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Real Game  作者: 片倉葵
31/32

25章・とりあえず・・・・ゆ、誘拐犯!?

久しぶりの更新です。まだまたフォルティウス国は続きます。



                   





お城へと戻るとマジ泣き5秒前な顔をしたアールがまず、ぴーちゃんへと掴みかかった。

マシンガントークでグチグチ言う。


だがもちろんぴーちゃんはどこ吹く風状態。だから矛先は自然とあたしの方に来た。

苛立ちと苦悩、それからあたし達が行方不明になった後どんなに大変だったかを事細かに喋り出してくれて・・・そういえば黙って出てきちゃったね(汗)


「ご、ごめんごめん!!ついつい」


「つい、じゃねーーー!!!なんの為にお前を与えてたと思うんだよ!!エイリス逃がさねぇだめだろうが!!!!!!それからカンナ様、カンナ様は無事か!?!?」


「いや、本当にごめん!!あ、そうだ。この子なんだけど寝ちゃって・・・」


「え、あ!!!!お、王子!!!カンナ王子――――!!!!!!!」


ここは素直に謝って。ついでにねむねむ状態のカンナを渡すと今度は侍女さん達から悲鳴が上がった。

王子!!王子が見つかったーって。


・・・・・・・・・・・・あれぇ!?!?


ギッギッギッと、まるで油を差し忘れたブリキの玩具のような音を立ててぴーちゃんを見ると彼はいつもどおりニッコリと綺麗に微笑む。


今の状況を分かっていないのだろう。

いや、今までの事を考えると分かっていてもスルーしているのかもしれない。


あの、まさか。


嫌な予感。

とアールを見ると彼も青ざめていた。


「・・・あの、もしかして・・・この子って貴族じゃなくて王族?」


「・・・・・おう。ザナル王の第二子、王位継承権第二位を持つカンナ王子だ。ちなみにお前とエイリスとカンナ様が行方不明だって城中大騒ぎだぞ」


マジ頭痛ぇ、とアールは前髪を右手ですくい座り込んだ。

ひたすら謝り続けていると遠くからガチャガチャと金属音がした。

見ればゴッツイ鎧を身に纏った兵士が何十人も門から現れてこちらへと向かってきた。

あっという間に包囲され、その内の1人、兵士Aはあたしの目の前にやってくるとロングソードとよばれる剣を突きつける。


あ、マズイ。リザードマンに喉を切られそうになった恐怖が浮かびあがってきて体が震え、


「・・・・・やめよ」


不意に腕の中に居たはずのカンナが目を覚まし地へと降りた。

姿は竜から人型へと。

首下で揃えられた新緑の髪。

大きく溢れるような、けれど意思の強そうな瞳。

ピンと伸ばした背筋に目を奪われる立ち振る舞い。


無邪気な子供だった。

クッキーを美味しそうに頬張って、あたしの隣をぴーちゃんと争っていたカンナ。

今目の前にいる少年はとてもさっきまで一緒にいた少年と同一人物には見えない。別人では無いかと疑ってしまう。

双子の兄弟と入れ替わったのか、もしくは二重人格なのか。

そう考えてしまうほど、カンナは変わった。

全てが違う。

振る舞いだけじゃない。纏う雰囲気が、鋭い刃のようになった。


触れれば周りのもの全てを切り刻む。

そんな、雰囲気に。


カンナはあたしの前に立ち塞がるとキッと兵士達を睨み付けた。兵士Aがまだロングソードを下ろしていないからだ。


カンナは若干イラついたように仁王立ちする。今にも怒鳴り散らしそうだ。

待て待て待ちなさいって。落ち着きたまえ。

この状況は仕方が無いんだからさ。事情を知らない人達にとってあたしは王子誘拐の実行犯だからね。


・・・・てか、なんでカンナがあたしと一緒にいる事伝わってないわけ?

伝わってたら誘拐犯になんてされなかったのに!!


