23章・とりあえず真実(中編)
私とプルトの結婚式から3ヶ月が経った。
とっても幸せな中1つの朗報が届けられる。
なんとあのエリオスが婚約したというのだ。
ぜひとも婚約式に参加して欲しいと言われヨーナとザナムと一緒に行く事になった。
もちろんプルトも一緒にと書いてあった。
でもプルトはあまり良い顔をしなかった。
むしろ行くなと言われた。
けれどエリオスは私がこの世界に来たときからずっとお世話になっていた人だ。
だから行きたいと訴えたら最終的にプルトは諦めてくれた。
そしてお守りを私に与えた。
プルトの鱗。
私の命が危機に晒された時、私の命を救ってくれるという。
心配性だなぁっと笑った。
騙された!!!!
以前と変わらない部屋(この世界に来た当初借りていて部屋)に監禁された私は目の前の男性・・・アルカナ王をにらみ付けた。
エリオスの婚約式は嘘だった。
全てはプルトの命を奪うためアルカナ王が仕込んだ罠だった。
エリオスも城の地下に監禁されているみたい。
なぜそんなにプルトを殺したいのかと聞けばプルトが邪魔だという。
プルトは竜族の王、竜王。
プルトが死ねば竜族全体の力が衰える。
そこを狙ってなんの罪もない竜を乱獲する気なんだ!!
『まったく、愚かな異世界人だ。セリオスもあのような化け物に絆されよって・・・』
『王よ!!残酷な魔王は存在しないのです!!プルトは、プルトは本当に平和を願っています!!!』
『・・・・・・・・・・』
『考え直してください!!竜族と戦う必要はありません!!エリオスもただそれを伝えたくて』
『・・・そんな事、とうに知っておるわ』
『・・・え?』
アルカナ王はクックと心底楽しそうに笑い私の顎を掴んで視線を合わせた。
それは凄く冷たい眼差しで、
『ま、さか』
まさか、そんな・・・
信じたくなくて、イヤイヤをしながらその場に座り込んでしまう。
けれどもそんな私をあざ笑うかのようにアルカナ王は言葉を発する。
『竜王プルトが魔王などという噂はただのまやかし。そんな事、先代のときから知っておるわ。そうだ。1つ良い事を教えてやろう。魔王などという噂は我が国が、我等の偉大なる先祖が永きにわたり広めたもの』
『ど、どうして・・・』
嫌な予感ほど良く当たってしまう。
『なんでですか!?なんで、!?』
『・・・馬鹿か、お主』
私の言葉にアルカナ王はゴミに対してするように唾を吐き捨てた。
『繁栄と金の為に決まっているだろう』
『・・・信じられない』
『なにがだ?竜は金になる。その体は全てが余す所なく最高の道具となるし土地だってそうだ。
あの、緑豊かな大地が、欲しいぃぃ!!!!!!』
アルカナ王はすでに狂っているとしか思えない。
口の端から涎を垂れ流し、自分の利益だけを求める暴君。
そしてその為には、手段を選ばない。
『・・・この国を襲うモンスターは』
『我ら王族が操っておる。邪法を使ってのぉ』
『魔王退治のためにと民から巻き上げる多額の税は!?』
『もちろん我の私産になるのぉ。民のものは我ら王族のもの。奪ってなにが悪い?』
クッと、悔しさのあまり唇を噛み締めてしまった。
血特有の鉄の味が口中に広がり、涙が溢れて止まらない。
悔しい!!
悔しいよ!!
『・・・さて、質問は終わったかのぉ。それともまだあるか?』
『・・・クソ野郎!!』
『元気があって宜しい!!では次は我の質問に答えてくれるか?』
髪を掴まれて無理やり頭を上げさせられた。
無理な体勢に体が悲鳴を上げる。
『教えろ』
『・・・なにを?』
『フォルティウスへの進入の方法を』
フォルティウスには特殊な結界が張ってあり特別な方法でしか入国できない。
私に聞くって事はエリオス喋らなかったんだ・・・
『・・・無理よ』
『なんじゃと?』
『フォルティウスは特別な方法を持ち入らないと入国できない仕組みになっているの。だから貴方には無理よ、アルカナ王』
そしてその方法を、私は喋らないわ。
私の決意を見たのかアルカナ王は私を床に転がすとその手に剣を持った。
殺される。
グッと目を瞑り衝撃に耐えようとした。
たとえ拷問されたとしても、言うものか!!
