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一話

白波の音、木漏れ日から差す日の光、鳥の囀りという景色が窓の外に広がり、窓辺に居る女性は自然の美しさを体感し、その表情は晴れやか………なものではなく暗い表情で溜め息を吐いた。


レリアナ=サレスティア。彼女はサレスティア公爵家の令嬢で168センチと高身長で凹凸(おうとつ)が激しいボディで絶世の美女と誰もが口にするだろうという美貌。腰にまで伸びるウェーブした紫色の長い髪と紅玉みたいな赤い瞳をしている。その彼女が憂鬱げに表情を浮かべるさまは絵画のように美しいものであった。


「ラインハルト様…」


レリアナは自身の婚約者であった男の名を呼ぶ。ラインハルトはアリスロイア王国の第一王子で王太子になる事がほぼ確実と言われるほど優秀な人物であり、彼女は幼少期から王妃に相応しい教育を受けてきた。それを突如現れた女に奪われて、内心はその女への嫉妬心が憎悪へと変換される。


「アルマリアとか言う女っ…このままで済むとは思わない事ね…」


レリアナは掌が白くなるほど強く握る。どうアルマリアを懲らしめてやろうかと考えている所でコンコンコンとノックがされる。


『お嬢様。御当主様がお呼びです』

「今行きます!」


レリアナはメイドを従い、自分の父親である公爵の執務室へと尋ねる。


「レリアナ。只今参りました」

『入りなさい』


低く鋭い声が扉越しから聞こえて入室する。


「失礼します」


彼女は父親に頭を下げ、父親の前へと移動する際に彼の背後に誰かが居るのを横目で確認したが、目線は父親へと戻る。


レリアナの父親、グエイン=サレスティアと言い、非常に厳格な性格で文官としてもやっていける程の知能と知識があり、英雄と呼ばれる程の武勲を立てて伯爵から公爵となった傑物。その為、細身ではあるが服の上からも筋肉が布地を押し上げて目立っている。レリアナと同じく美しい紫髪をコームオーバーヘアでセットしており、歳はとって居るが今も整った顔立ちをしている。美人の真顔は怖いと言うが、彼の真顔で見られると娘のレリアナでさえ背筋が伸び、緊張感で心臓が縮み込むような思いになる。


メイドは公爵へと頭を下げて、外から扉が閉まった音を合図に公爵は口を開く。


「レリアナ。今回お前が婚約破棄された事だが、これがどれほど貴族として痛手か分かるか」

「はい。重々承知しております」

「そこで、だ。お前の婚約破棄の騒動を上書きする為に魔法の成績を上げ、学年一を目指して貰う。そうすれば今貰い手が無い状況をひっくり返えせるだろう。何処も優秀な妻は欲しがるからな」

「魔法の成績を…。つまり、後ろに居る彼が私の家庭教師という訳ですか」

「ああ。この別荘であれば魔法の訓練にうってつけであろう。この夏休み期間を有効的に使え」

「はい。分かりました」

「授業は明日からだ。一応挨拶をして貰う。君…前へ」

「はい」


公爵の後ろに控えていた男性が一歩前へと出る。その容姿は貴族の馬の毛並みのように美しい濃い茶色のストレートショートヘアで身長は大体180前後、派手さはないがイケメンの部類ではあるが、レリアナはラインハルトと見比べて華がないと内心で評価する。


「俺はリーグストと申します。現役の冒険者として活動しております。貴族ではない故、授業中の多少の無礼はお許し願いたい」

「冒険者…」


冒険者に大した授業が出来るのか?というのと、そもそもまともに教えられるのか不安でレリアナは顔を顰める。


「お前が言いたい事は分かる。だが、安心しろ。現状リーグスト殿を超える魔法使いは居らんだろう」


レリアナは驚いて目をカッと見開いた。彼を凄腕の魔法使いと評価したのもそうだが、何より公爵という立場で滅多な事がなければ自分の家族でも上から目線を崩さない父親がリーグスト殿と一介の冒険者に対して敬意を持って呼んだ事に大変驚いた


「…私はレリアナ=サレスティアと申します。明日からではありますが、魔法についてご教授して頂く事、感謝致します。明日から宜しくお願い致します」


彼女はスカートをつまみ上げながら頭を下げる。


「此方こそ宜しく御願いします」 


リーグストは続けて頭を下げた。


「挨拶は済んだな。レリアナはもう下がれ、私はこれからリーグスト殿と報償について話し合う」

「はい。失礼しました」


レリアナは父親に頭を下げ、執務室から退室した。


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