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Real Game  作者: 片倉葵
17/32

13章・とりあえず決着






振り下ろされる短剣は間違いなくあたしの体に突き刺さり命を奪うだろう。


わずか一瞬のうちにその考えに至り自然と体が動いた。


逃げ切れない、避けきれない。

ならば逃げるのではなく、急所を守れ。


とっさに目をつぶり、手でグーを作って頭の上でガードする。

襲い来る衝撃に備えてジッと堪えて待っていると、


「ご無事ですか、アイ様」


「……あれ?」


聞き覚えのある声。


サラリと、青銀の長い髪とそれを纏める髪飾りがあたしの頬を撫でた。

その手にあるのは細かい装飾が施された槍。あたしの使う訓練用のではなく実用的なもの。

その槍はある一点を貫いていた。


「……シリウス?」


「はい。お怪我はありませんか?」


「怪我?怪我なんてしていないけど……それより侵入者は!?」


確認しようとすれば耳元で見ないように囁かれ抱き締められて止められた。

それで侵入者がどうなったのか……分かった。

部屋に入ってきた騎士団が動かなくなった侵入者の遺体を確認する。


「ご無事ですか、セリオス様」


「あぁ。少しやられたがな……護衛はどうした?」


「皆、廊下で眠っています。おそらく眠りの魔法でも使ったのでしょう」


だから誰もこなかったのか……あ。


「セリオス!!怪我平気!?」


最後に見た光景が頭をよぎった。

侵入者の剣は確かにセリオスの腕を貫通していた。


「……俺は平気だ。それよりもお前の方が」


「平気なわけがないでしょ!!!」


怒鳴ったことで部屋の時間が一瞬止まった。けど、無視だ。

それより言いたいことがある!!


「平気なわけがないよ!!腕、貫通していたじゃん!!」


「この程度の事、いつものことだ」


「いつものことって……」


「殿下、失礼します」


白い法衣を着た女性がセリオスの腕を持ち、杖を媒体として風と水の精霊を呼び起こした。

風と水は癒しの精霊。

不思議な光がセリオスを包むと傷はあっという間に塞がり、薄い傷跡を残す程度にまでなった。


これが、魔法。


「うわぁ」


魔法をまじかに見たのは初めてだった。

レガードは実技をするにはまだ早いといって見せてくれなかったし(見たらやりたくなる)


「違和感などはございませんか?」


「大丈夫だ。問題ない。アイ、お前の方はどうなんだ?」


あたし?あたしって……あぁ(ポン)


「首の怪我のこと?」


「それもあるが……俺が突き飛ばしたせいで体も打っただろう?」


……そういえば打ったね。完璧に忘れていたよ。


思い出したら急に痛くなってきて、どうして良いか分からずにとりあえず体を丸めた。

ズキンズキンって、これ腰打ってない?


「やはり思っていた以上に怪我が酷いみたいだな。マリン、アイの傷も直してやってくれ」


「はい」


女性……マリンさんが杖を振るとセリオスと同じ不思議な光があたしの体を包み込んだ。

薄っすらと斬られていた首の傷は消え、体中の痛みも消えうせる。


「どうだ?傷の具合は」


「あ、痛くない!!」


魔法って凄い!!


「ありがとうございます!!」


「いえ、ご無事でなによりです」


「マリン、この部屋の始末は任せる。アイ、来い」


「あ、うん」


治してもらった御礼を言って、セリオスに引っ張られて一緒に部屋を出た。シリウスも他の騎士と話すとあたし達の後を追いかける。


向かった先はセリオスの部屋から少し離れた貴賓室。

流石にガラスだらけの部屋で今夜眠ることは出来ないからね。


用意された貴賓室は貴族御用達の専用ルームで、中は豪華な仕上がりになっていた。

触り心地の良いカーペット。見るからに貴重な品々。壁にかけられた絵画。


落ち着かない……とりあえずお茶でも入れよう。

あたしの分と、セリオスの分。

それからシリウスの分も。

今夜は部屋の中でシリウスが護衛に付くようになった。

さすがに襲撃があった直後だから必要以上の警戒がなされるみたい。


「セリオス、シリウス、紅茶飲む?入れるけど……」


「メイドに入れさせたらどうだ」


「でもなんか自分でしたいの。落ち着かないから……飲むでしょ?」


「頂きます」


「あぁ、頂く」


「オッケー。でも吃驚したよね。襲撃だ―!!なんてさぁ。2人とも無事に済んでよかったけど」


「そうだな……無事でよかった」


セリオスはソファーから降りてあたしの前までやってきた。

その手を顔に近づけると、耳元辺りをサラリとなで上げる。


ドッキン


……ドキンって、あれ?


セリオスの浮かべる穏やかな微笑に……胸が一瞬きゅんとなった。

あれれ?あたし、どうなったの?

