18章・とりあえず・・・誰?
「き、きゃぁぁあああああ!!!」
リアの甲高い悲鳴があたしを起こす。
今何時だと思ってるのよ・・・まだ朝早いじゃない。
もぞもぞと体を動かした。悲鳴は未だに鳴り止まない。
あぁ、もう煩いなぁ。
布団を頭まで被り少しでも声が聞こえないようにする。
その間になんかバタバタという音がする。
誰かが慌てて走っている音だ。
もっと静かにしてよね。はた迷惑よ。ねぇ、ぴーちゃん。
無意識の内に昨日拾ったぴーちゃんを探す。
触れた。
けれど昨日感じた冷たい鱗の感覚がない。
あるのは暖かい体温。
そして微かに目を開けて見えたのは銀色の糸。
徐々に視界が広がっていく。
青年だ。銀の長い髪をした青年。
目は真っ赤で綺麗。宝石みたい。
でも何より目に付くのは端正な顔立ち。まるでこの世の美を集めたかのように美しい。
その顔が、動いた。
「おはよう、アイ」
額に感じたのは生々しい感触。
・・・キスされた。
「・・・・・・・・・・あれ?」
そこまでされてあたしはやっとハッキリと目が覚めた。
そして今の状況に気がつく。
思わずバサッと毛布を剥ぎ取った。
・・・・・・メイドが悲鳴を上げるわけだ。
なにせその青年は全裸であたしのベットに寝ているのだから。
うん。体のライン丸見え。あの、ブツも隠していないわけだから・・・
バタバタとお馴染みのメンバーが集まってきた。
皆目が丸くなっている・・・レガード以外(奴はニヤけている)
「ぎ、ぎゃぁぁあああぁあぁああ!!」
・・・・・・・・・とりあえず悲鳴あげて気絶しよう。
そう思ったある日の朝。
「我はアイと契約した。だからアイが我の主人だ」
とりあえず服を着替えて話を聞けば青年は正真正銘、昨日のドラゴンだという。
この世界でドラゴンは最高ランクの神獣として崇められている。
それゆえに現在話し合いの場として設けられたのはこの城で一番の貴賓室。
その椅子にあたしはぴーちゃんに抱っこされた状態で座らさせられている。
・・・その面白いって目をやめてくんないレガード。
「・・・説明しろ。アイ」
少し怒気を含んだセリオスに言われてあたしは昨日のことを思いだす。
説明しろってね、あたし自身、なにが起きたか理解していないんだけど・・・
「とりあえず昨日バルコニーでドラゴンを拾って、食事を与えて、名前をつけて、一緒に寝たらこうなりました」
そう。一緒に寝て起きたらドラゴンは人型に変身していた。
・・・うん。これ以外に説明できない。
とすればレガードが『なるほど』と呟いた。
「つまり、貴方は竜族に『真名』を与えたわけですね。それでこの方の名前は?」
「ピーチ。ぴーちゃん」
「・・・ピーチ様はその『真名』を受け取り契約したと」
「・・・どういう事?」
「召喚に使う精霊や魔獣、神獣との契約は相手に『真名』、つまり『名前』を与え相手に承諾される事で成り立ちます。あなたが昨日何気なくつけた名前をこの方が受け取ったことによりあなたとピーチ様の間では魂の契約がなされたのです」
「ふ~ん・・・じゃなんで人型になってるの?」
「・・・さて。竜族の方にあったのは私も初めてですから・・・ピーチ様はご自分がなぜそのような姿になったのか理解していますか?」
「我らは、契約者から力を得ることが出来る」
「力、ですか」
「契約者とは、我らに『生気』を与えてくれる存在だ。元々我らは人型にはなれるがそう長くは持たない。せいぜい、数時間が限度だ。だが、契約者がいれば話は違ってくる。我らと魂の契約を交わした人間は無意識のうちに我らに『生気』を与えてくれる。その力を魔力に変換すれば、長時間の変化も可能だ。そして」
顎をもたれグイッと横に上げられた。
赤と白が視界に広がる。
「アイが、無意識に望んだこの姿に形に取った」
ボンッと湯気が顔から立った。
こ、この世界の住人は揃いも揃ってあたしを萌え死にさせる気なのかよ!!
