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1話

「はぁ?どこだ、ここ…」

愚痴を漏らす彼の名前は日和暁。彼は今、迷子になっていた。

彼はただ友達の隼人の家にいきたかっただけだというのになぜこんなことになってしまったのだろうか。

全ての始まりはおよそ2時間前に遡る。


暁は幼少の頃から仲の良い友達の家へ行って最近話題の超鬼畜ゲームをプレイしようと思い家を出た…。

しかし!ちょうど家を出て一歩進んだ瞬間のことだった。彼の目の前の景色は突然変化した。

見慣れたコンクリートジャングルは一変して刺々しいイバラの壁が目の前に立ちはだかったのだ。

その上周りを見るとなんだかお世辞にも人畜無害とは言えなさそうな犬みたいな生き物たちがこっちを睨みつけているのを見つけてしまった。


逃げねば。


本能でそう悟った暁は犬達に背を向けて走った。

残念なことに彼のこの判断はあまり正しくなかった。犬達が暁の背中を追いかけて走ってきてしまったからだ。

「ウッソだろ…マジでそれはよくないって!!!!」

ガンダッシュする暁。追いかける犬。

悲しいかな、犬に追いかけられているというのにイバラの壁は迷路になっていた。

しかし、暁は壁がずっと同じ方向に向かっていると思い込んでいた。

それゆえに悲劇は起きた。

「痛っっっっっっ!」

暁は目の前が壁になっていて進行方向を変える必要があることに気がつけず、見事に顔面がイバラの壁にクリーンヒットしてしまったのだ。

その勢いでバランスを崩し、転倒する暁。

犬はもう直ぐ後ろまで迫ってきていて今にも自分に襲いかかってきそう。

絶体絶命!もう終わりだ。この小説もここで終わり…かに思われたその瞬間


ポン!


コミカルな音と共にそれまでいた犬や壁は跡形もなく消え去っていた。

「…とりあえず教会に報告しておこうかな。」

暁は通信機器を取り出して神聖教会に連絡を取る。


今回暁が遭遇したような奇妙な出来事はこの世界では一般的に「白昼夢」と呼ばれる。

白昼夢はこの世界ではそう珍しいことでもなく、それなりの頻度で起きる。

朝起きたら猫の足が6足に増えていたり、何度も何度も外に出ているはずなのになぜか部屋に戻されたり…。

ほとんどの場合、白昼夢はすぐに消えてしまうし、人に害を為さない。

だが、一応神聖教会に発生を報告しておくことが住民には定められている。


ツー・ツー・ツー


『こちら、神聖教会白昼夢記録デバイスです。白昼夢に関する報告をピー音の後に述べてください。』

ピー


「すみません、F地区の006番に住んでいる日和暁です。今日の午前10時ごろに家を出たら家の目の前に白昼夢が発生していて…消失はしたのは見ました。犬型が数体とイバラの壁が発生。犬型は人間に危害を与える可能性がありました。イバラもかなり尖っていてとても触れるような代物ではありませんでした。…以上です。」


暁は疲弊していた。彼はかなりのインドア派で体型はもやし。建物の3階まで階段で登るだけで酸欠になって顔を赤くするほど体力がない男だ。当然犬と仲良く追いかけっこなんてしたら全ての体力を消耗する。


「ゼェ…ハァ…疲れたし早く隼人ん家行こ…」

ゆっくりと歩み出す暁。

これ以上はもう何も悪いことは起きない。そう思っていたのに…

次の瞬間には周囲は暗くなっていた。


「?????急に曇った?さっきまで晴れてたよね?なんか空の色紫じゃないですか?どうしたんですか?まさか、まさか白昼夢だなんてことない…と信じたいなぁ。とりあえず家まで戻って安全確認か…。」

そう言って踵を返す暁。

どうやら犬から逃げるうちにそれなりに遠いところまで来てしまっていたようだ。

暁は体力が少なくて運動音痴だというのに。

それはそうとあたりは恐ろしいほど静かだった。

(あれ。そう言えば家を出た時も誰も外にいなかったし車が通るも聞こえなかったような…)

彼が家を出た時間は午前10時。誰もいないということはありえない。

(明かにおかしい…しかもなんで僕はそれに気がつけなかったんだ?)

暁は歩きながら考える。

この異変はいつから始まっていたのか。なぜついさっきまでその異変に気が付かなかったのか。

暁は歩いた。

ずっと

ずっと。

いったいどれほど歩いただろうか。

いくら犬が怖くて火事場の馬鹿力を発揮していたかもしれないとはいえ元の運動能力がゴミではそう遠くへは行けないはずだが…。

(まだつかないのか?いったい僕はどれだけ遠くまで走ったんだよ!)

暁が時計を確認すると時刻は午前9時。家を出た時間から1秒たりとも進んでいない。

時計を見つめても秒針も短針も長針も動く気配がない。時計は壊れていたみたいだ。

暁は周囲を見回す。せめて今どこにいるかだけでも確認しておけば連絡さえ取れれば教会に救助してもらえるかもしれないからだ。

「はぁ?どこだ、ここ…」


こうして現在に至る。

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