5:アパールにつく
クニーガ・マーギイから離れていく道。フォルムラからクニーガ・マーギイの間にあるような自由を感じさせるような自然ではなく、人の手で整えられた自然になる。
「きれいな石畳に、整えられた森ですね。かなり手入れされているようです」
「フォルムラとも、フォルムラからクニーガ・マーギイへ行く道とも、違うような感じです」
フォルムラは人工物、特に機械で支配された町だ。そこでほとんど植物はなかったし、あったとしてもロボットが常に整備をしている。
その反対にフォルムラからクニーガ・マーギイへの道は、何の管理や整備もされていない、自由な自然でいっぱいの場所だった。
そのどちらでもない、人の手できれいに整えられた自然の道。そこをクリョシタは周りをうろうろ見つつ、チェネレントラは迷いなく歩いている。
「この作にアパールがあります。そこで一泊してから、ボーク・スネールチへ向かうのがいいでしょう」
歩きながら淡々と、チェネレントラは語る。
「ということは帰りも二泊して、帰るってことになりますね」
クリョシタはややうんざりしたようにしている。
無理もない。インターネットが使えず、テレビも見られない時間が長いことに、クリョシタは慣れていない。
なぜならインターネットが普通のフォルムラで住んでいるクリョシタにとって、何も機械が使えない今の生活はちょっとした地獄だ。
「……そうです」
少し迷った後、チェネレントラは小さな声で答える。
「4日くらい旅をするなんて、思ってもみなかったです。あーあアニメとか録りだめているし、奈良々(ならら)ちゃんの生配信だってあるのに、ついていないです」
クリョシタはフォルムラでしかできないこと、それが好きだ。そこでこういうアナログ重視な旅は嫌いなのじゃろう。
「つきました。ここがアパールです」
クニーガ・マーギイよりも整った感じがする町。そこへチェネレントラとクリョシタの2人は入っていく。
「地図があります。ここに宿屋が書いてあるかもしれません」
「そうですね」
2人はチェネレントラが発見した、アパールの入り口に置いてある大きな地図を見る。
ちなみにクニーガ・マーギイには地図はなかったし、フォルムラではみなインターネットで情報を手に入れるので、地図を置く必要がなかった。
そこでこの2人ははじめて、大きな地図を見ることになった。
「カラールに行きましょう」
「そうですね」
チェネレントラのすすめる宿屋へ向かう、クリョシタとチェネレントラ。
カラールはクニーガ・マーギイの宿屋よりも清潔だ。食事の部屋でとることが出来、そのため2人は喜んで部屋でひきこもる。
食事の内容は黒パンと色々な野菜が入った味の薄いスープ。アンドロイドなのでチェンレントラは食べないが、そのかわりクリョシタが2人分食べた。当然のようにクニーガ・マーギイで出てきた玄米のおかゆよりもおいしい。
「クニーガ・マーギイの宿屋よりも過ごしやすいです」
ベッドを見て、クリョシタはわくわくしたように話す。
「そうですね。では眠ります」
チェネレントラは睡眠、いや充電を始めた。チェンレントラは高性能のアンドロイドなので、できるだけ充電をすることが大事なのだ。
そしてクリョシタも眠ることにした。昨日泊まったクニーガ・マーギイのセールイよりは、ここの寝具は暖かくで眠りやすい。そこで前の日あまり眠れないのも手伝ってか、クリョシタはぐっすり眠った。
「すみません。起きていますか?」
乱暴にドアが叩かれる音、それから大きな声でクリョシタは目覚める。
「起きています」
充電と身支度を終えたチェンレントラが、ドアを開ける。
「実はこの部屋の隣にある部屋で、人が殺されました」
宿の関係者らしい男性が、そう落ちついて告げる。
「誰が殺されたのですか?」
チェンレントラが冷静にたずねる。
マズい、この展開はマズいのじゃ。絶対クリョシタがよくない目にあう。
わしは慌ててサイコロを振ったのじゃ。出た目は9、これは困難なことになるのじゃ。どうしよう、うまくいかない。
「隣の部屋で殺されていたのは、シヌータ・ラータスチです。クニーガ・マーギイ在住でして、旅行客です。どのような人か、ご存じですか?」
「昨日はずっと部屋にいたものですから、他の客のことは覚えていないです」
チェネレントラは部屋にやってきた男性と、落ちついて会話を続ける。
この部屋にやってきた、宿の関係者らしき男性はヴァスハヂャーシェエ・ソーンシリエ。ここアパールで探偵をやって折る、怪しくてうさんくさい男じゃ。
「そうですか。ところで2人はどこから、ここに来たのですか?」
「わたしとクリョシタさんは、フォルムラから来ました。それで今からボーク・スネールチへ向かいます」
「フォルムラってあの閉鎖的な町ですか? いいなー、一度フォルムラには行ってみたいです。ところで昨日の夜は何をしていましたか?」
これはアリバイを聞いておるのじゃ。ミステリー小説とかで、よくあるシーンじゃな。
「わたしは寝ていました。クリョシタさんはわたしよりも遅くに寝たと思います」
「あっ私昨日はずっと部屋でいました。そこで隣の部屋へは行っていませんし、何よりも殺された人はおろかこの宿の人のこと、そもそもここアパールの人ともほとんど関わっていません」
ヴァスハヂャーシェエの発言に対して、チェネレントラは落ちついて、やや慌てたようにクリョシタが答える。
「ありがとうございます。実はこの宿屋で今いる人達を集めているのです。2人ともこられますか?」
ヴァスハヂャーシェエは落ちついているけど、有無を言わせないようなノリで2人に聞く。
「大丈夫です」
「大丈夫です」
断れないと思ったのか、2人は了承する。
「それにしてもここカラールで部屋にこもっているなんて珍しいです。そんなアリバイのない人、他にはいません」
不思議なことを言う、ヴァスハヂャーシェエ。
きっといいことにはならんぞ。わしはうまくいくよう、祈るのじゃ。




