表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/61

あかきキジンの章2

よろ

キッピーはかぶりも振らずに答える。無感情に、ただ答えた。「やつらの宇宙船だ」と。そう言うなり突然駆け出した。その闇に向かって一直線に駆け出した。ま・・・待てよ!!!俺もつられて走り出す。恐怖はなかった。いや、もうそれどころじゃなかった。いろいろな感情が駆け巡る。それこそ嵐のように。そこに生まれた一つの答えはもうわかっていた。俺は奴らに会う。まず会わなくてはならない。そうしなければ逃げることもできない。逃げ方がわからないのだ。やつらから背を向けるか。挑むか。選ばなければ逃げられない。

「付いてくるな」

キッピーはまだ一度も振り返らない。かなり足が速く、付いていくのがやっとだった。だが、宇宙船にはどうやって行く気なんだ?わからないがとにかく付いていった。周りを見る余裕なんてなかったが、まるで焼け野原のようで、異臭に満ち満ちていた。本当は、見ようと思えば周りを見る余裕はあったのかもしれない。本当は見たくなかった。見れるはずがなかった。だから俺はキッピーの背中だけを見ていた。その背中が不意に止まり、その背中に思いっきり激突するも、転んだのは俺だけだった。

「一応聞いておく」

初めてキッピーが俺のほうに目を向けた。キッピーという男は少しやせていて、少し陰のある男だった。青く白い服をまとい、その瞳には悲しみと怒りと憎しみと、なぜか優しさも垣間見える。キッピーの質問なんか、聞くこともなくわかっていた。キッピーが言葉を続ける前に、言葉を遮って叫んだ。

「行くに決まってるだろ!!!」

キッピーは少し驚き、隠すように少し笑う。

「俺が聞こうとしたことはそんなことじゃない。聞きたいのはお前の名前だ」

さすがに虚を突かれ、俺も少しだけ笑った。ほんの少しだけ。そして今の笑みなど忘れてしまったように、これまでにない真剣な面持ちで自分の名前を言った。

「あかき・・・雄大だ」

キッピーからも笑みが消え、真剣になる。そして言った。

「俺が持つこの装置(手のひらに乗るほどの小さな機械のようなもの)はな、あの宇宙船にテレポートできる装置だ。奴らから奪い取ったものだけどな」

キッピーが空いた手で、握手を求めるように手を差し伸べてきた。その手の反対の手を俺も出し、掴む。キッピーの手は驚くほど冷たく重かった。「そういえば、奴らって何者なんだ?」俺の質問にこたえる前にその装置が光り輝き、宇宙船に一線の光の矢を刺した。その光が消えたとき、目の前にはキッピーと、どこかの部屋の中の風景が広がっていた。キッピーが先の質問に答えてくれた。「宇宙人に決まってるだろう」と。やはり。


読んでくれたらありがとう。次もよろしく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