表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Real Game  作者: 片倉葵
3/32

2章・とりあえずやれること










エルタイン王国


国土面積はそれほど大きくはない。小国というほど小さくはないが大国というほど広くはない。

だが四方を豊かな緑に囲まれたこの大地では作物や鉱物が豊富に採れ、それによって国庫は潤い、国がなりたっている。


自然の恵みを与えてくれる精霊たちに守られたこの場所をかつて人は聖地と言い、今でも親しみも込めてこう呼ばれることもある。


『ウィル・ガーディアン』……緑の都と。











「……ふざけんな★」


「ふざけてなどいませんよ★」


もう半日も続く守攻戦。

いい加減にして欲しいわけよ。マジで。


「あのさ、いきなり子供を産めとかありえないでしょ」


「ありえませんねぇ~普通なら」


「だったら!!早くあたしを元の世界に戻してよ!!!」


「頭の悪い子ですね。子供を産んだら帰してあげるといっているんですよ」


理解してくださいと、レガートは子供をなだめるようにあたしに言う。

それがまたガキ扱いされているようで癇に障る。


理解していないように思えるがあたしはきちんと自分の状況と立場を十分に理解していた。

反抗するのはせめてもの意地だ。


だってあたしはまだ処女なんだから!!!!!


産まれてから約15年。

小・中学校と女子中に通い、高校も女子高に通う予定のあたしは今まで男性と体験していなければファーストキスもまだな今時珍しい清く正しく美しく、な乙女だ(相手がいなかったともいう)


それなのにいきなりお付き合い、婚約、結婚すっとばして妊娠だ!?

絶対に無理!!!!!

しかも相手は自分より年下の10歳の少年。

たとえ本来の姿が20過ぎた年上だとしても、どうやってもありえない。


だから反抗してやる!絶対に妊娠してたまるものか!!!

そんなに子供が欲しけりゃ他をあたれ。仮にも王族でしょ。

女の子なんて選り取り見取りでしょ!!


そう言えば『そうですね』と言われた。


「まぁ、確かに女なんて選り取り見取りでしょうね。

ですが、それとこれとは話が別です。なにが不満なんですか?

呪いが解ければセリオス殿下は絶世の美青年になりますし、しかも王族ですよ?

あなたが子供を産めば、ゆくゆくは王妃に……まぁ、しょせん側室止まりでしょうけど……良い思いができる事は保障いたしましょう」


「ぜってぇ嫌」


やれやれ。と、困った顔をして肩をすくめるレガードの顔をぶん殴ってやりたい気持ちになったあたしは手元にあったクッションを彼の顔めがけて投げた。

が、彼はヒョイっと軽くかわす。

外れたか!!


「――、ちくしょう!!!」


「いけませんねぇ。まったくお転婆なんですから」


ニコリと笑う彼。


クソ!!胡散臭い笑顔しやがってこの×××野郎!!


放送禁止用語を心の中で叫びながらため息を吐いて空を見つめた。


この世界に来てから約3日。

朝から昼にかけてはレガートとこのやり取りが続けられていた。


ちなみに昼から夕方にかけては自由時間でこのお城の中で書物を読む毎日。

この世界の文字はリルバ文字とよばれる文字を使っていて、あたしの世界で言うローマ字のような文字だった。物凄く分かりやすく、正直助かった。おかげで勉強がやりやすい


そんでもって初日からセリオスとの攻防戦が繰り広げられた。

セリオスも自分の身がかかっているせいか本気で犯されるかと思った。あんな子供のようななりをしているくせにメチャクチャ力強いしね。

(でも×××蹴ったら次の日からいきなり襲われなくはなった)


2日目はなぜか食事に催眠薬っぽいものが混ぜられていて、やけに優しいセリオスに警戒して食事を交換したおかげでなんとか純潔を守れた。

今夜からはこの部屋ではなく正式にお客様として客室が用意されたらしいが……用心はしたほうが良いだろう。

いつ処女喪失になるか分からない。


そして、今現在。3日目。

逆に純潔守っている自分が凄い気がしてくるのはあたしの気のせいだろうか?

否、気のせいじゃないな(汗)


「で、レガート。今日の予定は何ですか?」


「おや~?ついに観念しましたが」


「誰がするか!!!

これ以上話し合っても昨日と同じ返事はNOなんでしょう!!

だったらさっさと次の予定聞いてあんたの側から離れたいわけ」


「おやおや。随分と嫌われたものですねぇ」


悲しいです。わたくし。

嘘つくんじゃねぇよ!!


「……さて、冗談はこのくらいにしてどちらを希望しますか?」


「質問の意味が分かりません」


「これは失礼。申し訳ありませんでした」


「白々しい」


「(無視)では、第1選択の花嫁修業を始めますか?

