十六話
「レリアナ様!あの魔法の威力!一体全体どのような修練をすれば可能なのですか!私も同じ修練をすれば出来ますか!?」
レリアナが教室の中へと入るといきなり同じクラスの女子生徒に詰め寄られた。
「え~と…。す、すみません。私が教わった魔法は人から教わったものなので…その方から許可を頂かないとお教え出来ません」
「…そうなのですか。それは仕方ありません。通行の邪魔をしてしまい申し訳ありません」
「いえ、もし御許可を頂ければお教えしますよ」
「本当ですか!?」
「はい。でも、あまり期待しないで下さいね?あの方にとっても大事な事でしょうから」
「結構です!ありがとうございます!」
彼女は頭をバッ!と下げるとタタタッと早足で自分の席へと座った。
(今まで彼女と話した事はありませんでしたが、お聞きになられるほど驚愕されたのでしょうか?なら、御父様の思惑は嵌まったとみて良さそうです)
レリアナ達三人も並んで席へと着くとレリアナは鞄から本を取り出してティエラへと返す。
「ありがとうティエラさん。この本、とても面白かったわ」
「それは良かったです!あと、この本は返さなくても結構ですよ。元々レリアナ様に上げる為買ったのですから」
「でも…」
逡巡した様子で本を持つレリアナの手をティエラは押し返す。
「貰って下さい」
「…分かったわ。本当にありがとうティエラさん。素晴らしい書物と出会わせて頂いて。もし宜しければ今度のお休み三人で本屋へと行きませんか?あ…お二人の御父様が許しませんか……」
レリアナは自分の外聞のせいで二人の父親から避けるよう言い付けられてるのをそこで思い出し、シュン…と肩を落として落ち込む。
「いえ!大丈夫です!今の御父様ならお許し下さると思います!!」
「はい!レリアナ様の噂は既に耳聡い貴族なら知ってますから御父様から仲良くしてこいと御墨付きですわ!!」
「そ、そう…。なら、良かったわ」
レリアナは二人の勢いに押されるも二人と堂々とお出掛け出来る事を喜んだ。
この日から授業は再開し、帰りはお昼過ぎとなり、馬車に揺られながらレリアナはリーグストの事を考えた。
(昨日はお昼前に来られてましたから流石にこの時間には来られないでしょうか…?いえ、そもそも依頼して直ぐですしまだ来られない可能性が高いです。それに一様シエラには呼び止めるよう言いましたが……A級冒険者を長い時間呼び止めるなんて失礼ですよね。一番良いのは昨日のように偶然出会う事ですが……難しいですよね…)
ふぅ…と溜め息を吐くと昨日のシエラの言葉を思い出して、顔から火が出る。
(ち、違いますからね!!これは決して恋心とかではないですから!!…って誰に言い訳をしてるんですか…)
一人で勝手に盛り上がっていた自分に呆れ、平常心を取り戻す為に車窓から見える外をボンヤリと眺めた。
「アストン、どうもありがとう」
馬車から降りると振り返って馭者をしてくれた執事に御礼の言葉を伝える。
「褒めに預かり光栄です」
執事は頭を下げるとパシンと手綱を振るい、馬車を動かした。レリアナはその姿を見送ってから屋敷の方へと向き、扉へと近付くと開いてリーグストが現れ、さっきの今で驚いて瞼を大きく開く。
「レリアナ様、どうも」
「リ、リーグスト様…!ご機嫌よう…。今日もいらっしゃったのですね?」
「ええ。まぁ、今日は別件ですがね」
「あ…あの…こ、この後……その~…」
レリアナは次の言葉が音にして出す事が中々出来ず、心臓の鼓動が早まって心音がドクドクドクッと煩く、頰が熱くなる。
(なんで…!この後御時間ありますかって言うだけなのに!!何で言葉に出ないの!!?くぅぅぅーー!!それもこれもシエラのせいよ!!シエラが変な事言ったから意識してしまったじゃない!!ほら、リーグスト様も困ってるじゃない!!)
「…もしかして何か聞きたい事があるんですか?」
「!?は、はい!!そうです!!少し時間があればお聞きしても宜しいですか!!?」
食い付くように反応した自分にレリアナは、はしたないと恥ずかしくなり、より顔は赤くなる。
「では…家の庭にテラスがありますので其方でお話致しましょう」
「はい」
「では、私が案内します。庭へは屋敷を経由した方が早いので此方から行きましょう」
そう言いながらリーグストの後ろからシエラが出て来ると二人を家の中へと入れ、庭へと向かった。