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四話

「……ん」


レリアナは魔力が回復し、月が最も高い時間に彼女は目覚め、上半身を起こす。


「何時…私は自室に…」


レリアナは頭を抱え、必死に自分の記憶を探る。


「…あ、そうだ……私は授業中に倒れて…」


思い出した所でぐぅぅぅ~~~っ!と腹の虫が鳴る。


「あれから食べて居なかったから流石にお腹が空きますよね。シエラに申し訳ありませんが彼女を起こして、軽い夜食を作って貰いましょう」


布団を剥いで天蓋付きベッドから下りて立ち上がり、ベッド脇に置いてあるナイトテーブルの上にあるランタンのつまみを動かし、魔力を籠める事で火が灯り、持ち上げようとした時に何か影がランタンの前で通り過ぎる。


「えっ……今のは…」


ランタンを持ち上げて周囲を見渡すが何も見当たらない。


「気のせい…?…いけない。きっと疲労でない物が見えたのね」


キュルルルッ…と再びお腹が鳴る。


「いえ、空腹で変なものを見たのね」


早くお腹に何か入れようとドアノブに手を掛けるとカタンッ!とナイトテーブルの引き出しが落ちる。レリアナは肩を跳ね上げて驚き、バッ!と勢い良く振り返る。


「何が落ちて…」


落ちた方に戻ろうとするとドアノブがガチャガチャガチャガチャッ!と何度も回され、バタンバタンバタンッ!と扉が何度も開け閉めされる。


「なっ!何よこれはっ!!一体何がっ!!」


ランタンで扉を照らすと小さい人型のような何がドアノブを両手で掴んで何度も開け閉めしている。


「あ、貴方は一体何なの!!?」


レリアナはそう問い掛けると人型は振り返るとキシシシシシッ!と子どものように笑う。その背後で空いている扉と戸当りの間から出た指が扉を開き、リーグストが暗闇から現れる。


「どうやら目覚めたと同時に出て来たか」

「先生…。出て来たとはどういう事ですか?」

「この妖精は君の魔力の味を相当気に入り、居なくなる事なくわざわざ君が起こるのを待ってたんだ」

「そう…なのですか」

「ああ。これじゃあ見辛いだろう。タイタン、この部屋を照らしてくれ」


リーグストの言葉と同時に部屋は昼間のように明るくなると影の妖精は驚き、ベッドの下へと隠れる。


「あっ…。隠れちゃった…」


レリアナはそう言うとランタンのつまみを閉め、火を消してナイトテーブルの上へと戻すとベッドの下を覗き込んで影の妖精を探す。


「大丈夫。怖くないわよ。出て来て。貴方が良ければ私と契約しましょう。ほら、だから出て来てくれないかしら?」


そう呼び掛けると影の妖精はわざわざレリアナの前を通ってからベッドの下へと出て来る。彼女は妖精を追って身体を起こすと目の前に影の妖精は居た。明るくなった分、影の妖精の姿はクッキリと確認出来る。


影の妖精の容姿は紫色のトンガリ帽子を被り、村人のような粗末な服、肌は黒寄りの灰色で耳は大きく耳輪が尖っており、背中には二対のトンボみたいな羽根が生えている。


「貴方が影の…妖精。なんか可愛い…」

「レリアナ様。契約を」

「え、はい。で、でも…どうやって…」

「掌を妖精に翳せば勝手にしてくれる」

「分かりました」


レリアナは右手の掌を影の妖精へと差し出す。すると、影の妖精は掌の上へと座って両手を彼女の掌に合わせる。


「始まるぞ」

「はい…」


レリアナは緊張の面持ちで影の妖精を見詰めていると、影の妖精の口が開くと抑揚が付いた高音と低音が混じったような音が聞こえる。その音は何故か胸の奥底…魂にまで響き伝わる。しかし、癒される音ではなく針で突かれるような痛みが襲う。


「体勢を崩すな。もう少しだ」

「は、はい…」


彼女は顔を(しか)めながら痛みに耐え続けていると、音が途切れて痛みも同時に和らぐ。


「xt3&xsv5rfb!」


明確な言葉のような発音が聞こえると影の妖精から魔法を放つ時のような魔力の紐が周囲に発生し、魔力の紐が掌へと吸い込まれて魂へと到達し、彼女の魂から魔力が流れ、掌から魔力の紐が発生すると紐は影の妖精の周囲を回り、魔力の輪となりその大きさを徐々に縮めていき影の妖精を捕らえ、魔力の輪は影の妖精へと吸収された。


「レリアナ様。名付けを」

「な、名付けですか…?え~と……では……ライト」


彼女の名付けに反応してピカッと影の妖精は輝くが一瞬で光は収まり、影の妖精の容姿は多少変わり、紫色のトンガリ帽子は白くなり、黒より灰色の肌は明るい灰色の肌へと変わる。


「凄い。姿が変わった。…これが名付け…」

「にしても、影にライトと名付けるとは中々ミスマッチだな」

「そ、それは……」


レリアナは気まずそうに目を逸らす。


(言えません。未練がましく…ラインハルト様から名前を取ったとは…。ん?未練がましく?いえ…間違っていないのに何故でしょう。この言葉を使うのは何故か違和感を感じるのは…)


レリアナは自分の気持ちがイマイチ掴めず、モヤモヤしたものは腹の虫の鳴き声で掻き消えた。


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