デス・イーターの章5
言葉は、話はできます。
「起きた?よく寝たわね」
目覚めかけていた俺に声をかけてきたのは、俺の彼女だった。俺は、いつも眠る布団の感触をかみしめながら、慌てて体を起こした。そして、とりあえず頭を搔いた。彼女は驚いてこっちを見ている。目を丸くして見てくるので、「なんだよ?」と睨み付けた。彼女は俺の頭に指差したので、俺が上を向くと「もー」と怒って見せた。どうやら指差している先はそこじゃなかったらしい。はあ、何?そんな様子の俺に、彼女はじれったそうに言った。
「もーーーー、なんでわからないのよ?その手よ、その手!!」
俺はまじめに聞き返した。
「俺の手がどうかしたのかよ?」
彼女は本当に呆れた顔になった。もう呆れを通り越して怒りの感情になりつつある。俺はその変化が面白くて笑った。
「あなたの手、じゃないでしょ。よく見てみなさいよ。さっきあなた、手を失ったんじゃないの?」
俺は思い出してはっと手を見た。それは、簡単に言えば人間の手じゃなかった。機械の手だった。もちろん両手とも。しかも触ると足までもついてる。布団から飛び出ると、その足も機械だった。右足だけだが。その機械になった手足は、見るまで全く気が付かない。感覚、感触までも感じ取れ、動かすのも今までの自分の手足同様、何の違和感もなく自然だった。
彼女に「これだけだよな?」と聞くと、こくりとうなずき、「ここ以外で機械になっちまった場所はないか?」と聞くと、首を振って答えた。一応「ほかに機械にしてほしいところ言ってみろ」と聞くと「ばか」と言われた。意味わかってんのか?
「ともかく冗談はさておきだ。この手はなんなんだ?今のところ、俺の意思で動くし、違和感なんて何もないから問題ないが。むしろなんかうれしいし」
彼女が俺に寄ってきた。だから軽く口づけすると、うれしそうな顔をして、浮き浮きしながら話してくれた。
「あなたと一緒にいたデスが、そこら辺のガラクタを改造して作ってくれたのよ。あなたが寝ている間に。あっという間に作ってくれたの。さすが、なんていうと仲間の人たちに怒られちゃいそうだけど、さすがにデスたちの技術力はすごいわ」
彼女は乙女のように手を合わせ、わくわくさせながら、言葉を走らせる。俺は、周りをキョリョキョリョしながら探す。あの宇宙人のことを。彼女はその動きで察したらしく、宇宙人は俺を治してくれたから、一応保護はしているけど、別室で匿っているらしい。仲間はみんなあのデスのことを知っているけど、信頼できない連中に見つかったらすぐに殺されてしまうからだそうだ。
俺もそれだけはさせたくない。一応助けてもらったことだし、どんな意図があろうとも、まずは礼だけは言いたい。俺は、そのまま彼女を抱きたかったが、それは我慢して、そのデスを匿っている場所に行くことにした。惜しむように振り返ると、彼女も惜しむように見ていた。九死に一生を得ると、どうにもあれだが。今はそんな時間がない。そんなことはあとでいつでもできる。
今さらだが、ここは地下だ。俺は今までにないほどに力強く歩いた。ないはずの、作り物であるはずの腕と脚からは本物以上の力を感じる。小さいデスはすぐ近くの部屋にいた。特には拘束も何もしていなかったが、部屋には鍵がかかっていた。当然か。むしろ誰も入れないから安全でよかった。
「互いに元気そうだな」
俺は、その部屋に入り、取り敢えず皮肉交じりにデスに話しかけてみた。言葉なんて通じないか。と思ったが意外にも返事が返ってきた。
「そうですね、おかげさまで」
「しゃ・・・しゃべれるのかよ、お前?」
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