けれどいつまで経っても衝撃は来ず、代わりに聞こえたのはジャリッという音と頭皮の痛み。
『っ!!―――なに?』
目を開ければアルカナ王の手の中に茶色掛かった黒髪があった。
髪を切られたと理解するのにさほどの時間は掛からなかった。
首を動かせば肩ぐらいまであった髪の一部が数センチぐらいなくなっていた。
一目で分かるほど、ごっそりと。
『・・・なにに使う気』
『攻められないならおびき寄せればいい』
アルカナ王は自分の部下を呼び寄せると小さな箱に私の髪とプルトに貰った鱗を入れ、そして・・・
『―――っ!!!』
私の血を垂らした。
『さて、女神様。あなたの夫どのはこの箱の中身を見てどう行動しますかな?』
『!?!?』
『我の予想ですと・・・女神を殺されたと思った竜王は怒りに狂い罠だらけのこの国に侵入してあえなく捕まってしまうでしょうな』
『・・・やめて』
『楽しみですなぁ。捕らえたらまず初めに首を切り落として女神様の前に差し出して差し上げますよ』
『いやぁぁぁあああ!!!』
こないでプルト。
絶対に助けにこないで!!
程なくして戦いは始まった。
ドラゴンハンターと呼ばれる特殊部隊が組まれ誘い出されたプルトの体に目に見えない槍が打ち込ちこまれる。
その度に苦痛な叫び声が上がりプルトの体中から鮮血が走った。
まるで赤い雨が降るかのように・・・
『やめて!!逃げて、プルト!!!!』
『あはははは!!!!!!逃げてみよ、竜王。その代わり女神を殺してやるぞ!!!!!』
私のせいで満足な攻撃すらできないプルトは空を飛び回るしかできない。
その空にも結界が張られ、ある一定以上の高さを超えれば雷が降り注ぎ彼の体を焼き尽くしている。
一気には殺さない。
長引かせ、苦しめて、殺す。
その様子をみてアルカナ王は満足げに頷いた。
『・・・最低』
『ん?なにか言ったかのぉ』
『あんたこそ、あんたこそ本当の魔王じゃない!!!』
『それこそ我に相応しい最大の賛美じゃ。見よ。既に竜王は捕らえたも同じ』
『・・・ぃゃ』
『ついに我らの手で捕らえたのじゃ!!』
目の前でプルトの翼が裂けた。
『いやぁぁぁあああ!!!』
私の悲鳴が城中に響き渡る。
プルトプルトプルト!!!
地面へと落下し、大地を赤で染めた王はそれでも戦う力を失ってはいなかった。
咆哮が刃となり、尾が刃となる。
地上での戦闘は激戦を極めた。
弱っていてもプルトは竜。
それも竜族の長、竜王。
最強の力を持った空と大地の支配者。
たとえ翼を失おうとも、魔力を封じられようとも、人間程度にひけは取らなかった。
次々と倒れる騎士団。
それに焦ったアルカナ王は最後の手段を使った。
弱ったプルトに竜殺しと呼ばれる特殊な邪法を使用したのだ。
呪文が終わると同時にプルトの体から夥しい量の鮮血が噴出し彼の命を蝕んだ。
私と、プルトの目が一瞬だけ交わった。
私の大好きな赤い宝石のように澄んだ目はどす黒く歪んでしまっていた。
『オノレ、オノレ人間共ヨ!!!!ヨク聞クガイイ!!!!
我ノ体ハ滅ビテモ我ノ魂ハ滅ビヌ!!!!未来永劫呪ッテクレヨウゾ!!!!』
その呪いの言葉を最後にプルトは死に絶えた。
『あ、い、いやぁぁぁああああああああああああああ!!!!!!!』
ルース暦3200年。
竜王プルトはこの世から消え去ったのだ。
プルトが亡くなって3日が経った。
泣き疲れ、心労で倒れていた私の元へヨーナが現れ(ずっと引き離されていた)城からの脱出を試みた。
街から何キロか離れた場所にはすでにエリオスとザナムがいてこれからどうするか話し合うこととなった。
その間、エリオスは何度も何度も私に謝罪の言葉を吐いた。
エリオスのせいじゃないのに・・・エリオスを憎んでしまう自分に嫌気がさした。
城からの逃亡生活中、とある盗賊に捕まってしまった。
アジトへと案内されると驚くべき事にそこは国の北にある廃れた城跡で隊長は女性・・・しかもエリオスとあまり年の変わらぬ女性だった。
話の分かる人で聞くところによると盗賊というのはただの隠れ蓑に使っているだけ。
本当はこの国を取り戻すための反乱軍『リベロ』を結成しているという。
なんでも女性、ラクリアの夫は貴族だったがこの国の真実を知って人知れず闇に葬りさられてしまったらしい。
ここにいる『リベロ』のメンバーはそういった人々の集まりで目的はもちろん暴君アルカナ王を倒しレルガン王国を昔の緑あふれる国に戻す事。
そこで唯一の血縁者であり真実を知りつつも王に反旗を翻したエリオスに『リベロ』の新たな統治者に、私には軍の守り神なってもらいたいと言った。
3日3晩悩んだエリオスはついに覚悟を決め反乱軍を率いるリーダーとなった。
私も、覚悟を決めた。
お飾りでもいい。士気が高まるからとハッキリとラクリアに言われた。
こんな私でも力になれるなら、協力しよう。