胸が、胸がドキドキして止まらない。


いや、ね……顔は好みなんですよ。マジなところ。

ただ性格に難アリ。おまけに10歳の子供の姿っていうのが恋愛の対象外になっちゃっているわけで……うん。

……あたし、セリオスのこと、嫌いじゃない。

むしろ、むしろね―――


「で・ん・か♪」


「ぎゃぁぁあああ!!」


考え中に後ろからポンッと肩に手を置かれ、【天敵】といえるヤツの出現で吃驚したあたしは思わず最大級の悲鳴を上げてしまった。


おま、吃驚したわ―――!!!!


「なんですか騒々しい。それに人の顔見て悲鳴上げるなんて失礼にもほどがありますよ」


「痛ッ!!」


ピコンとおでこを叩かれて、痛みを堪えて睨めば前には不機嫌そうな顔。

でも、あたしに非はないはずだ。

なにせいきなり驚かしたのはレガードの方なんだしね!!


「なんで叩かれないといけないわけ!?いきなり驚かしたレガードが悪いんじゃない!!」


「そうですね。レガードさんはもう少し時と場合を考えて行動していただきませんと……せっかく良い雰囲気でしたのに……お邪魔虫ですね」


「……おや~。いたんですか」


「クスクス……この距離で気がつかないなんて……老眼鏡でもプレゼントいたしましょうか?」


「結構ですよ。嫌味ですから」


「地味な嫌味ですね。年の功があるのですからもう少し頑張っていただけませんか?」


「「………………」」


し、シリウスの背後に大蛇が、レガードの背後に黒豹が見える……!!(汗)


「セリオス、この2人って仲悪いの?」


「火と油だ」


納得しました。


「それでレガード、侵入者の身元は割れたか?」


「今のところ、侵入者の半数以上が魔物ということ以外は分かっていませんね」


「すぐに調べ上げろ」


「了解しました。それから双竜が逃げた者達の後を追っています」


「そうか……危険であれば深追いはするな。この国に侵入したほどの腕前だ。禁術を使用している可能性もある」


「分かりました。そう伝えておきましょう」


「……ねぇ、双竜ってなに?」


聞き覚えが無い。なにそれ、人間?


「二つ名の事ですよ。青竜、アリアス。朱竜、ディオス。2人あわせてエルタインの守護戦士『双竜』と呼ばれているんです」


シリウス丁寧な説明ありがとう。

へ~始めて聞いた。


「ところでなぜあなたがここにいるんですか?」


…………ん?


さっきから疑問に思っていたのだろう。

レガードの言葉にシリウスもあたしにその目を向けた。


……どう説明すれば良いの?


「……いや~ついにアイ様も観念しましたが。これで我が国も安泰ですね~」


「いやいやいや!!待て待て待って!!」


「照れなくても良いですよ。いや~本当に目出度いですね~」


いやぁ~!!このままじゃマジで誤解されるぅぅ!!!!

自分の気持ちがハッキリとまだ分からないうちに結婚になるのは嫌ぁあ!!


「レガード、冗談はその辺で止めろ。アイがこの部屋にいたのはリディの策略だ」


「……なるほど」


必死な想いが伝わったのか、セリオスが苦笑いをしながらレガードを止めてくれた。

ホッと一安心。

でもリディの仕業とだけしか言ってないのにみんな納得してするなんて……リディ、あんた凄すぎよ。


「とにかく今夜は疲れた。シリウス、護衛は頼むぞ」


「はい。お任せください」


「アイ。お前、今夜は俺と一緒に寝ろ」


「・・・・・・・・・・え!!」


にゃんですと!?

い、一緒に寝ろって……もしかして、


「あ、あの、あの、あの!!同じ……ベッドで?」


「フッ……安心しろ。手は、出さない。それに今離れるのは危険だぞ」


「そ、それはそうだけど……」


あたしも、今夜はさすがに1人で寝るのは怖いけどさ。


セリオスが1人、ベッドにもぐるとシーツをめくりあたしに微笑みかける。

いつもとは違う、優しい微笑み。

脳裏にキスされた事が一瞬浮かんだ。

だがその人懐っこい笑顔を見せられ、シリウスが一緒にいるという事を思い出し、大事には至らないだろうと考えおそるおそるキングサイズのベッドにあたしは潜り込む。


心臓が、バクバク波打って―――息が出来ない


「……大丈夫だ」


震える体をギュッと抱きしめられた。

多少の警戒心はあったけど、優しいセリオスの表情にあたしはすっかりと安心しきってしまった。

眠気を誘う暖かさに、逆らえない。


「……セリオス」


「お休み、アイ」


お休み、なさい。



最後に感じたのは額への柔らかな感触だった。








はい。先に間に合ったのはシリウスでした。色々考えたのですがやっぱ戦闘にはレガードむかないなって。レガードは裏での活躍の方があってますから。

ちなみに今まで書くことも無かったので新事実となってしまいましたがレガードとシリウスの仲は悪いです。理由は番外編みたいにして書きたいと思っていますが感の良い方はお気づきになってしまうでしょうね(笑)

新キャラも出てきたのでそろそろキャラクター紹介でも書こうかなって思います。他にも出てきた国の名前も


*誤字のご報告を受けて編集させていただきました。教えてくれた方、本当にありがとうございます。結構調べないで使うこともあるのでここの使い方違うよ~と言われると恥ずかしさより何よりありがたいです。

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