六話
レリアナとライトの仲が深まり、リーグストはそれを讃えて拍手をする。
「見事、自分の内の影と向き合い、理解して受け容れました。これなら闇の精霊と契約出来るでしょう」
「契約……」
レリアナは別の精霊と契約しなければならない。そうするとまたライトに嫉妬させてしまう。そう思ったレリアナは懇願するような瞳でリーグストを見る。
「あのっ!別の子と契約するなら私っ!」
「大丈夫です。ライトを影の妖精から闇の精霊へと昇華させます」
「昇華…?」
「ええ。妖精は好みの属性の魔力を一定量接種すると精霊へと至ります。俺みたいに適性属性に上位属性がなくても長い時間分け与えれば精霊へとなりますが、レリアナ様ならライトに闇属性の魔力を与えば……そうだな、三日位で精霊へとなるでしょう」
「本当ですかっ!?良かったぁ~…」
彼女は安心して胸を撫で下ろした。レリアナ自身、ライト以外の子と契約するつもりはなく、ラインハルトの時は自分の恋心だけで暴走して彼の気持ちを見ていなかった事を反省し、ライトに一対一で向き合いたいと思っていたから。
「では、今からしてみましょうか。やり方は簡単、影魔法の時と同じように魔法にならない魔力を与え続けるんです。今回は闇の魔法を使う意識で行いましょう」
「分かりました」
レリアナは闇魔法を学ぶ事も練習した事も無かった。闇魔法が世に受け容れられないものなのは理解していたから水魔法に注力していたから闇魔法は初級魔法と下級魔法は無詠唱、中級魔法は詠唱しないと使えず、上級魔法はそもそも使えない。
(学ばなくて良かった。そのお陰で簡単に出来る)
レリアナは両手で皿を作り、掌から魔法未満の魔力が放出されてライトは近付いてがっついて食べ始める。もの凄い勢いで食べるとお腹をまん丸とさせるとケプッとゲップをして、フラフラと飛んで彼女の頭の上で仰向けで寝っ転がる。レリアナはそこで魔力の放出を切り、体内循環へと戻した。
「良く出来ました。では、これを今日から三日間続けましょう。お腹が空けばライトから近付いて来ますからその度に魔力を与えて下さい」
「はいっ!!」
それから三日間が経ち、最後の日の夜にレリアナの部屋でシエラとリーグストが結果を見守る為に集まる。リーグストはタイタンに頼んで部屋を明るくさせる。
「それでは御願いします」
「はい…」
レリアナはどのように精霊へと昇華するのか分からない。もしかしたらライトが変わってしまうかも知れない。そんな不安と恐怖で緊張し、掌が汗ばむ。
「いきます!」
レリアナはそう意気込みながら魔力を放出する。ライトはその魔力に惹かれて、近付いて食べるが飲み込む速度が早く、両手を使ってバクバクと食べ始め、今までならお腹いっぱいになってる頃合いの時になってもライトの食べる手は止まらずドンドン食べる。
(やばい…。頭がフラフラしてきた。視界も霞始めた…。そろそろ…)
終わって欲しいと思った時、ライトの食べる手は止まり、レリアナから離れる。食べ終わったと判断して直ぐに魔力を引っ込めた。
「これで…昇華するんですか?」
「…そろそろです。闇に呑まれないよう気を付けて下さい」
「え?それってどう言う…っ!?」
リーグストの言葉に引っ掛かりを憶えて真意を尋ねようとした時、ライトを中心に闇が発生し、タイタンが生み出した光を吸っていく。
「い、いったい何が起こってるの!!?」
闇は光を喰らって徐々に成長していき、窓から差し込む月の光さえ喰らって部屋を闇が呑み込んだ。