四十八話
レリアナは杖を反対にし、球体の部分を下にしてライトへ視線を向ける。ライトは彼女の意図を組み、闇魔法を放つ。
「させない」
アルマリアが掌をレリアナへと向けて輝く黄金の障壁が生み出されて防ぐが、レリアナの闇魔法の威力が高く障壁を破壊してアルマリアに直撃した。
「キャアアアーーー!!」
闇魔法の一撃を喰らったアルマリアの肌に黒い痣が身体全体に斑模様が浮かび上がる。
「チッ!」
アルマリアは自分の胸に手を当てると黄金の輝きに包まれ、黒い痣が綺麗になくなる。
「くたばれ!!ヴィラン!!」
痣を消し去ると直ぐに攻撃へと切り替えて聖属性の魔法の光線が放たれるが、ライトは直ぐさま反応して闇の壁で防ぐ。しかし、防がれる事を予期していたアルマリアはスカートを捲り上げ、太腿に忍ばせていた短剣を取り出してレリアナへと突っ込む。けれど、レリアナは兵士として模擬戦の経験があり、素人の特攻を往なすなんて赤子の手を捻るより容易。レリアナは杖を巧みに操って短剣を弾き、マリアの腹に杖の柄で突き、そのまま突き飛ばす。
「ガフッ!クッソ…!」
アルマリアは殺意を込めてレリアナを睨んで立ち上がる。
「降伏しなさい。今ならまだ命の保障はして上げる」
「煩い!黙れ!さっさとくたばりなさい!」
アルマリアが怒号を浴びせると彼女の周囲に矢ではなく黄金の槍が何百本と生成されてレリアナへと飛来する。ライトが球体の闇の壁を作り出して周囲前方から迫る槍を防ぐ。アルマリアはその間に玉座の後ろへと後退し、玉座の後ろにある黄金の錫杖を掴むとレリアナに向けて聖属性の魔法光線を放つ。
魔法光線の大きさは今まで見たことがないほどで、その威力は大気を震わせ、鉄の壁さえ飲み込んで消失。鉄の壁を消失させる威力の魔法光線が闇の壁に直撃すると窓ガラスのように破壊し、レリアナへと直撃した。
「ぐっ……!キャアァァァーーー!!カハッ…!」
レリアナはあまりの威力で後ろの壁へと激突すると部屋全体に亀裂が入る。
「ゴーレム!!」
ゴーレムが命令の意味を察し、部屋全体を補強する。
「うっ…!くっ…!」
レリアナは背中の痛みに苦悶の声を上げ、堪えながら起き上がる。そんな彼女の肌からは蒸気のような煙が立ち昇り、痛みで呼吸は荒くなり立ち上がるのさえ辛い。
「レリアナ!」
リーグストはレリアナへ駆け寄ろうとするが魔王が指で音を鳴らすと彼の周りに戦いの中で抜けていた魔王の体毛が浮かび上がり、体毛は鋭い針となってリーグストを妨害し、魔王も詰め寄ってレリアナへと近付けない。
「流石、魔王討伐報酬の聖錫の神杖。威力が桁違いだわ。…いやぁ…楽しい。貴方がこうやって這い蹲っている姿を見るのが。だから、もっと惨めな姿にして上げる!死ね!!」
今一度聖属性の魔法光線をレリアナへと放つ。だが、ライトがレリアナを守ろるため盾になろうと彼女の前へ立つ。
「アハハッ!!闇の精霊が喰らっても盾になれず消滅するわ!!精霊と共に死ねば良いわ!!」
「…っ!?ライ…ト…ッ!!下がって…!!」
アルマリアの言葉にレリアナは反応して避けるよう命令するが、ライトは首を振って拒み、レリアナへと笑みを向けた。その直後に魔法光線が直撃した。
「ライト!!…ぐっ…!!あっ…ぐ…!!」
強力な風にレリアナは襲われ、壁に押し付けられるがせめて顔を庇おうと両腕で風と埃を防ぐ。突風が止むと両腕を開け、ライトへと視線を向ける。
「ライト…」
ライトの身体はまるで内側から光が突き破ってるかの如く光が疎らに放出している。
「チッ…!まだ消えてないか。なら、もう一度喰らわせて完全に消して上げる!!」
アルマリアがもう一度魔法光線をライトに向かって放つ。だが、ライトは盾になる事なくレリアナへと接近し、夜明の聖杖の球体へと飛び込んで吸収された。
「ライト!?」
「やっぱり消えるのは怖いのね!でも、どうせ後で私が消して上げるから無駄なのにね!」
「ぐっ…!レリアナ…!」
無理にでも助けへリーグストが向かおうとするとウンディーネが彼の前へと立ち塞がった。リーグストは邪魔だとウンディーネを睨むがウンディーネの真剣な表情を見ると魔王へと向き直した。
「レリアナ!!ライトを信じろ!!」
レリアナに一言告げると魔王へと斬り掛かる。
「信じろ…。それは大丈夫。いつも…信じてるから…!!」
「何が信じろよ!!早く死んで悪役らしく塵になれ!!」
アルマリアの言葉に呼応して威力が膨れ上がった魔法光線はレリアナへと直撃した。