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Real Game  作者: 片倉葵
9/32

7章・とりあえず・・・見たくなかった

少しなんですが性的な表現があります。

苦手な方は戻ってくださいね。










そもそも好奇心というものを現さなければ良かったのだ。

微かに聞こえた声に興味を持ったあたしはその声に導かれるように宮殿の一角に迷い込んだ。

そして壁の影から見てしまったのだ。目の前で繰り返されているその行為を。


う、ぎゃぁああ!!


何日も会えなかった恋人同士のように激しいキスを重ねていく男女がそこにいた。

その2人はあたしの事に気づかずにいるみたい。


……ど、どうしよう(汗)逃げた方が良いかな……?う、うわわわわ!!


彼らの行為は留まることを知らないように激しくなっていく。

映画で何度見てもなれなかったディープなキスシーンがそこではあった。

日本人であり、学生であったあたしにとってキスといえばソフトキスが基本だった。

触れ合うだけのキス。そんな優しいものではない生々しいキスを見ているだけで顔が赤くなる。


……最悪だ。


目が合わさった。その男性と。

その瞬間、神を呪ったといっても過言ではなかった。



























「おや。アイ様ではないですか」


「!!……どうも」


嫌な所で嫌な奴に嫌な状況で会ったなと、自分に出来る精一杯の『嫌なんです』表情を作った。

それを見ても彼はニヤニヤ笑うだけ。

少しはあわててみるべきだと思う。こいつ。


お茶会が終わり、さて戻ろうとリディの部屋から出て出会ったのは一番相性が悪いといえるレガードだった。


普段なら、

はい、こんにちは。はい、さようなら

と言うべきだろうが今はできない。

逃がさないと、奴の目が言っている。

あぁ、もう!!嫌悪感たっぷりの顔で睨むしかできない。

それには理由があった。


レガードが今身に付けているものは黒のジーパン1つのみ。上着は一切つけていない。

余分な筋肉のついていない、肉体を惜しみなく晒している。

普段は無造作に垂らされている髪も、1つに束ねていた。

極めつけは汗と、多少赤くなった顔と体。


その彼の腕の中にいるのは色気漂う女性。娼婦だろう。

布で出来たレースのドレスは体の3分の1を露出している。磨かれた宝石を身に纏い、化粧は少々濃い目だが彼女は誰よりも美しく輝いていた。

見事に自分という素材を上手く引き立てている。

百合に似た香水も彼女以上に似合う女性はいないかもしれない。

彼女が振り替えればふわりと香りが漂った。優雅でとても良い匂い。

その身なりと仕草で彼女が国にある『スノウドール』と言われる店の高級娼婦と理解した。


……なるほど。考えるまでもない。


性交の、後だ。


「クスッ。可愛いお嬢さんね。レガードの、新しい恋人?」


「まさか」


「でしょうね。レガードが相手にするにはまだ幼いわ。お嬢さん、お名前は?」


「あ、藍です」


「アイちゃん、ね。わたしはスノウドールで働かせているアシュリアといいます」


どうぞ、宜しく。


優雅にお辞儀をする様は何処かの貴族のようだった。

否、下手な貴族より貴族らしい。

そういえばスノウドールの6割は没落した貴族だと聞いたことがある。それが本当なら納得できる。


「では、レガード。わたくし、次の予定があるからそろそろお暇させていただくわ」


「えぇ。次に会うときはあなたに似合いのドレスでも用意しましょう」


「まぁ。それは楽しみにしていますわ」


男性が女性に服を送るのは脱がせたいという意味がこめられていると聞く。

それを分かった上での会話かもしれない。


クスクス笑って彼女は立ち去った。

フワフワ漂うのは彼女の香り香。


「…………覗き、ですか?」


良いご趣味をお持ちで。

嫌味かこんちくしょう。


アシュリアさんが消えた途端、2つの瞳に映ったのは軽蔑だった。

確かに、すぐに立ち去らなかったあたしにも非はあるが、こんな目立つ場所でいちゃついているレガードにも問題があるのではないか?

そもそも、なぜそんなに責められなくてはならないのか?


考え出せばイラついてきた。


「言っておきますけど、覗こうと思って覗いたわけではないんですからね。

大体、こんな目立つ場所で逢引してるほうも悪いと思います」


「すぐに立ち去れば良かったでしょうに……」


「……とっさの事で動けなかったの!!あんなのを見たの、初めてだったんだから!!


「へ~そうですか……それはそれは……ん、もしかして」


―――欲情しましたか?


耳元で低く囁かれた声。

ビクリ……と体が反応した。

―――ゾクゾクする。


あ、と思ったときには遅かった。部屋に連れ込まれていた。

光のない暗い部屋でレガードの金色の目が覗き込む。


「れ、がーど」


「こんなに簡単に男性の部屋に入るものではありませんよ」


「……あ、あんたがつれこんだんでしょう!」


「……そうでしたね」


顔が近づく。

微かに香るのはアルコールの匂い。


―――なるほど。酔っていての行動か。


だったら、酔っ払いを相手にしても無駄だ。

我が家の兄のように酔った相手に常識などは通じない。

信じがたく理解できないような行動をとったりする人だっているのだ。

例えば妹を口説いたり、男を口説いたり。

これもその1つだろう。そう思うことにした。


「レガード、あんた酔っているでしょう?」


「……酔っていませんよ」


酔っ払いはみんなそういうんだよ。


呆れたようにため息を吐く。

こんな顔のレガードは始めて見る。

いつも嫌味な笑顔で毒を吐く青年。


その青年に笑顔がない。

それだけでなにかがおかしかった。


「……なにかあったの?」


無意識のうちにそう言葉に出していた。

踏み込んではいけない領域に踏み込んでしまったのかもしれない。レガードの瞳が曇った。


「……なにも、ありませんよ」


それだけを言葉にした。

途端に彼はスコンと意識を失った。


……どうなったかは言う必要はないかもしれない。

力勝負に負けたあたしは彼と一緒に床に沈んだ。

ひんやりとした心地よい冷たさを体に感じた。

下は冷たい。

上は暖かい。

耳元に感じるのは、すうすうという静かな寝息。


「……これ、どうしろと?」


どれだけ押しても動かなかった。





久しぶりの更新です。

次回はレガードの過去を書く予定です。

かなり暗い話になりそうなので苦手な方は無視してください。

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