プロローグ
「レリアナ=サレスティア。今日をもって私は君との婚約を破棄させて貰う」
彼女は人差し指と共に突き付けられた言葉を信じられず、「え…」と呆けた声が出る。
「な、何故ですか!?ラインハルト様!何故私は婚約破棄をされなければいけないのですか!?」
強い口調で訴えた彼女はラインハルトと呼んだ男性へと尋ねる。
「何故だと!!君は彼女にしたことを忘れたのか!!?」
彼女と呼ばれてラインハルトの背中の影から愛らしい容姿の女性がビクビクとした様相で前へと出る。
「君は彼女…アルマに度重なるイジメを執拗にしてたらしいね。彼女からその事を聞いているし、その光景を目撃している人も沢山居る。言い逃れは出来ないぞ」
ラインハルトの言葉に反応し、複数の人々が彼等の一歩後ろにまで前へと出て、前へと出て来た者達はレリアナも目にした事がある者達ばかりだった。
「た、確かに彼女に対して頰を打つ等の暴力行為をしたのは否定しません!ですが、彼女は複数の婚約者の居る男性へと近付き言い寄るという貴族の子女として自覚の足りない行動を注意したまでです!それでも彼女は聞き入れなかったのです!!散々注意をしても聞き入れないのであれば言葉では伝わらないのであれば行動で分からせるしかありません!!ですから…」
「いい加減にしろっ!!」
「っ!!?」
聞いた事もないような低く、強い声音で吐き出された言葉にレリアナはビクッと肩を跳ね上げる。
「貴族とかそういう下らない風習に囚われ、身分という立場に拘る。それは庶民や階級の低い貴族達を軽視する発言、実にプライドが高く傲慢だ。やはり君はこの国を支える王子の婚約者として相応しくない。それに君は忌むべき属性を持っている。そのような女を私の妻には出来ない。レリアナ=サレスティア、もう一度言う。今日をもって君との婚約関係は終わり、さようならだ」
「そ、そん…な…」
レリアナはその場で膝から崩れ落ちた。