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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
薔薇の国編
93/106

国外追放で四人行動Ⅱ

 エレーナは取り乱しました,と謝罪をする。ライラは笑っている。するとエレーナがライラを睨んで,


「貴女は期限というものを守った方が良いわよ」

「はいはいー」

「ところで,お二人は知り合いなんですか?」


 リリスは二人の会話を聞いてとても仲がいいのだと思った。リリスが二人にそう質問すると,学園に通っていた時代にできた友人とのことだ。仕立て屋を出た四人は観光のため,一緒に街を歩くことにする。

 エレーナは地図を広げておすすめの観光スポットに印をつけ始める。それを見て他の三人は行きたい場所を次々に口にしていった。


「このバラ園とかどうですか?」

「まずは図書館に寄るべきだと思います!」

「エレーナ,まずは教会に行くべきだよ」

「皆,分かれているわね……リリスの図書館というアイディアは却下だとして。バラ園も教会も世界的に有名なのよね」


 リリスの案は却下され,落ち込んでいた。しょうがないのでカーティスがドミニクに譲り,一番最初に教会へ行くことになった。三人とは違い,リリスは創世教の信徒というわけではないし,神に祈りを捧げるつもりもないので外で待っていると告げた。

 しかし,外で待ち始めてからすでに三時間くらいが経っている。いくらなんでも遅くはないだろうか?魔術書の解析をしていたのではっきりはしないが悲鳴が聞こえた気もする。

 不安になったリリスは教会に乗り込んだ。誰もいなかった。エレーナがここは世界的に有名な教会だと言っていたことを思い出す。だとしたらこんなに人がいないのもおかしい。

 リリスは十字架の間に挟まってある紙に気がつき,摘んで読んでみようとした。

 それは術式で,総合魔術に詳しい人しか知らないようなマニアックな魔術であった。

 『人攫(ひとさら)い』。消したい相手にその術を詠唱させるさせることによって本当に消すことのできるすごいものである。正確にいうと消すのではなく別の時空に軟禁されているらしい。


 エレーナもカーティスもミハイルも。ローゼンタールの禁書を読んだことはないに決まっている。リリスは【幻想魔術】でどうにかしたが。

 とにかく解放できるように頑張ろうと思っていたリリスだが,あることを思い出す。


「あれ,この国は薔薇の書の制作者の組織のモデルになっている……」

「やっと気がついたんだねー」

「じゃあ,黒幕は……」


 言いかけたところで後方から音がした。魔物だ。結界を張り,自動迎撃術式に変える。耳を澄ますと,魔物以外に声が聞こえてきた。隠しているつもりらしいが,一級魔術師のリリスにとってはただの目眩し以下である。


 * * * 


 円卓で会議をしていた。


「(一級魔術師が二人釣れたそうですぞ。他の一人も相当な魔力を持っています)」

「(一級魔術師とはいえ,知らなくても当然でしょう。何せ,これの記された書は禁書指定されているのですから)」


 男たちは笑う。愚かだ,と。この教会の司教は言った。


「あとどれくらいの魔力があれば()()させることが出来るのかな?」


 消失の黒幕は司教だった。不純なものが教会に入らないように結界が張られているので当然といえば当然だが。

 リリスはそんな司教の耳元で(ささや)く。それには殺意も含まれていた。


「何を復活させるんです?」

「それは冥界のセト様を。創世神様を倒していただくために……あっ」


 失言をした。してしまった。彼の言葉から,二神戦争は正しく伝わっていないのだと知ってリリスは残念に思う。伝わっているだけでもいい方なのだろう。


「私は手荒なことはしたくないんですけど。別時空にいる方々を解放して頂けませんか?」


 座っていた男たちは全員が立ち上がった。それは,警戒,そして決闘の合図だ。男たちは薄い紙を見せる。そこには,『二級魔術師認定証』と書かれていて,どこか自慢げだった。

