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4:クニーガ・マーギイからでる

 ミシンなんて使われていないし、暖かいフリースでもない。たっぷりではないけど天然の綿がつめられた布団は、フォルムラの布団と比べると物足りない。それもあってか、ベッドに入ってもクリョシタは眠れずにいた。


 チェネレントラは眠っている。いや今は充電中じゃ。ソーラーパネル付きの充電器を使って、明日動くための電気をチェネレントラは補充している。それもあってか、ぱっと見っチェネレントラは熟睡しているみたいに見えるのじゃ。


 まあ風呂やお手洗いといった設備がフォルムラとは違って、あまり清潔ではないところもストレスになっておるのじゃろう。あまりクニーガ・マーギイの生活に、クリョシタは馴染めていないようじゃ。


 フォルムラではテレビがあるし、パソコンやタブレットなどでインターネットを使うこともできる。そこで眠れない夜の時間を潰すのは、簡単じゃ。


 だけどクニーガ・マーギイではそんなことない。あかりはろうそくで、電気なんて存在すらしてないんじゃ。そこでセールイでは夜は基本的には寝るものって感じになっている。あかりをつけるような魔道具も、存在していないようじゃし。


 少なくとも夜にフォルムラのようにテレビをダラダラ見たりタブレットでゲームをしたりする人は、セールイにはいない。


「どうしよう。だって求婚されたのは、はじめてだったから」


 クリョシタはつぶやく。


 わしは知っておるのじゃ。クリョシタは胸が大きくて、顔立ちが整っている美人じゃと。でもクリョシタは魔法を使うという秘密があるから、人とあまり関わらない。それもあってか、クリョシタは今まで恋愛とは無縁だったのじゃ。


 それもあってか、クリョシタはアットーレの告白にかなり動揺しているようじゃ。わしはクリョシタが初対面の男と結婚するのは認めん。


 だがわしの意見をクリョシタが知ることはできないので、どうしようもないのじゃ。


「別にフォルムラへ戻ったっていいことなんてない。このままクニーガ・マーギイで暮らし続けたって、問題ないんじゃないかな?」


 フォルムラとクニーガ・マーギイのやりとりはほぼない。そこで仕事を放棄して、クリョシタがクニーガ・マーギイで暮らしても問題はない。


 とまあ慣れない環境ともやもやしている感情のせいか、ほとんど眠れずにクリョシタは朝を迎えた。


「おはようございます」


「おはようございます」


 クリョシタはあいさつをして、顔を洗う。洗顔料はフォルムラから持ってきた物なので、よく泡立つ。


 そして同じくフォルムラから持ってきた化粧品を使いメイクをしつつ、ゆっくりと話す。


「昨日私この村の男に告白されたのです。仕事をやめて、この村で暮らしていってもいいかなと思います」


「それはどうでしょう。この村はフォルムラよりも不便ですので、生活になじめないかもしれません。そりゃあ仕事をするだけが、良いことではありませんが」


 歯切れ悪くチェネレントラが答える。


「でもこの仕事を終えてから、フォルムラに戻ってもいいことなんてなさそうです」


「大丈夫です。この仕事が終われば、楽になりますから」


 チェネレントラがにっこりと笑う。


「楽になるって、どういうことですか?」


 クリョシタはチェネレントラをボーク・スネールチへ連れて行くのが仕事だ。ただしクリョシタはチェネレントラがボーク・スネールチで何をするのかは知らない。


 わしはサイコロを振る。出た目は9、クリョシタはアットーレを振ってボーク・スネールチへと向かうらしい。その事実に、わしは安堵する。


 確かにこのままクリョシタがアットーレと付き合って、このままクニーガ・マーギイで住み続けるってこともなしではない。ただしわしはそんなところ、見たくないんじゃ。


 そこでぜひクリョシタにはボーク・スネールチへ向かって欲しい、お願いじゃ。


「詳しくは分かりません。でもこれは仕事です。仕事ですから、わたし達は何が何でもボーク・スネールチへ行かないといけないのです」


「そうですよね」


 仕事は大事、そうクリョシタは考えているようだ。そこでチェネレントラの言うことに、反論をしない。


「まあこの宿、セールイにはカップルが多いです。そこで恋愛したくなる気持ちは分からなくはないですが、やっぱり仕事は仕事です」


「そうですね。ではボーク・スネールチへ向かって、行きましょう」


 クリョシタはこのまま移動することに決めたらしい。そこで朝食を取るために、クリョシタは1人で食堂へと向かう。


「クリョシタさん、昨日の話を考えてくれましたか?」


 クリョシタが昨日と同じ物を食堂で食べていると、アットーレが話しかけてきた。


「すみません、私は仕事でボーク・スネールチへ行かないといけません。それに私はフォルムラの住民で、ここでは生活しづらいのです。だからアットーレさんとは付き合えないのです」


「じゃあボーク・スネールチから帰ってくる途中、ここに来て下さい。絶対クリョシタさんは、俺やクニーガ・マーギイのことを好きになります」


 クリョシタが振っているというのに、アットーレはあきらめが悪い。


 でもクリョシタはアットーレのことを無視して食事を済ませ、そのままチェネレントラと一緒にセールイから出る。


「今日でボーク・スネールチにつくんですかね」


 ふわふわとした丸っこい生物が空を飛ぶのを見つつ、クリョシタはチェネレントラと歩き続ける。


「今日も無理かもしれません」


「早く着いて、早く帰りたいです」


 クリョシタは少々げんなりしている。


 ボーク・スネールチは遠いので、まだつけない。


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