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Real Game  作者: 片倉葵
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16章・とりあえずお姉さん






アリアスに連れられてやってきたのはセリナギの文様が描かれた扉の前。

コンコンとノックをすれば鈴のような声の持ち主返事をして姿を現した。

お茶会を始めているせいか、バターや砂糖の甘い香りを纏ったまま。



「あらアイ。来てくださったのね。とっても嬉しいわ」


こちらに来てください。って、誘ってくれるのは嬉しいんだけどまずはあんたの部屋の中で優雅に紅茶を飲んでいる麗しい美形を紹介していただけません?































進められた席についてリディに入れられた紅茶を飲みながらあたしはちらりと視線を左に向けた。


整った顔立ち。

肩で綺麗に揃えられた髪の色はレッドパープルを少し濃くしたぐらい。

瞳はアクアグリーン。


着ている服はシリウスと同じ聖騎士団の制服だった。

耳を飾るのは『紫の騎士』の証しである丸い小さな石でできたピアス。

この国で取れる鉱石で作られた聖騎士団員の『身分証明書』

それは彼にとっても似合っていた。


見た目は文句なしの美形。

だけど、なにか違和感を感じる……なにかがおかしい。


でも良くみればその違和感の正体はすぐに分かった。

体全体が丸みを帯びている。

そう。どうあがいても消す事のできない女性特有の体つき。


ってことは彼は女?

つまり男装しているの?


「あの、失礼な事を聞きますが女性ですよね?」


確認のために聞いてみる。間違ってたらとりあえず誤ろう。


「えぇ。女性ですわよ。レオナ、自己紹介なさって」


女性で合っていた。

ひとまず安堵のため息が出た。

リディに言われてレオナ……という人は紅茶を飲む手を休め言い放った。


「ご機嫌麗しゅうアイ殿。私の名前はレオナ・ショルダーという。今日から家族になるわけだから私の事はぜひ姉上と呼んで欲しい。」


顎に手をあてて微笑む彼女は煌びやかでまるで大輪の薔薇を思わせた。

……あたし、生まれて十数年。背後に花を咲かせた人なんて始めて見た。

あ、そういえば姉って……じゃぁこの人の家でお世話になったりするのかな。

とにかく挨拶しないと。


「初めまして。アイ・カグラと言います。えっと……レオナさんと呼んでも」


「姉上」


……あれ?


「あの、レオナさ「姉上」…………」


こ、この人。


「あの「姉上」…………」


一段と強い言葉で言いなおされた。

こ、この人強い!!なんか逆らうな的オーラがミシミシと突き刺ささる。


レオナさんは紅茶も飲まずにジ~とあたしの顔を見ている。

あ、穴が開きそう。恥ずかしいよ!!こんな美形(女性だけど)に見つめられるなんて!!


助けて欲しいと。助けを求めてリディを見れば完全無視。

むしろ巻き込むなとその目をスッと流すと紅茶に手を伸ばしほんとにガン無視。

背後にも無視という文字が見える。あぁん!!薄情者!!!


「……悲しいな」


どうしたらいいか分からずに迷っていればそんな言葉がレオナさんから。

視線を下に逸らし、微かに目を細めた彼女は不意に涙を流す。


……え゛


「アイは私と仲良くはしてくれないのだね」


「いや、あの、仲良くはしたいですが……」


「ならば!!なぜ姉上と呼んでくれないのか!?私は、私は可愛い妹が出来る日を今か今かと待ち望んでいたというのに!!!!」


「否、可愛くありませんから!!」


「なにを言う。君は自分を過小評価しすぎだ!!」


レオナさんは椅子から立ち上がりあたしの前へと跪くとクイッと顎を持って。


「陶器のように白い肌」


「リディの方が白いし肌触りも良いですって!!」


「ブラックパールのように輝く瞳。夜空よりも美しいその闇色の髪」


「リディのアメジスト色の瞳の方が宝石みたいだし、リディの髪の方が絹みたいにさわり心地が良いですって!!」


「食べてしまいたいほど可愛らしいサクランボ色の唇。思わず触れてしまいたくなる頬はまるで咲きかけた薔薇のよう。」


「リディの唇の方が……って、何言わすかいな―――!!!」


「なによりその性格が気に入ったんだ。ドンピシャに好みなんだ」


「リディの方が可愛いじゃん」


「性格に難ありだ」


あぁ。納得。


「なんでそこで私を見ますの?」


いや、べつに……


「そういう訳で楽しみだったんだ。なにせ我が家は男しかいない。華がない!!」


「レオナさんがいれば華あるじゃん」


「残念ながらわたしは」


「レオナは幼い頃から剣一筋なんですのよ。趣味は剣術。特技は武術。礼儀作法は完璧ですのに立ち振る舞いも衣類もまるで男そのもの。もうショルダー公爵は嘆いていらっしゃっいましたわ。待望の娘だったというのに……」


「うん。まぁこればかりは仕方が無いね。男性の服の方が似合ってしまうんだよこの顔には」


ドレスも似合いそうだけどなぁ。


「それに、いざというときあのヒラヒラの服では動けないではないか。何度引きちぎりたくなったことか…それならいっそ、男装した方が良いと思わないかい?」


額に手をあてて『あぁっ』と嘆くレオナさんにリディが冷めた視線を送った。


「引きちぎる方が可笑しいのですわ」


「同感……」


「だがもう父上が心配する事は無い!!我が家に可愛らしい【妹】が来るのだからねぇ!!」


「言っておきますけど、貸すだけですわよ。返してくださいませね。アイはお兄様と結婚するのですから」


「リディ!?」


あんたなに言ってんの!?


「ふむ……だが聞くところによれば今回の婚約は彼女の同意を得たわけではないのだろう?無理強いは良くない。どうだい、アイ。我が兄上と付き合ってみたら。妹の私が言うのもなんだが兄上はそれはそれは良い男だぞ。紳士的だし、我が家の跡取りだから食うのには困らないぞ。それとも弟を紹介しようか。成績優秀で将来有望だ。なぁ~に。アイより2つ年下だが男というものはすぐに大きくなる。その内年など気にならなくなる。どうだ?」


「レオナいい加減になさいませ!!アイは私の姉になるのですよ!!」


……もうほっとこう。


本人無視して話を進めすぎ。しかも2人とも自分勝手。

あたしは、セリオスともレオナのお兄さんや弟さんとも結婚しません。家に帰るんだから!!


心を落ち着かせるためにゆっくりと紅茶を飲んだ。

あ、良い茶葉使ってる~お菓子も美味しい♪


「「アイ!どっちが良い!?」」


……どっちも嫌だって。





















実はこれを投稿する前に割り込みで13・13章という短編を書きました。レガードとシリウスとの出会い話でセリオスは出てきません。興味のある人は読んでみてください。

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