二十五話
レリアナの周囲は緩やかに、だが劇的に変わっていった。学園内の評価もうなぎ上り、屋敷へと帰っても前のようなピリッとした空気はなく、雰囲気は和やかなものとなり使用人達ものびのびと仕事が熟せるようになった。そして、それはレリアナ自身にも影響を与え、彼女の雰囲気も柔らかく暖かいものへと変わり、自然と周囲に人が集まるようになった。
逆に王子達の周りには人が避けるようになった。その理由は王子とアルマリアが恋仲で邪魔なレリアナを冤罪に掛け、婚約破棄を目論んだのではないかという噂が流れ始めたからだ。それもアルマリアの周囲に位の高い男性が集まっている事から彼女は彼等を誑かし、国を揺るがす魔女なのではという噂も流れ、結果的に王子達にも不審な目が向けられる事となった。メルディックを除いて。
メルディックはシエラとレリアナとの一件以降、アルマリアと距離を置くようになったからだ。メルディックはあの日からアルマリアに対する熱が冷えてしまい、冷静となって彼女一人を想った所で選ばれるのは一人。それに自身にも婚約者が居る事を思い出したからだ。
メルディックは屋敷へと戻るとベッドに身を投げて倒れ、仰向けになって大きな溜め息を吐く。
(私は最低だな。学園にはもう居ないとはいえ婚約者の事を忘れていたなんてな…。しかも思い出したとてマリアに対する恋心という火は小さくはなっても消えはしなかった。そもそも何故私は彼女の事を焦がれるようになったのか…?)
メルディックはアルマリアと出会った日の事から彼女と関わった全ての時の事を思い出すが、思い当たる日は無かった。
(明確にこの日、というのは無かった。人に頼る事が出来ず全て一人で熟そうとする私に彼女は私を頼って下さいと言われて生徒会の仕事を手伝って貰い………気付けば好きになっていた。恐らく私は疲れていた。だから癒しを求めて彼女に惹かれたのだろう。もしマリアが私の事を選んだなら私はきっと喜び、彼女の手を取って私もマリアの事を選ぶ。婚約者には申し訳ないと思うが…。だから私は彼女が国母に成れるよう尽力しよう。ラインハルト殿下と結ばれるように)
メルディックは自身の恋心を胸の奥へとしまい。ラインハルトとアルマリアの二人の仲を応援する事を決めた。
「…とはいえ、直ぐさま捨てられるものではないな。庭を見て回って気分を晴らそう」
ベッドから起き上がり、自室へと出て大階段へと向かうと二階の廊下から一階に居るレリアナとリーグストの姿が見えた。
「ん?二人共…何の話をしているんだ?」
聞き耳を立てるのは下品であるのは分かっているが、庭へと行くには大階段を下りないと向かう事が出来ない。
(仕方ない。二人が移動するまで部屋で待とう。私が居ては二人も気をつかうしな)
メルディックが自室へと戻ろうした時、耳を疑う発言をレリアナが大声で放った。
「リーグスト様!!良ければ私と婚約して頂けませんか!!?」
メルディックは思わず立ち止まり、一拍置いて振り返るとリーグストと同時に驚愕の声を上げた。