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デス・イーターの章

新章です。よろ

 なぜ、こんなことになってしまったのか?いつからか考えてみても、もう思い出せるのはこうなってしまってからの記憶だけ。考えても無駄だとは思っていても、どうしても考えてしまう。それが例え、俺のミスだとしても、俺は希望を持ちたいから。でも、失った両腕と右足とともに希望は消え去った。・・・そうじゃないだろ?消え去ったんじゃなく、持っていかれたんだろ。体を芋虫のように動かし、ただ死を待つよりは少しでも前に進もうと努力した。どんな時も、待つということは嫌いだった。でも死ぬのはもっと嫌いだ。足搔いてあがいて、なんとしてでも生き延びる奇跡を、幸運を手に入れようと足搔いた。足搔いてあがいて足搔いてあがいて。希望を持とうにも、何も思い出せなくても、それでも前に進んだ。

進んだ先に、炎が見える。どうやら失明はまだしていないようだ。燃え盛る炎が、俺を惹きつけてやまない。それにしか縋るものがなかったからかもしれないが。顔が、ちりちり焼けて、熱くともその炎に惹かれてしまうのはなぜ?過去も、未来ももう俺には見えない。見えるのはその炎だけ。炎という現実だけ。草っぱらに燃え盛る炎の渦。原因は宇宙船の墜落。墜落させたのはもちろん俺だが、希望を持っていかれてからの最後の悪あがきだった。もっとも偶然、成功しただけ。俺の命をほしがるから一緒に爆弾をくれてやったら、たまたま宇宙船の底にどでかい穴をあけたのだ。そしたら宇宙船が落っこちやがった。笑っちまうよな。穴が開けば落ちるわ。だけど、こんなことは初めてだった。まあ、落ちた宇宙船の中にいたのに命が助かったことは奇跡だった。なら、信じるしかないだろ。もう一度奇跡が起こることを。

 事の発端はあの日。そうあの日だ。始まったのはあの日からだった。奴らが、この地球に来やがったのはあの日だ。俺は、その日も一人、日本を旅していた。金はあまりなく、その日も野宿だった。だから、空の様子が変わったことにすぐに気が付くことができた。真夜中に、こつ然と、それでいて一気に星々が消えていく。妙な耳鳴りがその日は朝から続き、俺は夜も眠れずに一人、星を見ていた。夜は退屈だからすぐに眠るんだけど、その日は耳鳴りがひどくて、いつまでも星を見ていた。

「ん、流れ星?」

 星が消えた。初めは流れたように見えた。けど、よく見たら消えていた。なんだ?と思い目を凝らすと、消えた部分が何やら形に見えてくる。耳鳴りはさらにひどくなる。その形は、「ひとつじゃ、ない?」

 無意識に、その形を数えていた。1・・・2・・・3・・・4・・・数えているうちに、これ以上は数えることができなくなっていた。だんだんと怖くなってきたからだ。何が?と聞かれても本能と答えるほかなかった。

俺は、上半身を起こしたが、それ以上体を動かすことができなかった。とにかく気配を、一生懸命殺そうとしていた。呼吸もできず、思わず咳込みそうになり、それも死に物狂いで我慢した。よだれと涙が汚らしく垂れるが、それ以上に咳を出さないように努力した。気が付かれたら死ぬ。間違いなく死ぬ。本能がそう言っていた。俺の存在は完全に消えていた。意識だけが、俺の形のまま残っているようだ。その意識が、見た。あの地獄を。

 顔が、熱に触れていないのに爛れていく。痛かったがどうすることもできない。俺はそれでも熱く、燃え盛る炎にどんどん近づいて行った。もう、死ぬのかな、俺。単独で宇宙船に乗り込んで、武器弾薬でさんざん暴れてやったのがひどく懐かしい。その時は死なんて微塵も頭になかったし、考えもしなかったのに。狂っちまった。計画が狂っちまったよ。

 「俺は、・・・それでもよくやったよな」

 誰も答えちゃくれない。当然だ。生きているものがいないからな。そもそも独り言だ。また、でかい爆発音がひとつ上がった。炎に何かが引火して爆発したらしい。破片が頭の上を飛んでいき、背後に一部落ちた。見ちゃいないが宇宙船の一部だろう。もはや確認するのも面倒だ。とにかく進もう。そこに、何かがあるような気がする。

 あのとき、俺は動かなくなりかけた体を無理やり動かし、逃げた。とにかく高いところに逃げた。気が付くと、山の中にいた。どこでもいい、どこでもいいから隠れられる場所はないか!?人の中にいたら間違えなく死ぬ。そんな気がしてここに逃げてきたんだ。直感で、みんな死ぬと思った。そしてそれは、数分で現実化してしまった。

俺は、必死に木の一部になるように心がけて、それでも恐怖という人間の心が表に出てしまい、さらに恐怖した。見つかってしまうような気がして恐ろしかった。空を覆う影は、見たこともないような光を放ち、大地にその光を落していく。光は町を包み、町がひとつずつ消えていく。攻撃されている。耳鳴りはどんどんどんどんひどくなり、次第に人間の悲鳴に聞こえてきた。聞こえるはずはないのだが、確かに聞こえ、気持ち悪くなってきた。気が付くと、俺は気を失ってしまっていたらしい。


読んでくれたらありがとう。次もよろしく!

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