あかきキジンの章2
よろ
キッピーはかぶりも振らずに答える。無感情に、ただ答えた。「やつらの宇宙船だ」と。そう言うなり突然駆け出した。その闇に向かって一直線に駆け出した。ま・・・待てよ!!!俺もつられて走り出す。恐怖はなかった。いや、もうそれどころじゃなかった。いろいろな感情が駆け巡る。それこそ嵐のように。そこに生まれた一つの答えはもうわかっていた。俺は奴らに会う。まず会わなくてはならない。そうしなければ逃げることもできない。逃げ方がわからないのだ。やつらから背を向けるか。挑むか。選ばなければ逃げられない。
「付いてくるな」
キッピーはまだ一度も振り返らない。かなり足が速く、付いていくのがやっとだった。だが、宇宙船にはどうやって行く気なんだ?わからないがとにかく付いていった。周りを見る余裕なんてなかったが、まるで焼け野原のようで、異臭に満ち満ちていた。本当は、見ようと思えば周りを見る余裕はあったのかもしれない。本当は見たくなかった。見れるはずがなかった。だから俺はキッピーの背中だけを見ていた。その背中が不意に止まり、その背中に思いっきり激突するも、転んだのは俺だけだった。
「一応聞いておく」
初めてキッピーが俺のほうに目を向けた。キッピーという男は少しやせていて、少し陰のある男だった。青く白い服をまとい、その瞳には悲しみと怒りと憎しみと、なぜか優しさも垣間見える。キッピーの質問なんか、聞くこともなくわかっていた。キッピーが言葉を続ける前に、言葉を遮って叫んだ。
「行くに決まってるだろ!!!」
キッピーは少し驚き、隠すように少し笑う。
「俺が聞こうとしたことはそんなことじゃない。聞きたいのはお前の名前だ」
さすがに虚を突かれ、俺も少しだけ笑った。ほんの少しだけ。そして今の笑みなど忘れてしまったように、これまでにない真剣な面持ちで自分の名前を言った。
「あかき・・・雄大だ」
キッピーからも笑みが消え、真剣になる。そして言った。
「俺が持つこの装置(手のひらに乗るほどの小さな機械のようなもの)はな、あの宇宙船にテレポートできる装置だ。奴らから奪い取ったものだけどな」
キッピーが空いた手で、握手を求めるように手を差し伸べてきた。その手の反対の手を俺も出し、掴む。キッピーの手は驚くほど冷たく重かった。「そういえば、奴らって何者なんだ?」俺の質問にこたえる前にその装置が光り輝き、宇宙船に一線の光の矢を刺した。その光が消えたとき、目の前にはキッピーと、どこかの部屋の中の風景が広がっていた。キッピーが先の質問に答えてくれた。「宇宙人に決まってるだろう」と。やはり。
読んでくれたらありがとう。次もよろしく




