2:フォルムラからでる
「では準備をして、ボーク・スネールチへ向かいます」
クリョシタは1度帰宅してから荷物をまとめて、再び会社へと戻ってきた。
何日かかるか分からないので、大荷物のクリョシタ。それに対して、チャネレントラは小さなリュック1つだけだ。
「チェネレントラさんは、それだけでいいの?」
「わたしはアンドロイドです。そこで食事や排泄をしませんし、着替えも基本的は行いません。そこでこれだけで十分です」
「それならいいです。行ってきます」
「行ってきます」
クリョシタはチェネレントラと共に、会社から出る。
「いってらっしゃい、チェネレントラ。お役目をしっかり果たすのだよ。クリョシタも無理しないで。じゃあさようなら」
パーチェは笑顔で、2人を見送る。
パーチェはこの会社『マジーア』の社長であり、クリョシタを雇ってくれるいい人だ。そこでわしもパーチェのことは信じたい。
そこでわしはサイコロを振ってみる、出た目は9。これはもうこの先、パーチェはクリョシタ達と会わなくなるみたいじゃあ。なんか嫌な予感がするのじゃ。
とまあクリョシタとチェネレントラの2人は、静かにフォルムラを歩く。
「キケンブツの反応を確認しました」
「キケンブツの反応です」
ギギギギギギ。人とは全く違う灰と銀の見た目をしたロボットが、クリョシタとチェネレントラを追いかけてくる。
フォルムラのロボットは優秀なので、人の荷物を勝手にスキャンして、爆弾や大量の油などのキケンブツを見つけることができるのだ。
「キケンブツなんて持ってませんよ」
「わたしもです。わたしも危険な物なんて、持っていません」
そこで2人は走って逃げる。
チェネレントラは荷物が軽い上に、アンドロイドなので余裕がありそうだ。でもクリョシタは人だし大荷物なので、大変だ。
「私は今日フォルムラの町を何度歩いても大丈夫だったし、ロボットに追いかけられていない。だから怪しいのはチェネレントラさんだって」
「花街くずれのアンドロイドが危ないわけありません。それにアットリーチェは人が売春することを禁じられているようなクリーンな花街です。そこにそもそもキケンブツがあるわけないでしょ」
チェネレントラはこんな時でも、冷静に答える。
「待ちなさい」
「待ちなさい」
ロボットはじりじりクリョシタとチェネレントラに近づく。
「これはわたしがなんとかするしかありません」
チェネレントラは、クリョシタをお姫様抱っこして走り始める。
「ちょっと待って。大丈夫なの?」
自分よりも年下に見えるアンドロイドにお姫様抱っこされて、驚くクリョシタ。
「これが一番速いですから」
チェネレントラは足を止めず、淡々と走り続ける。
ロボットは攻撃をしないものの、ずっとクリョシタとチェネレントラを追いかけ続ける。
「そこのアンドロイド、止まりなさい」
「そこのアンドロイド、止まりなさい。キケンブツを持って、どこへ行くのですか?」
ロボットはすさまじい速度で、走り出した。
チェネレントラにお姫様抱っこされて逃げるクリョシタ、それを追いかけるロボット。周りの人達はクリョシタ達の行動にドン引きして、ぶつからないように道の端っこで小さくなっている。
とはいえチェネレントラとクリョシタにぶつかっている人もいる。全員が全員、ぶつからないように避けることができるわけではないのだ。なんならイヤホンで音楽を聴きつつ、スマートフォンをいじりながら歩いている人もいるし。
「すみません、どけてください、すみません」
そこでクリョシタは、ひたすら謝るのだ。
サイコロを振ってみる、結果は9。これはどうやらクリョシタ達はロボットから逃げ切り、フォルムラから出ることができるらしい。その事実にほっとする。
「あそこの門を超えたら、フォルムラから出れます」
早く走っている上に、クリョシタをお姫様抱っこしているチェネレントラ。疲れを一切見せず、門をくぐった。
「戻ってきなさい」
「キケンブツを持ったまま、フォルムラから出ない」
ロボットはフォルムラから出ることができない。そこでフォルムラの門近くから、2人に向かって叫ぶだけだった。
要するにクリョシタとチェネレントラは無事逃げることができた。サイコロの助けもあったから知っていたのじゃが、わしは胸をなでおろす。
「ありがとうございます」
ここでチェンレントラはクリョシタのことを、そっとおろす。クリョシタはお礼を言って、周りを見渡す。
ふわふわとした綿のような緑がついた木。そして木に負けず、ふわふわとした小動物。
「フォルムラには存在しない、植物や動物です」
チェネレントラは珍しそうに、周りを見る。
「そうですね。可愛らしいです」
クリョシタもはじめて見る動植物に対して、少し興奮気味だ。
フォルムラでは動植物が少ない。家畜はビルの中で育てられて、田畑は工場の中にある。それ以外の植物は公園や道などでロボットの管理の中で整えられた状態である。
でもフォルムラの外は違うのじゃ。人の手はもちろん、ロボットは無関係の自然。そう何も制限されていない、自由な自然だ。
「何でしょう。生きてるって感じがします」
アンドロイドで生きることとはほど遠い、チェネレントラは少し驚いているみたい。
そう機械とは無縁な自然、それはアンドロイドであるチェネレントラとは関わりが薄い。




