第4話 性別の差ぐらい超えてやる
授業が始まってから20分ぐらい経っただろうか。俺はガッツリ寝そうになっていた。
寝るか寝ないかの境目というのだろうか。俺が頭を下げては上げてとなんとか寝ないように耐えていると、次は横からではなく、後ろの席から手刀が飛んできた。後ろから飛んできた手刀は俺の首元にクリーンヒット!萩原 網代に1000ダメージ!!
「フングッ!!」
おれは急な平手打ちにビビって思わず席から立ち上がっていた。
「どうした?萩原、とっとと席につけ」
俺は先生に返事をし、席についた。
『おい、中村!急になにするんだよ!』
俺は中村に小声でそう言うと少しニヤけながら返事を返してきた。
『そもそも、あなたが寝ているのが悪いのでしょう。それに女の子に叩いてもらうなんて場合によっては お金を払ったり大喜びする人もいるのよ?私に感謝しなさい』
俺はもうこいつ説得するのは無理だと諦め、くるりと前を向いた。
…前を向くときに隣の委員長がカッターを持っていたような気がしたが…たぶんきのせいだよな…もう寝ないようにしよう。
いつもより寝不足でとてつもない眠気が襲ってくる。だけど隣に刃物を持っているやつがいて寝たら刺されると思ったら眠気が吹っ飛んでいった。
「よし、じゃあ今日の授業ははここまでだ。最後に配ったプリントは次の授業に提出するように」
久しぶりに眠らずに授業を受けたな。
俺は授業で使った物の後片付けをして、今回初登場の男友達のところへと駆け寄った。
中学の頃の俺なら授業中はガチ寝をし、休み時間は寝たふりをするところだが、今は違う。なぜなら高校からは休み時間に話すような友達ができたのだ。
…まぁプライベートでは遊びに誘われたことも誘ったこともないんだけどな…
「よう水上」
こいつは水上 亜樹、見た目は完全に女の子だが実際は男の子なのだ。俗に言う男の娘というやつだ。女子とも男子とも捉えられる長さの髪と、性別問わずあり得る「あき」という名前が男の娘度を加速させる。
「おはよう!網代!」
水上は俺に微笑みながらそう言ってくる。あぁなんと可愛いのだ、男だけど告ろうかな?もうこの際性別なんてかんけいないだろ。
「おはよう…ていうか水上って俺のこと網代呼びだったか?」
俺がそうきくと「なんとなく下の名前でよんでみた」と、笑顔で言ってきた。
…クソ、なんでこんなに可愛いんだ…
正直なところ言うと今すぐに水上に告って水上ルートに突入し、この物語全部終わらせてもいいと俺は思ってる。あぁあんまりこういうことは言わないほうがいいんだよな。
結局のところ、俺は休み時間をまるまる水上との会話に使い、まだ話したいことは山程あったが自席へと戻った。