そう考えるとちょっとムカついてきた。

カンナがあたしから離れなかったからあたし1人謁見の間に行けなくて貴賓室に残されたんだよ。

迎えに来た侍女、知ってたはずでしょ。一緒にクッキー食べていたところ見たじゃん!!

この騒ぎならカンナは少なくとも隠された王族ってわけじゃないんでしょう。

不手際じゃん。責任者出て来い!!


「やめよと言っておる!!」


「で、ですが王子。彼女には王族誘拐の疑いが」


「アイは誘拐などしてはいない。僕が自分の意思でアイの傍にいたんだ。誘拐の罪があるとすればアイの同意を得ずに城を出たエイリスにこそある」


周囲の人達がそれもそうだなっと頷いた。

納得した兵士Aも目の前にあるロングソードをゆっくりと下ろす。

ぴーちゃんの奇行、かなり有名らしいね。

 

「それでカンナ様、彼女は」


「アイこそが【女神】でありエイリスの【契約者】だ。客人ゆえ、丁重に持て成せ」


「わ、分かりました!!」


「それからロザリアに伝えろ。こんな馬鹿な真似は、二度とするなと」


「はっ!!」


ロザリアって誰?


それを聞く前にカンナはあたしの手を取った。


「アイ。一緒に来て!!父上と兄上が待ってる!!」


また変わり、子供のような無邪気な笑顔を見せてカンナはこっちこっちと手を引いてお城の中へと案内する。

重そうな扉が開き、すぐ目の前にある階段を引きずられるように上がる。

刃の様な空気が消えて心から安心した。


フォルティウスのお城は左右対称の作りになっており、作りは6階とかなり大きい。

エルタインのお城が4階立てだから1・5倍ほどもある。

だから階段上がるだけでもかなり辛い(汗)


「ゼェ、ゼェ・・・エ、エレベーターかエスカレーターが欲しい」


「えれべーたー?えすかれーたー?」


・・・異世界だったね。ないよね。分からないよね。


「えれべーたーってなに?えすかれーたーってなに?食べ物?美味しい?」


「エレベーターっていうのは人や荷物を垂直に運び移動するための昇降機・・・つまり、乗り物の事。エスカレーターは移動する階段。乗れば自動で次の階に運んでくれるの」


「人間の世界にはそんな便利なものがあるんですか!?」


「ってか、多分こっちの人間の世界にはないよ。あたしの国(世界)特有のものだし」


「そうなんですか・・・それはどうやって動くの?」


「・・・・・・・・・電気、かな?」


ごめん。お姉ちゃん専門的な事は分かりません。


「でんき・・・雷の魔法かな・・・理論的には・・・ぶつぶつ・・・」


よほど気になったらしくあれこれ聞いてくるカンナにあたしは知っている限りの情報を与えた。

エレベーターの他には扇風機やエアコン。冷蔵庫などなど。


特に気に入ったのはエアコンと冷蔵庫の存在で本当に実用化されれば一年中暖かいフォルティウス国や灼熱の国アルカナンは助かるだろうという話になった。


けれど無理だ。

この世界は魔法が発達したせいで科学というものが殆ど無い。

船は電力ではなく魔力で動く。

空飛ぶ乗り物も魔力で動く。

街道は馬を使って走る。

車や飛行機といった物が一切無い。

電気の代わりに魔力を使う。

これが基本。


・・・・いや、待てよ。

電気の代わりに氷を使ったらどうだろう。

みぞれ、みぞれって確か気温がグンと下がると雨から出来るんだっけ?

水の魔法・・・それから風の魔法を使って・・・


考え付いた論理を冗談交じりにカンナに話す。

カンナは真剣に聞いて、どういう構造がいいか、また、それを維持する方法も考えた。

所詮、素人の浅知恵であるが。


だが、あたしは知らなかった。

カンナがそれ以降、研究に研究を重ね10年の時を経て【エアコン】や【冷蔵庫】の発明をする事を。

それはまだ先の話である。





誘拐犯その一とその二。もう少し先で謎の少女ロザリアが出てきます。

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