13・13章・とりあえず短編
仲が悪いレガードとシリウス。
実はこんな出会いでした。滅茶苦茶短いです。
エルタイン王国でおこなわれた武道大会。
史上最年少で優勝したのはわずか15歳の少年だった。
獲物はレイピアとよばれる細身の剣。
一瞬のうちに相手の急所を掴み軽やかに敵を倒すその姿はまるで天使が踊っているかのように美しかったと誰かが言った。
女か、男か。
傭兵という仕事に付いていたシリウスに対し侮辱の意味も込め、性別をあからさまに聞いてきた輩は大勢いた。
中には男装しているのでは無いかという声も上がった。
もちろん、わざとである。
屈辱に震えるシリウスはなんとか怒りを納め騎士団の訓練所へと向かい始めた。
クスクスと笑う声が酷く耳触りで一刻も早くこの場を離れたかった。
そんなシリウスの前に進路を塞ぐかのように現れた男性がいた。
眼鏡をかけた若い男。なにやらうんうんと頷いている。
「なにか?」
「あぁ、少し確認したいことがありまして」
その男性はニッコリと嫌な笑顔を貼り付けて
「・・・おや?やはり、男ですか」
胸を掴んだ。
しかも掴んだだけではない。揉んでいる。それはもう、モミモミと。
周囲の男達から【おぉ~】という尊敬のような声が上がった。
「レガード様、どうですか、感触は!?」
「男性なのでやはり硬いですね。見た目が麗しいのでもしかしたらと思ったのですが・・・ハァ」
「レガード様~!!女性の中にはほぼまな板と言うのに相応しい胸の持ち主もいるんですからもしかしたらその類かもしれませんよ」
「それもそうですね。どれ、1つ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・男ですよ」
ピクピクピク。
怒りのあまり頬が引きつる。
ギロリとした眼差しでレガードと呼ばれた奴を睨んで男だと、ハッキリ言ってやった。
にも関わらずレガードはシリウスの服に手をかけ脱がせようとする。
我慢も限界だった。
一瞬のうちにレイピアを取り出し横へと引いた。
死んだら死んだ時だ。あの男が悪い。
捉えたと、そう感じた。
感じた手ごたえにシリウスは薄っすらと口元を歪めた。
「いや~中々の腕前で」
「・・・・・・・・・・・・・・なに?」
死んだと思った。
だが、レガードは生きていた。
僅かな時間で魔法を発動させたのだろう。
青い鎖で編まれた球体がぐるりとレガードの周りを囲み彼を守っていた。
結界魔法である。
しかも、かなりの強度を誇る最高のもの。
限界を迎えたのは剣のほうだった。
パキンと、砕けた。
「おや~折れちゃいましたね。すみません。新しいの、買ってあげましょうか?」
嫌な笑顔。
あきらかに馬鹿にされていた。
チャキッと無言でシリウスは二本目のレイピアを取り出した。
構え。
そして、
―――切った
シュンと、風を切る音が木霊する。
剣の風圧はレガードを通り越し、その後ろに聳え立つ大木を切り裂いた。
ドシンと大きな音を立て左右に倒れこむ。
その有様を見てパニックを起こしたのは先ほどまでレガードと一緒にシリウスをからかっていたギャラリー達であった。
今更ながら自分達が敵に回した者の実力がどれほど凄まじいものなのかを理解してしまったらしい。
だって、ほら。国一番の実力者であるレガード様に、
「・・・・・やりますね」
傷を負わせたのだから・・・
レガードはスウッと目を細めると絶対零度の眼差しをシリウスに送った。
その頬には数ミリの傷が横に出来ており真っ赤な血液が垂れ始めていた。
レガードはクイッと血を拭う。
「「殺す」」
地の底から響くような2つの異なった声が合図となり、コングが鳴った。
その戦いは実に2時間にもわたり、城の約四分の一を破壊したという・・・
「・・・・・・・・それ、全体的にレガードが悪くねぇ?」
「ですよね~」
リアから聞いた仲の悪い2人の事情。
やっぱ悪いのはレガードだわと、かつて半壊したという騎士団の訓練所を見てアイは脱力した。