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三十三話

リーグストと婚約した事でレリアナは学園内では常に注目を浴び、気が休まる事はなく移動教室でティエラ達と三人と一緒に歩く事が学園での唯一の癒しだった。


「やっぱり授業の後は妙に身体が硬くなりますねぇ~」


ミアリはう~ん!と腕を上へと伸ばして肩の筋肉を解す。


「ミアリ。はしたないわよ。それに胸部を強調するようなポーズは止めなさい」

「我が胸は代々我が家の自慢です!御母様も御父様も御姉様も御兄様も皆見事に発達してますよ!」

「男性も胸が大きくなられるのですねぇ~」

「いえ、レリアナ…多分貴方が考えてるのと違うと思いますよ」


皆が楽しくお喋りを続けていると目の前からアルマリアが一人でやって来るとレリアナは立ち止まる。アルマリアはレリアナを気にしながらビクビクとした態度で階段を下りる。その瞬間、滑り止めのゴムが緩んでいたのかズレて階段へと落ちようとする。


「危ない!!」


レリアナは反射で彼女の事を助けようと駆け出し、階段の手摺りを右手で掴んで身体を固定化させ、一段右足二段左足と距離を伸ばし、アルマリアの手を掴もうとするが空を切り、掴む事が出来ずにアルマリアは落ちる。そして、アルマリアが踊り場に背中を叩き付けるその瞬間、ラインハルトがアルマリアをキャッチする。


「無事か!!アルマリア!!」

「は、はい…。今…何が…?気付いたら落ちていて…」

「いや、原因は分かってる」


ラインハルトはスッ…と顔を上げて、仇を見るような敵意剥き出しの視線でレリアナを睨み付ける。


「お前の仕業だな!レリアナ!お前がアルマリアを落としたのだな!!」

「ち、違います!」

「だったらお前の伸ばした手はなんだ!」

「これは助けようとして…」

「信じられるかっ!!お前の言う事なんぞ!!」


ラインハルトに怒鳴りつけられる度、心臓が軋んで痛く、左手で左胸を抑える。


「やっぱり本性を表したか」

「マリアを傷付けるなんて許せないよ」


ラインハルトの背後からロギアとエリレントが責めるような視線をレリアナへと向けられて、思わず身体が後ろへと下がるとポンッと両肩に手が載せられたのに気付き、顔を後ろへと向けるとそこには微笑みを携えた学園長の息子で学園の教師でもあるリリーヴ=エルフィードが居た。


「君が…やったのかい?」

「違います!」

「君がやったんだろう」

「違います!!」

「正直に話なさい。君がやったんだろう」


穏やかな笑みを浮かべているが、その目はお前が犯人だろと雄弁に語っていた。


「いい加減にして下さい!!レリアナは彼女を助けようとしました!!」

「貴方達はレリアナと親しい。そんな者達の言葉は信用出来ない」

「なっ!!?」


ラインハルトの聞こうともしない態度にティエラは思わず絶句する。けれど、それだけでは諦めない。


「証拠!証拠はあるのですが!レリアナが落としたという証拠は!!貴方達が見たのは手を伸ばしたレリアナと落ちるアルマリアのみ!!証拠もないのに責めるのは筋違いです!!」

「確かにない。だが…レリアナが助けようとした証拠もないだろ?」


リリーヴは優しい口調で放たれる言葉は完全にレリアナを信頼していない、突き放した言葉だった。


「いや、証拠ならある」

「っ!?御兄様!?」


メルディックが上の階から下りる来て、リリーヴを視線だけで退かす。


「証拠とはなんだ?メルディック」

「殿下。レリアナの右手を見て下さい。レリアナは手摺りを掴んでいる。それに足も前のめり一歩二歩と足が出ている。もし、突き飛ばしたのだとしたらこの態勢は不自然です。普通は階段の手前から両腕を突き出す筈です。それに…階段の滑り止め部分を見て下さい。明らかにズレています。これはレリアナがマリアを助けようとしたのは火を見るより明らかですよ」

「御兄様…」

「メルディック…」


レリアナは兄が自分を庇ってくれた事が心の底から嬉しかった。ちゃんとメルディックは自分の事を魔女ではなくレリアナとして見てくれている事を。しかし、ラインハルト達からは違った。


「貴様。その女に毒されたな」

「なっ!?」


メルディックはラインハルトの思わぬ台詞に言葉を失う。


「あんたにはガッカリですぜ。メルディックパイセン」

「見損ないました。会長さん」

「残念ですよメルディック。貴方の瞳は曇ってしまった…」


メルディックには目の前の奴等が何を言ってるのか分からなかった。冷静になればレリアナが白なのは明白。…それすなわち彼等が冷静でない事を意味していた。


(前までの私と同じ。恋心によって暴走し、正常な判断が出来ていないのだ。…私は…こうだったのか…。こう見ると哀れに思えるな)


ラインハルトは自身の手袋を剥ぎ、レリアナへと投げ付ける。


「決闘だ。レリアナ」

「え……?」

「私が勝ったらこの国から出て行って貰うぞ!」


ラインハルトが出た国外追放の言葉、これが破滅の口火を切る事となった。


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