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1:出発をきめる

 朝6時、クリョシタが目覚めた。


「どんがらがっしゃん」


 誰もいないし、風もふいていないし、地震も起きていない。


 そんな場所にあるコップが、落ちて割れた。


「おかしいな。幽霊なんていないはずなのに」


 クリョシタは愚痴を言いつつ、コップを片づける。


 クリョシタは気づいていないみたいだけど、わしは知っている。


 クリョシタの住んでいるアパート『ノッテ』には幽霊がいる。そして今コップを落として割ったのも、幽霊の仕業じゃ。


 わしはサイコロを回す。結果は4、うむこのままクリョシタは幽霊の存在に気づかないみたいじゃあ。そして気づかないクリョシタをからかうように、幽霊は自由に活動しておる。


 幽霊と同居していることに気づいていないクリョシタは着替えてから、朝ご飯を食べる。ビタミンが補給できるゼリーを吸ってから、カフェイン入りのエナジードリンクをがぶ飲み。


 ゼリーとドリンクだけの朝食、クリョシタは仕事の日だけこうする。こういう朝食は体に悪いんじゃないか、そうわしは思うのじゃが、どうしようもできない。


「どさっ」


 机の上に置いてあった、スマートフォンが落ちた。クリョシタはスマートフォンを拾って、鞄の中にしまう。


 クリョシタは顔を洗って、メイクをする。そして髪を整えた後、いきなり壁がどんどん叩かれる。


「今日は壁の音がうるさいな。幽霊なんているはずないのに、なんでだろう?」


 クリョシタは幽霊がいることを、信じない。


 クリョシタは生まれも育ちも、ここフォルムラだ。


 フォルムラでは機械とAIが発達した都市で、幽霊なんていうオカルトは信じられない。そこでクリョシタも幽霊がいるとは思っていない。


 でもわしは知っている。このアパートの幽霊がいることを。


 とまあクリョシタは幽霊のことは完全に無視して、家から出る。


 『ノッテ』はかなりぼろい。そこで他の建物と違って、外壁の色がかなり汚い。


 そういうわけでクリョシタが通勤中歩く道には『ノッテ』が勝てるはずのない、おしゃれなビルがたくさんある。


 町を歩く人の中には、当然のようにアンドロイドが混じる。こんな町は他にはない。それほどに完成された町なんじゃ、フォルムラは。


 そんな中でも『ノッテ』ほどぼろくはないが、少し古めで外壁の色が薄まりつつあるビルに到着するクリョシタ。慣れたようにカードキーを使って、ビルに入る。そして『マジーア』と書かれた看板のある部屋の中へと入る。


「おはようございます。クリョシタさん」


 部屋の中にいるのは『マジーア』の社長、パーチェ。そしてパーチェの他には、幼そうな少女もいる。


「おはようございます」


 クリョシタは少女を気にせず、パーチェにあいさつをする。


「ねえ、クリョシタさん。ここにいるアンドロイド、チェネレントラと一緒にボーク・スネールチへ行ってくれない? そこでこの会社にとって大事なことを、チェネレントラがすることになっているの?」


「ボーク・スネールチってどこですか?」


 生まれも育ちもフォルムラのクリョシタ。ボーク・スネールチという場所のことは当然のように知らない。


「ボーク・スネールチは自然豊かな森よ。何よりも魔力であふれているから、魔法使いのクリョシタにはぴったりよ」


 にこにこと笑顔で、パーチェは答える。


 クリョシタは魔法が使える。ただしクリョシタの住むフォルムラでは、魔法のことは認められていない。そのためにクリョシタはフォルムラでは生きづらい。


 だからといってフォルムラで産まれてから生活しているクリョシタは、よそでの生活が難しいのが事実だ。フォルムラとそれ以外では、生活のレベルが違うのだ。


「ならどうしてアンドロイド、チェネレントラを連れて行かなくちゃいけないのでしょうか?」


 クリョシタはチェネレントラをちらっと見てから、パーチェに質問する。


「チェネレントラじゃなきゃ、ボーク・スネールチでできないことがあるの。でもさあ、アンドロイドがいるのはこの国でフォルムラだけ。フォルムラの外にはアンドロイドはいない。そこでチェネレントラ、1人ではボーク・スネールチにつけないような気がするんよ。そこでお願い、クリョシタもついていって」


「うちの会社、もうかっていないのに、アンドロイド買える余裕ありましたね」


 クリョシタは皮肉たっぷりの発言をする。


 この会社『マジーア』は機械の町フォルムラにしては珍しく、魔法や占いなどのオカルトを扱っている。当然のことながら、あまりもうかってはいない。


「チェネレントラは花街で売られていたの。売春がもうできないらしく、格安だったわ。だから大丈夫よ」


「そうです。もう体を売ることができないから、アットリーチェには戻れません。でも新しいご主人様につかえることができて、うれしいです」


 服の裾を持って、お辞儀をするチェネレントラ。


 アットリーチェことフォルムラの花街では、人ではなくてアンドロイドが売春している。それもあってかチェネレントラは13歳くらいに見える、童顔の少女だ。とはいえこれは見た目であって、本当の年齢はわしにも分からないんじゃ。


「かしこまりました。フォルムラの外にでる良い機会ですし、行ってきます」


 クリョシタはしぶしぶ了承した。


 はたしてこの先どうなるかのう? フォルムラの外には魔法メインの村や、フォルムラよりも文化水準の劣った村があるんじゃのう。


 わしはサイコロを振ってみた。結果はさっきと同じ4。うーむこのままクリョシタはチェネレントラと一緒に、フォルムラから出るみたいじゃの。これはよくない結果のような気がするが、大丈夫じゃろうか?


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