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四十話

リーグストがやって来ると三人はグエインの執務室へと訪れる。


「来たか。リーグスト殿も御足労頂き、感謝申し上げる」


グエインは椅子から立ち上がり、リーグストに頭を下げる。


「いえ、レリアナ様に会える機会を頂けておりますから文句なんてありませんよ」

「リーグスト様…」


レリアナは蕩けるような表情でリーグストを見詰め、グエインは二人の様子を見て、ふむ…と頷く。


「仲睦まじいようで何よりだ。…さて、リーグスト殿を何時までも引き留める訳には行かない。さっさと用件を話そう。メルディック」

「はい」


グエインは机を見ずに置いてある封筒を手に取り、メルディックへと差し出す。それを受け取って封筒から数枚の書類を取り出し、その書類を見たメルディックの表情は驚愕の色へと変わる。


「お前は卒業後、宰相の元で宰相教育を受けて貰う」

「わ、私がですか!?」

「ああ。勿論他に宰相候補は居る。能力と信頼がなければ宰相とはなれないがな」

「な、何故私にそのような話が…」


宰相教育は優秀な人材にしか声が掛からない。宰相教育を受けられる宰相候補は五人と決まっている狭き門。メルディックにとって非現実的で夢のようだった。


「エリレントが宰相候補から外され、一枠空いた状態になった。そこで誰が相応しいかという話になった時、王太子の間違いを正そうと決闘まで行う姿勢と生徒会長や学園での成績を加味してお前が相応しいと陛下や宰相閣下が判断されたようだ。だから、私なんかという言葉は絶対に使うなよ。それは陛下や宰相閣下の判断を否定する言葉だ」

「はい…!」


陛下という単語にメルディックは息が詰まる感覚となり、身も心も引き締まる。


「勿論この好機を逃す気は毛頭ない。お前には宰相の元で宰相教育を受けて貰う。そして、必ず宰相の座を勝ち取れ」

「はい!」


メルディックの威勢の良い返事にグエインは鷹揚に頷き、視線をリーグストとレリアナへと移動させる。


「そして、リーグスト殿とレリアナを呼んだ訳はここからだ。…メルディックはこれから宰相教育を受ける。そうなると私の後継が居なくなる。そこでレリアナには私の後を継いで貰う事にした」

「えっ!?私がですか!?」


レリアナが驚いた言葉の裏には「女の私が後継となっても良いのか?」という意味。王国には女性の領主が数少ないけれど確かに居る。けれど、それは代々女性が領主の家系。異なる性別の者が継いだ記録はない。だからこそ信じらなかった。だが、グエインはあっさりと首を縦に振る。


「ああ。この事は既に陛下から許しを貰っている。レリアナ!」

「は、はい!」


語気強く名を呼ばれてレリアナは反射で背筋が伸びる。


「今日からお前が次期当主だ。その称号に相応しい振る舞いを忘れるな」

「はい!」


心地の良い返事にグエインは満足げに頷き、身体の向きをリーグストへと定める。


「それで、リーグスト殿」

「はい」

「レリアナは卒業後に魔王との戦いの為、各戦地へと向かうだろう。その時には夫として守ってやって欲しい。我が娘の事、宜しく頼む」


グエインは深々とリーグストへと頭を下げた。


「勿論。守り抜きますよ。レリアナ様もこの家も」


リーグストはグエインへと手を差し伸べ、グエインは体勢を戻し、力強く握り返した。


「期待している」


それから三年後、レリアナは学園から卒業し、次期当主として魔王軍との戦地へと赴いていた。


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