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二十一話

放課後となり屋敷へと戻るとレリアナはようやく心から安心した気分になる。


「でも…疲れてヘトヘト…。部屋で休みたい…」


扉を自身の手で開くとツカツカッ!と足早に力強い足音が近付いて来るのに気付き、ドアハンドルに向けていた視線を上げると憤怒の表情で向かって来るのを見て、うんざりした顔で溜め息を吐いた。


「レリアナ!!」

「御兄様、早くにお帰りになられていたんですね。私は宿題がありますので。それでは」


レリアナはメルディックの隣を素通りすると彼に手首を取られ、レリアナは振り返って冷たい視線をメルディックに向ける。


「幾ら兄妹とはいえみだりに女性の身体を触るのは感心しませんよ」

「お前!!またアルマリアをイジメただろう!!?」


内心でやっぱりと実の兄に対して呆れた。


「してません。周りの方々も証言して下さりました」

「信じられるか!!どうせお前が裏で手回ししていたに違いない!!」

「…御兄様…貴方もアルマリアさんの良くない影響を受けたのですね」

「彼女を愚弄するな!!」


アルマリアを愚弄され、メルディックは顔を赤くし、額から血管が浮き出る程に激怒した。


「彼女はお前とは違う本物の聖女で人格者だ!!常に人の心に寄り添い!!他者を気遣える素敵な女性だ!!そんな彼女だから私達の心を救って下さったのだ!!彼女を侮辱する事は絶対に許さないぞ!!」

「痛っ!」


メルディックはレリアナの手首を握る力が怒りで無意識に強まる。


「離して下さい!!」

「離すものか!!お前が彼女に謝ると言うまでっ!!」


レリアナはメルディックの手を除けようと振るうが逆に力は強まり、痛みに抵抗しようと突き飛ばそうとするがビクともしない。


「止めてって言ってるでしょ!!」


レリアナの強い口調に呼応してメルディックの掴む手が水で覆われて、ヌルッと捕縛状態から脱出すると直ぐに強力な突風がメルディックを大階段の踊り場の壁へと激突させる。


「カハッ…!」

「今のは…ライト…?」


ライトがレリアナの言葉に応え、メルディックから魔法で助けた。しかし、結果的に火に油を注ぐ事となった。


「何が…起こったのか……分からなかったが……今のは水と風の魔法だな。…私も今まで我慢してきたが……お前が先に使ったなら容赦はしない!!」


メルディックは怨敵の如くレリアナを睨み付け、鋭い殺気と共に掌を向ける。


「喰らえ!!【雷電(ライトニングボルト)】!!」


彼の掌から雷撃が迸り、レリアナへと目掛けて空間を裂きながら走る。


「お嬢様!!」

「「シエラッ!!」」


シエラはレリアナの危機に反応し、彼女の盾になろうとする。メルディックは放った魔法をどうにかして消そうとするが既に放たれた魔法の操作権は彼にはない。雷撃はシエラへと高速で迫り、全員が起きる悲劇を想像し、目を瞑った。だが、何時まで経っても痛みは来ず、悲鳴も聞こえない。聞こえたのは誰よりも頼りになる人物の声だった。


「全く、あんな魔法は人に向けるものじゃないだろ。次期当主様」


レリアナが瞼を開くと目の前には無傷のシエラと、彼女の前へと立ち塞がって盾となり、メルディックの魔法を防いだリーグストが居た。


「ありがとう…ございます…リーグスト様。シエラを守って下さって…」


レリアナは彼の名を呼びながらポロポロと涙が溢れ落ちる。リーグストは彼女の涙を横目で見て、怒りが湧いてくるがそれでは目の前の彼と同じだと抑える。


「次期当主様。ここら辺でもう良いだろ?矛を納めましょう」

「……分かりました。リーグスト殿の顔に免じてこれ以上は止めておきます」


そういうメルディックの顔は大変不満げな表情ではあるが大人しく下がり、彼は自室へと戻るのを見届けると後ろから荒い呼吸音が聞こえ、何事かと振り返ると同時にシエラが体勢を崩して倒れそうになり、リーグストは慌てて彼女の身体を支える。


「大丈夫ですか!?」


リーグストがシエラに尋ねるが反応がない。彼女は恐怖心から過呼吸で気を失ってしまった。


「皆!!直ぐにお医者様をお呼びして!!早く!!アストン!!シエラを彼女の寝室へと運んで上げて!!」

「はい!!」


レリアナがシエラを助けようと侍従達に直ぐさま命令を下した。気絶したシエラは命に別状はなかったが、メルディックに対して恐怖心を憶えしまい、彼の事がトラウマになった事でまともにメイドとしての仕事が出来なくなってしまった。


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