あかきキジンの章11
しゅーる
人型宇宙人になった男は、色々な実験をやらされた。そのほとんどを無事に乗り切った。感情はもうなかった。だが、だけど、心の底ではあの男の記憶が残っていた。最後に見た人間。そいつの顔も覚えていた。思い出せはしないけど。デスどもはほかの人間もこの男のように遺伝子操作して仲間に・・・デスどもは遺伝子操作した人間を仲間なんてこれっぽっちも思っていなかった。ただの兵器として扱っていた。兵器を大量に揃えようとしていた。けど、その前に作戦は決行された。
理由は簡単だ。遺伝子操作した生き物の寿命があまりにも短いことが発覚したからだ。その発見は、あくまで計算上のことだったが、デスどもはもう待てなかったし、1人いれば十分だと思っていた。
では、その場にあかきがいたことは偶然か?キッピーがいたことは偶然か?すべてが必然の中に起こったことだ。なぜなら、男が最後に肩をぶつかったのはあかきだ。あかきは見ていた。変な奴が歩いてきて、自分は少し避けたんだが肩がぶつかった。どんな奴か見ていた。が、見た瞬間、男が消えた。あかきは気のせいだと思ってすぐに忘れた。すぐに忘れていた。だけど今、夢に出てきている。
人型宇宙人になった男。そこのほうにある、男だったころの感情が、あかきに出会った瞬間に思い出されていた。けど、体現できることは戦うことだけだった。それは操られていたからだけじゃない。男には人とコミュニケーションを戦うことでしか取れなかったのだ。もう死ぬことは分かっていた。でも恐怖がなかった。感情も何もなかった。でも、あかきとキッピーに何かを見つけた。男の人生の結果と言えるものが、この2人から感じた。うれしくてしょうがなかった。
キッピーの力で(タイムマシーンの力だが)過去に行った時は、あまりのキッピーのありさまに恐怖心が芽生えていた。表には出ていないが、徐々に人間の感情を思い出していた。だから逃げた。逃げて状況を見ていた。茂みに隠れ、夜が来るのを待った。あかきとキッピーが行った村にはあの英雄もいたし、キッピーが終始、自分とあかきの周りに注意を張り巡らしていたので、そこには近づくことができなかった。だから、少しでも生き残るために村人たちを仲間にしたのだ。皮肉なことに人間の時はまともな仲間なんて一人もいなかったのに。両親ですら、もうこの男を捨てていたというのに。デスどもに利用されてから、初めて仲間ができるとは。
でも、一番の皮肉は、死にたいのに生きようとしてしまう、生存本能こそにあったと言えるだろう。
「おい、めー開けたぜ。起きろ。まだ寝るのか?」
キッピーの声は妙に意地悪そうに聞こえた。でも、もう一眠りしたい。いいや、寝よう。と思ったら激しい痛みとともに体が宙で一回転して顔面から落ちた。
「いってーなおい!!!!」
キッピーに蹴り飛ばされた。なにしてんだよ!と思ったのもつかの間、無理やり立たされた。その瞬間、今見ていた夢が消えた。
「起きれるんなら起きろ、いつまで寝てんだよ?もう3日間も眠ってんだぞ」
3日と聞かされ、俺は時計とカレンダーを探したが、この時代そんなものがあるはずもなく、腕を見ても、もともと腕時計なんてしてない。俺がする落胆の顔よりもキッピーの怒りの表情に俺は苦笑いした。キッピーはずっと待っていたのだ。この3日間、俺が起きるのを。いつ俺が起きるかもわからんのでどこにも行けず、と言うか暇つぶしもできずに燻ぶっていたのだろう。すまないと言うとキッピーは意外にも簡単に機嫌を直した。曰く、蹴りを思いっきり入れた時点でもうすっきりしていたらしい。なんなんだ?
「じゃあ、帰るか」
「ああ」
「あの・・・」
「なんだ?」
「てか、誰?」
「えと・・・」
「ああ、あの老人の孫だ」
「えと初めましてあかき殿。与一と申します」
「ええと、初めまして」
「この与一が、お前の看病してくれてたんだぞ」
「えっ、本当かよ。それはありがとうございます」
「いえいえ、この町を守ってくれた英雄ですから。当然ですよ」
あの英雄の孫という与一。てか、看病してくれた人がいるなら言えよキッピー。俺はその与一からあの英雄があの日死んだことを聞いて言葉を亡くした。数分し、与一に連れられ英雄が死んだ祠に行った。中には像が3体と位牌がその真ん中に並んでいた。英雄の墓だ。この場に来て、やっとわかった。あのとき何が起こったのか。あの神がかった力は、ここにいるキジンたちのものだったのだ。老人が俺に託してくれたのだ。
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