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四十六話

突入した魔王城の中は真っ暗で、扉が倒れた時の風で埃が舞い、二人は手で鼻と口を抑える。


「タイタン、頼む」


タイタンはリーグストの言葉の意味を察して、魔王城の中を照らす。予想とは違い魔獣の姿はなく、二人は魔王城の中を見回す。


「…取り敢えず、上を目指そう。そして、上から順繰りに城の中を見よう」

「そうね」


二人は目の前の大階段を上り、最上階段まで続く階段を探す。レリアナは魔王城の中を観察し、割れた埃まみれの壺、虫喰いのカーペットとカーテン、所々蜘蛛の巣が張っており、かなりの年月が経過した形跡を告げるものばかりだった。


「どれもこれも草臥(くたび)れている。随分と年期が経ってますね…」

「ああ。もしかしたら急に足場が崩れるかも知れない。慎重に歩こう…。お、階段を見付けた。行こう」

「はい」


足場が崩れないよう慎重に上っていく。上れば上るほどにレリアナの呼吸は荒くなるがリーグストの後を確実に付いて来る。ここ二~三年で各地の戦場を駆け回っていたから彼女の体力はかなり鍛えられ、無事に最上階まで上り着いた


「…休むか?」

「大丈夫です。これでも体力には自信がありますから」

「いや、休もう。これから決戦なのだから」

「…すいません。有難う御座います…」

「ウンディーネ、フワリ。ここら辺の汚れ、洗い流してくれ」


ウンディーネとフワリは水と風で汚れを吹き飛ばして、二人の周囲を綺麗にするとレリアナとリーグストは腰を落ち着かせる。


「……」

「……」


座った二人は緊張からか静かに休むが、レリアナはふとリーグストに聞きたい事が思い浮かんだ。


「…あの…リーグスト。一つ質問を宜しいですか?」

「ん?ああ…」

「リーグストは……なんで私の事を好きになったんですか?」


急にどうしてそんな事を聞くのか分からず、首を傾げるがう~んとリーグストは質問の内容に悩む。


「なんで……か。答えるのは難しいな」

「私は言える。貴方は私なんかにも優しくて、私に優しさを教えてくれて、私の事を教えてくれて、闇属性の事を普通の属性と……私を普通の女の子だって認めてくれた。だから私は好き。…好きだから、何で貴方が私の事を好きなのか教えて欲しいの。…それとも御父様に言われたから私と婚約した……のですか?」

「い、いや!それはない!ちゃんと好きだ!けど…何で好きかと言うと……正直、俺は一目でレリアナに見惚れたから……見た目、かなぁ……?」

「一目惚れ…」


レリアナが俯いてボソッと呟き、それがリーグストには中身を見てないのかという不満の声に聞こえて慌てて訂正する。


「あっ!いやっ!勿論中身も好きだ!使用人やライトにも優しいし、俺を見ると笑顔になって駆け寄って来る所とか、自分の弱さに向き合える強さも好きなんだ!」


必死に弁明するかのように語る姿を見てレリアナは思わず噴き出して笑い出した。


「レ、レリアナ?」

「別に一目惚れだった事、気にしてませんよ。ただ嬉しかっただけなんです」

「嬉しかった…?」

「はい。……ああ、リーグストはずっと私の事を好きでいてくれたんだって。あの片想いだった時も想われていたんだって。嬉しかったの。それに私は自分の中身は好きではないので別に中身を褒めて貰わなくても大丈夫なんです。だって本来の私は嫉妬深くて、我が儘で、傲慢なのですから」

「え?そんなイメージ無いけれど…」

「そうなんですよ。偶々貴方に見せる機会が無かっただけで、本来の私はそうなんです。貴方が褒めてくれた部分は全て貴方がくれたものなんです。貴方が居たから私は優しく、強くなれたんです。…私は貴方が居ればもっと優しく、強くなれるんです。でも…」


そう言葉を切ったレリアナはリーグストへと近付き、そのまま覆い被さって押し倒す。


「貴方が他の女性を見てたら私はきっと嫉妬深い私に戻ってしまいます。だから…」


レリアナはリーグストの首に歯跡が付くまで強く噛み付き、離れて彼の顔を見下ろす。


「浮気したら、食べますよ」


リーグストは恐怖とトキメキでドキドキと脈が速まった。


充分な休憩を終えると最上階の探索に入る。探索とは言うが大きな扉は一つだけ。


「ここに魔王が居る可能性が高い。精霊を呼び出してから入ろう」

「ええ。ライト」

「ウンディーネ、タイタン、フワリ、ゴーレム」


二人は精霊を従えて観音開きの扉を二人で同じタイミングで開ける。


其処には蝙蝠の羽と熊の右腕を持つ灰色の肌の人間が玉座に座っていた。姿形は人間に近いが、只の人間がこんな所に居る筈がない。あれが魔王なのはレリアナとリーグストは即座に理解し、その玉座の影に隠れている誰かが居るのに気付き、隠れていた人物は前へと歩み出る。


「やっと来たぁ…。遅かったわね、レリアナ」

「アルマリア…!」


魔王の背後に居たのは失踪して何処かに消えていた筈のアルマリアだった。


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