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三話

衝撃的な光景を目の当たりにしたレリアナとメイドは目を何度も瞬かせ、それと聞き捨てならない言葉を聞き、レリアナは手を挙げる。


「えっと…リーグスト、先生。質問宜しいでしょうか?」

「はい。何でしょうか?」

「先生は今…精霊と仰られてましたよね。それって神話や物語に現れるあの…」

「その通りですよ」

「そ、そんなあっさり…」


レリアナは頰を引き攣らせ、呆れたような表情を見せる。


「というか、妖精や精霊は常に其処に居るんですよ。人間が見えていないだけで。言ったでしょ。今の人間が使ってる魔法は呪言で妖精の力を無理矢理使用してるに過ぎない。妖精は縛られるのが嫌いだから、呪言で強制的に魔法を放とうとすると妖精は抵抗し、抵抗によって妖精の力は削がれて威力が激減する」

「つまり…あれが本来の【水砲(ウォーターボール)】の威力って事ですか?」

「いや、あれは精霊が放ったからあの威力なだけだ。本来はレリアナ様が発動した魔法より大きさも速度も威力も倍だ」

「それでも倍ですか…」


レリアナは畏れで喉と唇を震わせる。


「では、部屋へと戻りましょう。部屋へと戻ったら貴方にも妖精と契約して貰いますからね」


リーグストはそう言うとウンディーネと共に颯爽と別荘の中へと戻り、彼女達も彼の後を続いて教室へと戻った。


「それで、妖精と契約はどうすれば良いのですか?」

「早まらずにキチンと教えますので。でも、先ずはこれを教えて頂けないと話は進みません。レリアナ様、貴方の適性属性は何ですか?」

「適、性…属……性…」


レリアナは急に顔色が悪くなり、言葉を詰まらせながら復唱する。


「はい。適性属性を教えて頂かないと授業は進みません。ですので教えて頂けないかと」

「……」


彼女は俯いて黙り込み、その表情には影が差し込んできた。メイドはレリアナの内心を理解してリーグストの前へと出て頭を下げる。


「リーグスト様。お嬢様の適性属性をお教え出来ません。ですので授業内容を変更して頂けないでしょうか」

「…!?」


メイドの言葉にレリアナは顔を上げる。


「お願いします…」

「シエラ………貴方…」


メイドが頭を下げてる姿を見て、レリアナは適性属性を言う覚悟を決める。


「シエラ。大丈夫ですよ。下がって下さい」

「お嬢様…」


メイドは頭を上げ、振り返ってレリアナの顔を見て、これ以上何かを言うのは野暮だと理解して素直にレリアナの後ろへと控えた。


「私の適性属性は…水と……闇…です」

「へぇ、上位属性の闇ですか。珍しいですね。まぁ、良いでしょう。する事は変わりませんし、今日は闇の下位属性の影の妖精を契約しますか」

「……な、なんでそんなあっさりされてるのですか!闇属性なんですよ!!忌むべき属性なのですよ!!」

「そんな古臭い事言いませんよ。闇も他の属性も対して変わりませんって」


あまりにもあっけらかんとした返答にポカンと口を開き、頰に水が下へと這いながら落ちるのを感じる。


(あれ、もしかして私…泣いてる?こんな事で?ただ単に闇属性を普通の属性と認められた程度で…)


ブワッと涙の量が更に増える。


「何で…涙が出るの…」


シエラから受け取ったハンカチで何度も拭うがそれでも涙は止まらなかった。


「…失礼致しました。授業を長らく止めてしまって…」

「いえ、お気になさらないで下さい。闇であればどのような扱いをされてきたのは想像に難くありません。ですが、闇属性は炎や氷という他の上位属性と何ら違いはありませんよ」

「ありがとう……御座います…」


レリアナは再び湧き上がりそうになる涙を言葉が詰まりながらも必死に堪えた。


「それでは影の妖精との契約を結びましょうか」

「それは構いませんが、どうすれば宜しいのですか」

「方法は簡単ですよ。先ずは魔法を放つ時みたいに魔力を掌から発生させる。その状態をキープすれば良い。今回の場合は影属性の魔法を呪言を発動させるイメージで行えば影属性の妖精は魔力を捕食する為に現れます。そこで味を気に入って貰えば妖精側から契約してくれます」

「分かりました」


レリアナは言葉通りに影魔法を放つ意識、影魔法は中位属性までは魔法名を唱えなくても発動出来る為、発動させないよう上位魔法を心の中で唱え、身体の中から魔力が巡り、魔法にならない魔力が掌から放出させる。


「その状態を保って下さい」

「はい」


言葉で返すのは簡単だが魔力を放出し続けるのはかなり難しく、彼女の額からじんわりと汗が滲み出し、息が上がる。気が付けば汗で服が肌に張り付き、目の前がぼやけ始める。


(これ…信じられないくらい疲弊する。そろそろ限界かも…)


汗が瞼から睫毛へと伝い、視界の中が水玉でモザイクが掛かり、その時に薄紫色に発光する何かが見えて、パチリと瞼を動かすと汗は下へと落ち、その発光する何かを見ようとしたが居なかった。


「あれ…?気のせい?今、何か光ったのが…」

「それは妖精ですね。…見えたのであれば十分今日は合格点ですね。今日はもうこれで終わりにしましょう。魔力の流れをコントロールし、放出を中断して下さい」

「えっ…?そんなの……したことありませんよ…」

「何を言ってるんですか。いつも魔法を放つ時にしてるようにすれば良いんです。魔法を放つ時だって魔力を垂れ流しにしてる訳ではないでしょう」

「そう…言われても………意識した事が、ない…から……」


と、最後まで言葉を続ける事なくレリアナはガタンと机に突っ伏して倒れた。


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