死んじゃうよ、本気で!!
てか、無意識でも美形を望むって・・・あたしヤバくない?
・・・気をつけよう(汗)
「アイ?」
顔がさらに近づいてくる。
「ちょ、ちょい待ち!!」
恥ずかしさのあまりぴーちゃんの顔を手で隠した。
ギュギュッと押しやれば何を考えたかぴーちゃんはあたしの手を取り、
「いやぁぁああ!!!」
舐めた。
赤い、生暖かい舌がペロペロと未だに掌を撫でる。
あまりの衝撃に口がパクパク開き言葉は喉の奥で消えた。
「い、い、いいいいい!!!」
「だが、このままでは直ぐにこの姿は失われるだろう。アイの魔力はまだ不安定だからな。アイ、もっと我に力をおくれ。代わりに我も、アイにあげよう」
ぴーちゃんの手があたしの手首を掴んだ。
優しげに、愛おしそうに、その唇は掌から額に動く。
「契約に従い、我、ピーチ・エシェンドの全てを主アイに捧げる事をここに誓う。いつ、いかなる時も、いかなる場所にも、アイが望めば駆けつけよう」
ビリッと痛みが額を走り、思わずぴーちゃんの服の裾を握り締めた。
なにが起きたのか半分も理解しきれていない。
皆の視線が額に集まる。
「・・・これは・・・」
「・・・所有者の証、ですわね」
リディの一言が部屋の中で響いた。
・・・嫌な予感。
この世界で手に入れた危険回避能力が見るなといっている。
けれど見ないうちには先に進めそうもない。
そろそろと、抱かれたまま横を向いた。
鏡の中に、美しい男性に抱かれたままの自身の姿が映っていた。
額に淡い桃色の『花』のような痣を咲かせたあたしの姿が。
「なに、これ」
「所有者の証だ」
今まで口を開かなかったセリオスが眉間に皺を寄せてゆっくりと口を開いた。
「だから、所有者の証ってなんなの?」
単語じゃなくて。
セリオス、説明プリーズ。
「精霊や神族はかなり嫉妬深い。だから契約者を気に入れば自分の印をつける場合があるんだ。胸元とか、頬とか、とにかく主張できる場所にな」
「つまり簡単に言えば『これは僕のもの』という証です。人間で言えばキスマークをつけているようなものですよ」
シリウス、それってつまり・・・つまり!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・四六時中羞恥プレイ」
「ですねぇ。アハハハハ!!!」
レガード、てめ、笑うなよ!!
あぁもうマジ恥ずかしい!!
「うれしい、アイ?」
尋ねてきたぴーちゃんにどうして良いか分からずとりあえずあたしはぶんぶんと勢いをつけて横に振った。
とたんに彼は泣きそうな程に顔をゆがめてしまった。
美青年の、憂い。
「・・・・・・・・・・・・・アイ」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・アイ」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アイ・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ワーイ。ウッレシイナァ(棒読み)」
負けた。
純粋な瞳に負けてしまった。
ぴーちゃんが満点の笑顔でギュっとしてきた。
白檀に似た香りがあたしを包む。
「アイ、これからはずっと一緒に「んな事させるかぁぁ!!!」」
ぴーちゃんの言葉を遮ったのはセリオスでも、レガードでも、シリウスでも、リディでも、リアでもなかった。
皆が同時にその声の主に顔を向ける。
窓の外には赤い髪をして右目の下にドロップ型のタリスマンを埋め込んだこっわい人がいた。
ぜいぜい息をして、今やっと着きましたという感じで。
「・・・誰?」
「え、エイリス~~~~~てっめ、見つけたぞ!!!」
「・・・あ、アール」
新キャラ、続々登場。ドラゴンはすっごく好き・・・人型も好きなんですがちっちゃいドラゴンがパタパタしている姿が大好きです!!