それとも第2選択のこれから殿下の私室にて甘い一時をお2人でお過ごしになられ「第3選択の勉強」……つまらないですねぇ」


「つまらないって……別にあたしはあんたを喜ばせるために生きてんじゃないから」


「やれやれ……そのお言葉使いも直していただきますよ」


ハァッとため息を出しながら呆れた顔をされた。

言っとくけど、あたしを召喚したのあんた達なんだからね。

文句があるなら他の人、少年ラブのショタコン女でも召喚して、呪いを解かせてあたしを元の世界に戻せってんだ。


………………ん?呪いを……解くって。


「……そういえばこの国と争っている……アークザル王国、だっけ?」


アークザル王国。


この国とは対照的に砂に覆われた大地に栄えた国。

イメージ的にはアラブ系が一番近い。

緑豊かなこのエルタイン王国とは違い砂で覆われた灼熱の国アークザルは主に商業でなりたっている(ちなみにこの2つの国が長年対立しているのは有名な話だった。アークザルはエルタインの鉱石や作物がどうしても欲しいらしい)


「えぇ。アークザル王国がどうかいたしましたか?」


「アークザルの魔導士がセリオスに呪いを掛けたんなら、解くことも可能なんだよね?」


「理論的には可能ですが」


「じゃぁ!!呪いを掛けた相手をひっ捕らえてきて呪いを解かせれば万事旨くいくんじゃ」


「無理です(ズバッ)」


「なんでやねん!!!」


これ結構良い感じじゃない!?呪い解けんじゃない!?

その期待をザックリと奴は切り裂きやがった。

少し馬鹿にもしている。


「あのですね、どうやって魔法を掛けた相手を特定するんですか?」


「……う゛……そ、それは」


「仮に特定できたとしても、使われている呪いが邪法ですから、解くのに何年かかるか分りませんよ」


「ううううう(汗)」


「そもそも、あなたは魔法と邪法の違いは分りますか?」


「魔法は自然界の源、精霊の慈悲を借りて力とし、邪法は人の怨念や無念を源としている。です」


「昨日今日で良く理解できましたね……そうですね、70点差し上げます」


一応ゲーム攻略済みですから。最低限の事はね、覚えているよ。

つーか、70点ってなにが基準になっているわけ?


「簡潔に言いすぎなので70点にいたしました。では、おさらいの為に簡単にご説明しましょう。

まず魔法には簡単に分けて8つの精霊の力、すなわち火・水・風・土・雷・木・闇・光といったものが存在します」


「……今心の中読んだよね?」


「(無視)8つの力はそれぞれ特殊な【魔力】が存在しているため、特定はそう難しくありません。

たとえば『水』の力でわたしがあなたに呪いをかけたとしても直ぐに同じ属性の『水』が必要だと特定されて解除されてしまいます。ですが、邪法ではそうはいきません」


「(無視された!!!)現在確認されている邪法はすでに失われた技法で作成されているために通常の呪いの解き方では解除することは出来ない。

さらにそのほとんどが対になっているため発見は極めて難しいし、今回使用された邪法と対、または同じ種類のものを探すのにはほぼ不可能に近いと思われる……これであってる?」


「合格です。その通りですよ。

セリオス殿下にかけられた邪法は恐らく弱者の呪い。その対となる強者の邪法、もしくは同じ物を探し出すなんて無理です。不可能です。第一、そんな面倒な事していられないでしょう?」


「本音出たね。面倒って」


「……おや」


わたしとしたことが……っと、彼、レガードは困ったようにあたしの方を見た。

ニヤニヤって……お芝居か、こんきちしょう!!


ん?けど、待てよ。

ゲームでは確か……アークザル国の第二王子、ブライド・アークザルが弱者の呪いを持っていなかったっけ?

……うん。持ってたような気がする。


それに、ゲーム後半で確かヒロインがアークザルに誘拐され自国に招待される場面があった。

その時に城で監禁されるが逃げ出して……その時にブライドの部屋で弱者の呪いを見つけるというシーンがあったはず。


この場合、ヒロインはあたしになるから、あたしが誘拐されるはずだ。

ゲームは何度かプレイした。

お城の構造もなんとなく分る。


だったら大人しく誘拐されて、ブライドの部屋から呪いを盗んでなんとかこの国に戻って来ることが出来れば、晴れてあたしは自由の身になれるんじゃ……


そうよ、出来る!!あたしなら出来る!!

なんていったってあたしは元プレイヤーのゲーマー!!多少のバグが起きたとしても持ち前の根性と度胸で乗り切ってやるわ。

ビバ!!自由。帰れる!!!帰れるわ!!!!


「つーことでレガード」


「なにが『つーことで』なのか分りませんがなんでしょう?」


「あたし、武道やりたいです」


「……は?」


無事にこの国に戻って帰るために。









えっと、この世界の魔法について説明しますね。大きく分けて3つあります。


魔法はそのままのイメージで使用します。たとえ炎の塊を飛ばしたり空を飛んだりするのが『魔法』。これは精霊と呼ばれる人たちの力を借りて使用します。精霊は魔術を持った人間にしか見えません。というか、恥ずかしがりやなのでめったに姿を現したりはしません。


次は邪法です。これは人の悪意や怨念が形になったものです。通常は穢された地に漂っていたり、まれに箱や水晶に閉じ込められていたりもします。主に呪いに使われます。常に2つ、対で作られている為呪いを解くのが滅茶苦茶難しい。


最後は召喚術です。レガードがおこなった術もこれです。異世界からモノを呼び込んだりします。人以外の生物と契約をおこなえば世界中どこにいても呼び出す事も可能ですが大変高度な術で1つの国に1人いれば良い方です。


ちなみに現在まったく使用不可能になっている魔法は古代魔法と呼ばれます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