デス・イーターの章6
ジェントル・・・マン
言葉をしゃべれる宇宙人は、部屋でうろうろしている。その姿からは感情は読み取れない。ただ、なんとなく怒っているようだ。
「お前ではありません。アッシュと言う名前があります。お前呼ばわりなんて失礼ですよ」
「あ・・・ああ。それはすまん」
名前なんか知らないんだから当然だろ。と思いつつも、一応謝って見せた。
「それに・・・」
宇宙人・・・あらため、アッシュ(名前もあるのか)は相変わらず部屋をうろうろしている。落ち着いてられないのか?部屋は閑散としていた。閑散というと変な感じだが椅子すらなく、何もなかった。退屈しないのか?
キョロキョロと周りを見ている俺にアッシュはかなりイラついてきているようで言葉を強めた。
「それに、その腕と足を治したのは僕ですよ。そこに関してのお礼を言うべきではないのですか?」
なんだこの宇宙人は?まじめか!?そもそも、こいつらが地球に来たから戦いが始まり、俺は手足を失ったちゅうの。こいつ、そのこと分ってんのか?このまま怒りにまかせてこいつを殺すことは簡単だ。だけど、今それをするのは間違いだし、第一、あの場で感じた友情に似た感覚はまだある。アッシュはどう思っているかわからないが、治してくれたのは本当だ。こいつにもこいつなりのなにか考えがあるのかもしれないが。信用できるかもわからないが、今言えるのはただ一つ。
「ありがとう」もっとも、そもそもこれを言いに来たのだし。
アッシュは「よし」とだけいうと、もうそれ以外何も言わなかった。
「それだけかよ!!??」
アッシュは「なに?」といった感じでこっちを見てきたが、特に何も言わない。なんなんだよ?俺は、とりあえず、扉の外に転がっていた箱を手に取り、椅子代わりにして座った。アッシュにも置いてみたが、使わない。俺は、考えをまとめるように座りながら地面を眺めた。すると、アッシュが驚く行動に出た。俺のこの何気ない行動に本気で心配してきたのだ。
「どうかしましたか?まだどこか痛みますか?」
正直、痛みなんてもうない。あれほどの怪我をしたのに・・・よく考えたらかなり不思議なことだ。しかも、痛みどころか力が漲ってしょうがない。俺は逆に困惑し、やっとのことで首を横に振れただけだった。アッシュはほっとしたようで、でも頻りに「本当ですね?」と聞いてくる。俺はそのたびに「ああ」とだけ答えた。
「そんなことより、いろいろと聞きたいことがあるんだがいいか?」
アッシュは、「ん?」といった感じになったが俺は気にせず続けた。
「お前らは、いったい何者?」
・・・アッシュがしばらく黙った。言葉に悩んでるのか?もしくは癇に障ったのか?相変わらず読み取れない。
「宇宙人・・・ですか。あなたたちの言葉で言えば。宇宙から来たのでそれで間違いなさそうですね」
やはりか。でも、そんなことは大体わかる。
「なぜ、この星に来た?」
この言葉には俺の怒りが大分混ざってしまったようで、アッシュが一瞬怯えた感じになったが、本当に一瞬のことだ。
「・・・僕たちの星は、今のあなたたち同様に、違う宇宙人たちの侵略でもう僕らの物でなくなってしまったのです。だから、来ました」
「なぜ、攻撃してきた?」
段々と、怒りが隠せなくなってきているが、それでも言葉は穏やかに努めた。アッシュが委縮し始めているような気がするが、気を使える余裕はない。
「僕たちに、交渉なんてしている余裕はなかったのです。ただ、焦っていた。そう、焦っていました。とにかく、生きていく場所が必要でした」
「なら・・・」
怒鳴るようになったので、一度言葉を切った。深呼吸して、続けた。できるだけ、ゆっくりと、できるだけ穏やかに。もう何しても穏やかじゃなかったと思うが。
「・・・なら、俺たちが抵抗しても、文句はないよな?」
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