第14話 去年の9月の不正疑惑
去年の9月下旬、副会長はそう言った。去年も俺は変わらず、不真面目で先生にブラックリスト入りをさせられていた。3日に2回は遅刻、毎日のように大量の忘れ物。そんな俺があの1ヶ月だけ、ほんの1ヶ月だがブラックリストから除外された。そんな出来事があったのが去年の9月下旬だ。
「私が生徒会長に当選した暁にはこの学校をもっとより良く、学びやすい環境にしてみせます」
去年の9月下旬、それはちょうど生徒会選挙のときだった。壇上では会長が話していた。その内容は、いかにもな生徒会選挙らしい定型文だったが、彼女からははっきりとしたオーラが漂ってきた。本当に生徒会長になりたいという気持ちが伝わってくる、そんな演説だった。
「ご清聴ありがとうございました」
どうやら俺があれこれ考えていた間に会長の演説は終わっていたらしい。
そんな生徒会選挙から数日後、会長が当選したときに事件は起きた。
「あの新会長、実は不正してたみたいだよ…」
廊下ですれ違った女の子が友達にポツリとつぶやく。どうやら、会長の不正が発見されたらしい。どうやら、生徒会長に立候補する為に必要な書類に不正の跡があったらしい。細かく言うと、会長に立候補するためには生徒40人以上の署名を集めなくてはならないという決まりがある。会長の署名には半数の20人ほどがこの学校に存在しない名前であったことが発覚した。この件を受けて、署名の審査を担当した選挙管理委員と会長が罰せるということを教師陣は決定したらしい。
別に俺には関係のないことだからな…その話を聞いたとき、俺はそう思った。
結局、会長は1週間の停学処分、会長戦を辞退ということで決着がついた…そう思われた。
会長が停学になって2日目、俺は時計を一時間見間違え、いつもより早く学校へと到着していた。
「いや〜案外うまく行ったね」
靴箱を挟んだ向かい側、そんな声が聞こえてきた。おそらく3人だろう。全員女子だ。俺は中学の習慣で靴を履き替えるときには音を立てずに履き替えることができる。それより、何がうまく行ったんだ?
俺はその後も彼女達にバレないよう、聞き耳を立てることにした。




