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7:アパールからでる

「すみませんが、ヴァスハヂャーシェエです。今から全員を集めて話をするので、集まって下さい」


 少し経つと、ヴァスハヂャーシェエがクリョシタ達のいる部屋へとやってきた。


「あなたははこのカラールで働いているわけでも、宿泊客でもないんですよね」


 おどおどと、クリョシタがヴァスハヂャーシェエへ話しかける。


 わしは神だから、ヴァスハヂャーシェエの名前を知っている。でもクリョシタはそうじゃないから、ヴァスハヂャーシェエのことがよく分からないのじゃ。


「名前はヴァスハヂャーシェエ・ソーンツェ、アパールの探偵で、こういう事件の時に犯人を見つけるのがお仕事です。そこで今回の殺人事件の犯人も見つけました」


「私は犯人ではありません」


 クリョシタは落ちついて答える。


「わたしも犯人じゃないですし、クリョシタさんも犯人じゃありません。だから早くここから離れたいです。行かなくちゃいけないところがあるんです」


 チェネレントラがむっとしたように話す。


「大丈夫、大丈夫です。今から犯人を説明します」


 ヴァスハヂャーシェエは笑顔で断言する。


 こうして3人はさっきの部屋、すなわちクリョシタが犯人扱いされた場所へと行く。


「これから犯人が、誰なのかを説明します」


 部屋の真ん中で、ヴァスハヂャーシェエが部屋の中心で話し始める。


 中心の近くでは、カラールで働く人達が座っている。そして左側の壁近くには、他の客で背の高いお兄さんことボーク、入り口と他の人から少し離れた場所でクリョシタとチェネレントラ、そして偉そうな人が入り口にもたれている。


「クリョシタさんとチェネレントラの2人はずっと部屋でいたと答えていました。2人はフォルムラ出身で、恐らく最近までフォルムラでくらしていたのでしょう。フォルムラで作られている服は独特で、他とは違います。そこでそういう服を着ている2人は、フォルムラで長く住んでいたはずです」


 クリョシタは鮮やかな黒のジャンパースカートに真っ白のシャツ、チェネレントラは黒いロリータファッション。化学繊維がたくさん使われた布を使い、機械で編まれた細かいレースはフォルムラ以外ではお目にすることのないほど、特異な格好を2人はしている。


 とはいえ服装の話題、2人がフォルムラで暮らしていることが、事件と何の関係があるのじゃろうか?


「シヌータ・ラータスチ、今回の被害者はフォルムラとは関係ありません。そこでこの2人がシヌータを殺す理由がありません。そこでここでの犯人はボークさん、部屋で編み物をしていたからアリバイがあると言っていた、あなたです」


 ヴァスハヂャーシェエがゆっくりと話す。


「そんなことはない。これを編んでいたんだって。それで時間がかかって、殺人する暇なんてなかった」


 ヴァスハヂャーシェエが指名したボークは、クリョシタ達や被害者を除くと唯一の客だ。


 ボークはクリョシタ達が向かう場所であるボーク・スネールチと名前が似ていて、身長が高くて紫と青のツートンカラーの髪が目立つごついお兄さんだ。


「ですが専用の魔道具を使えば、早く編むことができますし、何なら部屋に置いておくだけで勝手に編んでもらえます。そこで殺人している間に編み物してもらう、そんなことも可能なはずです。確かボークさんの部屋には編み物用の魔道具がありましたよね」


 クニーガ・マーギイ同様にアパールでも魔道具は、ごくごく普通に使われている。お手洗いやお風呂などの魔道具なのだから、クニーガ・マーギイよりもアパールの方が便利なのかもしれない。


 とはいえ魔道具に詳しくないクリョシタやチェネレントラは話についていけないようで、きょとんとしている。


「はい、ありました」


 従業員の1人が、ヴァスハヂャーシェエの質問に答える。


「ところでクリョシタさんとチェネレントラさんは、亡くなったシヌータさんのことを知っていますか?」


「知らないです」


 クリョシタは思いっきり、首を横に振る。


「会ったことがありませんから、知りません」


 チェネレントラは、落ちついて否定をする。


「シヌータさんは、そうですね、かわいらしい方です。ぼくみたいなかわいらしくて、ふわふわとした感じで、イメージするならわたがしです」


 ヴァスハヂャーシェエが丁寧に説明する。


 実はこれ、嘘なのじゃ。わしは神だからこれが嘘だって分かっておるのじゃが、クリョシタ達は知らない。


「私はかわいい女の子と殺しませんよ。アパールにずっといるわけでもありませんし、フォルムラに帰りますから」


「わたしもです。そもそも今人を殺す必要はありません」


 クリョシタとチェネレントラはヴァスハヂャーシェエの言葉をあっさり信じた。


 そんな2人を、ボークとヴァスハヂャーシェエ以外の人が呆れたように見る。


「ふざけんな。シヌータ・ラータスチは黒髪黒目のおとなしい男だ。かわいくなんてねーぞ」


 ボークがどなって、近くの壁をなぐる。


「いやわたし達、シヌータさんのことを知りません」


「そうです。私もチェネレントラも、他の人とここカラールで関わっていませんから。シヌータさんのフルネーム今、知りました」


 2人は冷静に答えた。


 とはいえこの会話といくつもの事件を解決しているというヴァスハヂャーシェエの言葉だからか、クリョシタとチェネレントラは解放された。そのかわりにボークが犯人として捕まった。


「あーあこれでようやくボーク・スネールチへ行けます」


「そうですね」


 2人はアパールを離れて、ボーク・スネールチへと向かう。


 アパールからボーク・スネールチへ向かう道は、自然そのものだ。当然のことながらボーク・スネールチは人が住んでいないので、ちゃんとした道が用意されているわけがない。


 そこでけわしい自然を2人は、黙って歩く。



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