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四十二話

国王からの急な要請で王都へと戻る事となり、予期せず一週間の休みを得る事となり、久々に二人は羽を伸ばす事が出来た。


「久々の休暇ほど楽しいものはありませんね」


レリアナは自室のソファに身を委ねて、疲れを抜くように息を吐き出す。


「レリアナ様、はしたないですよ」

「別に良いじゃない。此処にはシエラと私しか居ないのだから。それに約一年間ぶりの休暇。多少はしたなくても目を瞑って」

「…そうですね。失礼しました」

「分かれば宜しい。……それにしても本当、楽しかった。ティエラ達とも久々に御話出来たし、それにリーグスト様とお出掛けが出来たんですから」


フフッ♪と笑みが溢れ、シエラは嬉しいそうなレリアナを見て、微笑みながら紅茶を入れる。シエラはメルディックが王城勤めとなり、現在は宰相の屋敷で日夜宰相候補として勉強に勤しんでいる為、メルディックの卒業後から会う事がなくなった事で二年程前から本格的に復帰する事となり、レリアナのメイド長に任命された。


レリアナはシエラの紅茶を一口飲むとお出掛けで溜まった疲労がホッと和らぐ。


「…明日ですね。陛下への謁見」

「そうね。ビックリしたわ。王都に帰ってみればリーグスト共々陛下に謁見する事になるなんてね…」

「一体何用なんでしょうね?」

「実績を賞し報償を与えるという事ですから…。でも、魔王軍との戦いのタイミングで報償の話。正直嫌な予感がするわ…」


そして、レリアナの予感は的中する事となった。


陛下謁見の日。レリアナとリーグストは貴族達の好奇の視線に晒されながら、陛下の前で跪いていた。


「面を上げよ」

「「はっ!!」」


国王オリエント・アリスロイヤ。銀髪をオールバックに上げ、その頭に王冠を被る美丈夫。曇なき黄金の瞳に見られ、全てを見抜かれる感覚に二人は息を呑んだ。レリアナはラインハルトとの婚約の時、リーグストはS級冒険者になった時、互いに一度だけ会っただけだが、国一つ背負う男が発する重圧に慣れる気がしなかった。


「レリアナ・サレスティア……其方は戦地に於いて傷付いた兵士を治す事で戦争に於いて多大なる功績を残した功績を讃え、金貨五万枚と聖女の称号を与える」

「慎んでお受けします」


レリアナは恭しく陛下の言葉を受け取ったが、聖女という称号に疑問を覚えた。


「S級冒険者リーグスト……其方はジャバウォックを討伐し、戦地に於いて多くの魔獣を殲滅し、更に傷付いた兵士を癒した。その功績を讃え、金貨十万枚と勇者の称号を与える」

「慎んでお受けします」


陛下は二人の返事を聞き、左斜め後ろに控えている宰相を見やると頷く。


「聖女に夜明(よあけ)聖杖(せいじょう)を、勇者に救世(きゅうせい)(つるぎ)を」


宰相が告げると屈強な騎士が一つの木箱に対し、二人が慎重に運び、一つずつレリアナとリーグストの前へと置き、丁寧にゆっくりと蓋を開くが赤い布でまだ中身が見えない。更に一枚一枚折り重なった赤い布を開くと中身がようやく(つまび)らかになる。


レリアナの木箱の中身は杖。支柱の部分は何百年何千年何万年という時を陽によって刻まれて日焼けで漆黒となった樹木から切り取った黒色の枝をそのまま利用したのが見て取れる。頭の飾りの部分は綺麗な真っ黒な球体。しかし、真っ黒な球体な筈なのに光を吸収すると夜空に輝く星々みたく煌めく。


一方、リーグストの木箱の中身は長剣。柄の部分は黄金色ではあるが飾り気はなく、蜷局が巻いたようなデザイン。重要な刀身だが樋の部分は鈍く輝く銀色、刃は深海を思わせるような深い蒼色。刃の鋭さは光を滑らかに照らす美しさで容易に想像出来た。


「聖女に、勇者にその武器を贈呈する。そして、君達には聖女と勇者、君達に願いたい」


国王は椅子から立ち上がり、一つ二つ三つと段差を下りると皆と同じ床に立ち、二人を前にして頭を下げた。


「この世界の住人の一人として君達に御願いする。魔王からこの世界を救ってくれ」


レリアナはああ…やっぱりと想像していた通り予感が的中したが、そこに嬉しさはなく、ただ頑張らなければならいとリーグストと共に深々と頭を下げて、魔王討伐を了承した。


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