからどっちに付く予定だ?」
アッシュは、すぐには答えられない。当然だ。選ぶ答えによってはどうなるかわかったもんじゃない。それか、俺が言ったことの意味が伝わらなかっただけかもしれなかったが。俺は、アッシュをじっと見た。
どうでもいいが、アッシュが答える前にいろいろ言っておこう。なぜ、アッシュが言葉(今は日本語)を話せるのかと言うと、地球に来てから退屈だったのでこの星の失われた文化を勉強していたらしい。失われたと言われるとお前らのせいだろ!!!と大分腹立つが。食事は、おもに草らしい。でも、最近では動物を食うものも出てきているらしい。本当に地球人化してきたな。我が物顔だな。本当にイラつく。俺の手足は、本当にそこら辺のガラクタから作ったらしい。それはまじで感謝している。
そろそろ、アッシュが重い口を開きそうだ。「僕は・・・」ほらね。
「僕は、君たちに付くよ・・・えと」
「キッピーだ。みんなからはキックと呼ばれているがな」本当に親しい奴からは。キッピーじゃかわいすぎるらしい。一応あかきにもそれは言ったが、彼は頑としてキックとは言わなかった。照れだろう。
「ありがとう。・・・キッピーたちの気持ちはよくわかるし、なんせ僕たちも体験者だからね。それに、今、向こうに付くなんて言ったらキッピーにこの場で殺されちゃう。命あっての物種とも言うし。・・・でも、僕は直接は戦わない。仲間を裏切ることもできないから。あくまでも、立場は中立にさせてもらうよ。それで、それが気に入らなければ殺してよ。その覚悟もできてる。だって、キッピーに攻撃されたときに生きていたこと自体が奇跡だったんだから」
俺は、言葉を終えたアッシュのことを、やはりじっと見た。そして立ち上がる。そして手を差し伸べた。
「俺も、お前と同じだ。あの場で死んだ身、今さらお前を殺す気はない。さっき言ったありがとうの言葉は、はずいが本音だ。アッシュの気持ちもよく分かる。・・・中立。それだけでいい。それでも、中立になると言う前に俺の手足を何も言わず治してくれたんだ。例えそれが生き残るためにいやいやだとしても、俺はその結果に感謝している。だけど、これだけは言っておく。俺のことはキックと呼びな。中立でも、俺は仲間だと思っているから」
アッシュもそっと手を伸ばしてきた。アッシュには、きっとわかっていたと思う。例え、俺たちと敵対すると言っても、俺に殺されないと。そう、なんという答えが待っていても俺はアッシュを殺す気なんてなかった。命の恩人を、殺せるはずがない。人類と宇宙人だ。アッシュは疑心暗鬼の中でそれでも、自分というものを通したのだろう。結果、初めて、違う生命体同士、分り合えたのだ。
俺はアッシュを部屋に一人残し、仲間に事情を話に大広間に向かった。大広間と言っても昔の駅のホームのことだが。そこにはみんながすでに揃っている。俺が来ると、みんな一斉に安堵の顔をしてくれた。俺は思わず手を振った。その手を見て、みんな重い表情になってしまった。みんな事情は知っている。なので素直には喜べないでいる。俺は苦笑いし、咳ばらいをした。
「まあ、とにかく生きているのは見りゃわかるか。・・・みんな知っていると思うし、大きな声じゃあ言えないが、デスがこの場にいる。知ってるも何も、むしろみんながあの部屋に閉じ込めたんだと思うが」
みんなの様子を見渡す。誰もが深刻な顔をしている。みんな、あのアッシュが怖いのだ。気にせず、続けて言う。
「これは、この状況を俺はチャンスだと思っている。今こそ、あの計画を実行させる時じゃないのかと」
「・・・奴らの船を奪い取る」
誰かが言ったので、俺は「それだ」と人差し指を突き出した。
「今の今までは、奴らの船に乗っては、ただひたすらぶっ壊してただけ。言うまでもないと思うが、理由は簡単だ」
「・・・操縦できなかったからだね」
この相槌に対しても俺は「そう」と言いながら今度は小さくも何度もうなずいた。
「だが、今回はその問題に対しても僅かながらに光明が見えた。あのデスは、操縦もできそうだ。俺の手足を難なく治したんだからな」
「・・・あのデスがそう言ったのか?」
俺はかぶりを振る。「なんとなくだ」とボソッと言ってみたら、みんな嫌な顔をする。それは無視する。
「なんとなくだが、少なくとも俺たちよりも確実にあの船には詳しいだろ。それに、奴らから回収したガラクタ(なんだかわからないのでとりあえずそう呼んでいる)の正体も少しは、と言うか完璧にわかるだろ」
「・・・もしそれが、強力な武器かなんかで・・・もし」
「しーー」俺は口に人指す指を当てた。静寂の中にいるように静まり返る。耳鳴りがする。
「俺は奴と会話した。・・・のはもうみんな知っていると思うが、やつはそんなことはしない。・・・と思う。まだ何もわからないことだらけ。・・・だが」
「・・・いつもの直感?てやつ」
「はっ。そう、その直感てやつ」大げさにため息混じりに言ってみた。
「とにかくだ。何かあれば俺はあいつを速攻で殺す。そうすることができる自信はある。だから、今言ったことを試してみる。それでいいかいみんな?」
みんなから答えも待つまでもない。聞いときながら、みんなの返事を聞かずに俺はアッシュのいる部屋に戻った。相変わらず、アッシュは部屋でうろうろしていた。うろうろするほどの広さもないし、部屋自体に何もないが、アッシュは実に退屈感を漂わせずにいる。もしかしたら、宇宙の旅自体も退屈で、退屈を潰す術を熟知しているのかもしれない。もしそうなら、教えてほしいものだ。もっとも、今の俺には退屈なんて一つもないが。
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