三十四話
「私が勝ったらこの国から出て行って貰うぞ!」
衝撃な台詞でレリアナは息が詰まる。ティエラ達も反応さえ出来ずに唇さえ動かせなかった。メルディックも息を呑むが、その意味を追求する。
「殿下!!?それがどういう意味か分かってらっしゃるのですか!!?国外追放ですよ!!?」
「無論分かっている。だが、これは立派な殺人未遂だ。許す訳にはいかない」
「それが冤罪だとしてもですか!!?」
「冤罪である筈がない。彼女は魔女なのだから」
「っ!?」
聞き覚えのある言葉、それはよく自分がレリアナに対して使っていた言葉だった。
(魔女である。これだけで疑われるのか。いや、信用が出来ないのか。レリアナは…いつもこの言葉に晒され、疑惑と訝しげな目で見られていたのか。…今更気付くとは………本当に最低だな…私は…)
メルディックはレリアナの横からラインハルトの手袋を拾う。
「決闘は私が受ける。構いませんね殿下」
「残念ですメルディック。貴方と戦う事になるなんて」
「私もです」
メルディックとラインハルトが睨みあっているとパサッパサッ、パサッと前から二つ、後ろから一つとメルディックに手袋が投げられる。
「皆もか…」
「ああ。負けられないからな」
「僕も大事な人が傷付けれて許せないから」
「私も同じ気持ちです。彼女の為に私は戦います」
「だったら俺も参戦して良いよな」
レリアナは愛しい者の声が聞こえ、ピクッと反応して周囲を見回すが居らず、首を傾けると目の前に水の人型が現れ、その人型はリーグストの姿となった。
「リーグスト様!!」
ラインハルトが唇に指を当ててリーグストの名前から最近話題となった者を思い出す。
「リーグストって…最近若くしてS級冒険者となったという…あの…」
ロギアはS級冒険者という称号に臆する事なく、一歩前へと出てリーグストにガンを飛ばす。
「だが、幾らS級冒険者でもよ、決闘に出しゃばるのは違うんじゃないか?」
「彼女の婚約者だ。俺にも決闘を請け負う資格は充分ある筈だ」
「「「「なっ!!?」」」」
まさか彼女に新たに婚約者が出来るとは思っていなかった四人は彼の婚約者発言に驚愕する。
「…レリアナと婚約したという噂は聞いてはいたけど…真実だったなんて…!」
エリレントは心底信じられないと呆れを含んだ息を吐いた。彼にとってレリアナは魔女であり悪女、そんな女に肩入れするリーグストが哀れだった。
「リーグスト殿だよね。貴方はあんな女の婚約者になるのは馬鹿げています。人生を棒に振るのと同意味ですよ」
「俺はメルディック様と共に決闘を受ける。四対二。纏めて掛かって来い」
リーグストはエリレントの言葉は無視し、言いたい事を全て伝えるとリーグストの形は崩れ、人型の水となると空間へと還元されて水滴さえなく綺麗サッパリと消えた。