『最後のチャンス』
アパールから少し歩いて、わたし達はボーク・スネールチへつきました。
『ボーク・スネールチへ行ってね。念のために、部下のクリョシタ・サチェルドーテもつけるから』
そうご主人様から聞いたこと、とても不安でした。
わたしは気がついたときには、アットリーチェのお店でいました。そこでの仕事ができなくなって、アットリーチェをおいだされて、ご主人様にひろわれました。
だからわたしは、ご主人様の命令にしたがうほかはないのです。
そこでわたしはクリョシタさんと一緒に、ここボーク・スネールチへきたのです。
「ボーク・スネールチへ来て、何をするのか聞いていますか?」
クリョシタさんは不安そうに、周りを見ます。
「何も聞いていません。ただボーク・スネールチへ行きなさいと、指示がありました」
わたしは首をかしげます。
そもそもわたしはアンドロイドです。アンドロイドは人の命令に従う以外、できません。そこで指示されたこと以外、何も分からないのです。
「ボーク・スネールチから、いつかはフォルムラに帰らないといけません。私は早くフォルムラへ帰りたいです」
「どうしてですか?」
ご主人様からの命令以外に大事なことなんて、あるわけありません。そこでわたしはクリョシタさんの考えていることが分からないのです。
「やっぱりフォルムラが一番なんです。食事はフォルムラの方が比べものにならないくらいおいしいですし、それ以外のことだって外は劣っています」
クリョシタさんはそう答えて、ボーク・スネールチのあちこちを見ます。
ボーク・スネールチは木が多く、草花もたくさんあります。フォルムラでは見かけないよう光景ですし、この旅でも縁がありません。それほど豊かな自然です。
「確かにそうです。フォルムラではアンドロイドであることを言っても問題はありませんが、フォルムラの外ではそうではありません。そこでわたしもフォルムラのことが好きです」
この旅でわたしはアンドロイドでなく、人として扱われていることがあったでしょう。
アンドロイドがいるということ自体、フォルムラの外の人は知らないのです。そこで当然かもしれません。
何よりもフォルムラにはご主人様がいます。わたしのことを、アットリーチェから追い出されたわたしのことを、勝ってくれたご主人様。もう一度会いたいです。
「フォルムラに帰ったら、やっぱりアイスクリームを食べたいです。ミルククリームと小豆のアイス、それが食べたいです」
うきうきとフォルムラに帰ったら、したいことを語るクリョシタさん。
「わたしはご主人様のために役立ちたいです」
「アンドロイドだからって、人に尽くさなきゃ駄目ってことはないと思います。あっなんか黒いもやがでてきていますよ、チェネレントラさん」
「本当です」
わたしの体から、黒いもやがでてきます。なんでしょう、このもや? 不気味ですし、なんか機械とは無縁って感じがします。
「これはのろいだ、しかも強い」
クリョシタさんの声が聞こえます。
でもなんだかわたしは眠くなってきました。わたしアンドロイドは充電のとき以外はねないのですが、一体どうしちゃったんでしょうか?