 確かに,この世界に確定で現存されている中では二級魔術師が最上位である。


 ただし,逸話の中では二級魔術師は最上位という訳ではない。

 階級が一つ違うだけで力と才能の差は絶対的となっている。つまりは二級魔術師が一級魔術師に勝つことはない。絶対だ。

 詠唱して魔術が放たれた。それは聖魔術にして天使を呼び出すものだ。司教はニヤリと笑う。天使に勝てるはずがないという表情だった。


 しかし,


「何っ……!?」

「まあまあ,()()()()()()()だったらこんなところか。下位の天使ってところかな」


 かすり傷一つない。それどころか,詠唱なしで天使を軽々と撃破しているではないか。リリスは【仮想兵器】を展開させ,一人の首を斬る。

 さらに男たちは攻撃をしていった。それも全てリリスが空中に描いた円に吸われていく。

 司教はそこでやっと気がついた。絶対に戦ってはいけない相手と戦っていたのだ,と。


「それと,聖職者さんなのですから真面目に働いた方が良いですよ?」


 リリスが投げ飛ばされた司教に近づいてくる。一歩ごとに人の命が一つ消える。司教まであと二歩という時には,教会には二人しか残っていなかった。


「一級魔術師……」

「そろそろ解放して頂けませんか?」


 司教は分かったと涙目で言って詠唱をした。人の気配を感じてきたので彼は本当に戻してくれたのだとリリスは確信する。


「それじゃあ,(わたくし)はここで……うっ」

「神のご加護が在らんことを」


 そう言ってリリスは指を操作し,彼らの死体を消した。


「リリスー,どこー」

「カーティス!」


 声の在処を探した。外に出てみると,三人がいた。リリスはカーティスに飛びつく。

 どうやら殺害現場は見られていないようだ。

 四人は次の目的地であるバラ園へ向かって歩いた。


「(リリスさん,あの教会で人を殺したでしょ)」

「(……どうしてそれを)」


 カーティスとエレーナは前を歩いている。そこそこ距離もあるので小声で話をすればバレないのだった。


「(声が消えてたし。透視で見たんですよ。派手でしたね)」

「(あれくらいしないと監視しているもっと上の人に威嚇できないんですよ)」


 言わないで下さいとリリスがお願いすると,ミハイルは小さく笑う。


「助けてくれたんですから,そんなことはしませんよ」


 しばらくすると,マジェスティアで見た時よりも規模の大きいバラ園が見えてきた。


「これ!最近発見された紅玉の薔薇!」

「こういうの,翠蘭が見たら喜びそうよね」

「というか,もう喜び終わった後なんじゃないですか」


 カーティスは薔薇を見て,自らの手から百四十四本の薔薇を生成した。品種を理解してすぐさま形に変える彼の技量に驚いた。それにしても多すぎはしないだろうか。エレーナはその意味に気がついて顔を赤くしている。リリスは首を傾げて尋ねる。


「どういうこと?」

「自分で調べるといいよ。邪魔そうだし,消しておくね」


 指を円状に回して薔薇を消す。そして,別の花を生成してリリスの髪に挿した。カスミソウだ。可愛らしいと思ったカーティスはリリスにお願いして舞踏会の時につけてきてもらうことにした。


「あ,もう夕刻だよ。エレーナ」

「本当だ。それではまた舞踏会で」


 エレーナとミハイルは手を振ってリリスとカーティスに別れを告げる。いなくなったのを確認してから二人もホテルに帰ることにした。

 それから数日間,を過ごして舞踏会の日がやって来た。リリスは仕立て屋で着替え,馬車の迎えを待つ。

 ローゼンタール王家の馬車を待っている時がリリスにとって一番緊張していた。ライラに応援され,馬車に乗り込んだ。そこには国王であるアシュリー・ローゼンタールもいる。

 カーティスはリリスの服と同じ色のネクタイに燕尾服で,王家の紋章のバッジをつけている。


 乗り始めてから少し経つと,会場のような場所に辿り着いた。カーティスにエスコートしてもらい,入った。


 リリスは唖然としてしまった。そこにはスチュアート公爵夫人がいたからである。つまりはリリスの母である。

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