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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
機械仕掛けの国編
90/106

国外追放とただのゲームⅡ

「それ,本当に言ってる……?」

「うん。これくらいしか考えられないかも。ちょっとごり押し感はあるけど勝利条件は探さないとだよね」


 カーティスは少し悩んでいたが,リリスの考察を聞いて,頷く。確かに受付嬢は『勝利条件を見つけろ』と言っていたからだ。と言ってもあと一日半しかない。二人は急いで森の中を駆け巡って行く。リリスが気がついたということは他の機械人形も気がついている可能性が高いだろう。

 案の定,地図を持っていた二人組がゼルセピナのところへ行こうとしていた。しかし,そこにゼルセピナがいないことを確認すると先に元の道へ戻ってリリス達を襲撃した。


「普通に魔術を使えるなら私だって強いってば!」

「リリス,あんまり体力減らさないようにしてね」


 魔術を散らして二人を脱落にさせたリリスは,所持品の中から使えそうなものを探した。カーティスは地図を持ってニコリと笑う。リリスは自分が方向音痴だということを自覚している。何に使うのかをカーティスに尋ねると,


「リリスがたとえ方向音痴だったとしても,あの人たちは地図を見てここに来たんでしょ?だったらここに全ての神核の在り方が示されているっていうのが妥当じゃないかな」


 ということで,二人は地図を覗き込んで合計の神核の数を数えた。合計の数は三十個。なかなかに多い。残り一日半で三十個を集め切るのは難しいだろう。二人は最低でも十個,集めることにした。ただの生き残りゲームではないと確信した今,体力の消費を考える必要もない。人から奪って,奪いまくるのだ。

 リリスの表情が狂気的な笑みに変化したのを見てカーティスはゾッとする。あれはもうどうしようないと悟ってしまったような顔だ。


「さてっ,カーティスどこから襲撃しに行く?」

「襲撃する前提!?まあ,状況が状況なだけにそうするしかないんだけど!!」


 全力で止めようとしているカーティスだったが,今考えてみれば止める理由が思い浮かばない。リリスなら何かの間違いで死ぬこともないだろう。カーティスはため息を吐きながら頷いて指差した。


「まずはここかな。というか,神核は全部取られているって考えたほうがいいね。神核がまだ取られていないって考えている人を誘き寄せたほうがいいね」

「あっ,見て!神の名前が書かれてる……って言っても私,グリーシア神話はあんまり術式に組み込まないからよく分からないんだけど……」

「知らないの……?まず,一番人間に近い神はここにいるやつ。まあ,スタート地点にいるには妥当な人選かなぁ」


 自国(ローゼンタール)で語り継がれている神話と創世神話はしっかりと覚えているものの,他の神話についてはさっぱりで,元の世界の何かが基礎となっているものが分かるくらいだ。


「だとすれば,そこそこ強いけど主神レベルまでは至ってないところに行けばいいのかな」

「うん。それくらいだったらわんさか人がいそうだね」


 二人はゆっくり移動していった。目的地の途中途中で敵と遭遇したが,難なくカウンターを食らわせて行く。カーティスもああ言っていたものの,そこそこ楽しそうに戦闘をしていた。明らかに弱かった時は嫌そうな顔をしていたが。リリスが森の開けたところに足を踏み入れた。数々の機械人形達はその場から立ち去って行く。戦う意思がなさそうだったので話を聞いてみると,レベルの違う神がそこにはいるそうだ。命からがら脱出してきたらしい。


「ありがとうございます。カーティス,この感じだと『主神級』がいそうだよねぇ」

「リリス,笑みを浮かべないの。油断しないことね『召喚』」


 カーティスがそう言うと,魔法陣で囲まれて中心部から偽プレーメスが現れた。碧帝も現れ,彼を見た瞬間目を細める。


「リリス。気をつけたほうがいいよ。彼,ちょっと実力が計り知れないからさ」

「どういうこと?」

「ゼルセピナさんは一回戦ったことあるけど,プレーメスさんは一回も戦ったことないし,頭脳の方で強そうだしね」


 リリスも碧帝にアドバイスされて警戒をさらに強めた。プレーメスの吐いた一言。それは憎悪に塗れていた。


『お前らが……殺したのか?』

「「?何のことですか」」

『ゼルセピナ。俺は知ってる』


 絶望していたプレーメスは無言でリリス達に総合魔術を当ててくる。ゼルセピナが基礎で押してくるタイプなら,プレーメスは応用で誰も知らないような大魔術を放ってくるタイプだ。華國の会話でもそれが予想できる。カーティスが引き付けてリリスが術式を考える。そんな役割で彼と戦うことにした。

 早速プレーメスが魔術を放ってくる。それはリリスが一から考えた魔力分散に近い。まずはそれを考察し,次にどんな効果が付属されているのかを考えた。


 考えようとしたが集中できなかった。


 これはリリスの集中力が足りないわけではない。そういう術式なのだ。魔力が吸収され,少しずつ弱り始めてきた。


「リリス大丈夫!?」

「うん……カーティスは頑張って巻いてほしい」


 リリスは頭が痛くて押さえた。そんな中でも最大限に脳をフル回転させ,得た答えは。


「カーティス,プレーメスさんは持っているというか彼の目の前で使った術式の上位互換を解析して攻撃していってる!!」

「なるほど。だから魔術が使えたのか!」


 リリスの声に反応してプレーメスは彼女の方に向かってきた。プレーメスの目の前だと魔術を使うことができない。舌打ちをして後ろへ下がる。さらに攻撃を仕掛けるため,頭を押さえながら短剣をプレーメスへ振り回した。彼はそれを避けようとする。しかし,できなかった。彼は幻想を見た。

 その幻想とは,リリスが何故かゼルセピナに見えたのだ。それが【幻想魔術】によるものだと判断したが,どうしてだろう。リリスの現在の魔力だとプレーメスを騙せそうにない。そこで気がついた。


 なんとなく,リリスがゼルセピナに似ているのだと。そして,本能で彼女に攻撃をすることができないのだと。


 オリジナルのプレーメスもリリスに一目惚れしていた。オリジナルをほとんど完璧に再現したということは感情までも再現したということなのだろう。

 完全に油断してしまったプレーメスは,リリスの魔術に殺された。

 リリスが短剣の神核を吸収するところを見た。文字の数が「2」から「10」に変化した。カーティスは走ってリリスの方へ向かってくる。直後,リリスの視界がブレて倒れた。

 魔力がほとんどない状態で高度な【幻想魔術】を使ったのだから倒れないと逆にリリスの強度を疑ってしまうくらいだ。


『生き残りゲームは終了です!!みなさまお疲れ様でした!』


 カーティスはリリスを抱えて光に包まれていった。


 * * * 


 リリスは起きた。少し頭は痛かったが,自分で考えても代償の少ないものだった。そういえば,あの世界では死者が出ないとか言っていただろうか。

 ホテルにいたらしい。カーティスは既にチェスの会場へ行っているらしく,メモが残っていた。


『僕は先に会場へ行っています。もし回復したら来てくれると嬉しいです』


 カーティスの文字には特徴があり,左利きだから横文字が掠れているのだ。


 彼らしいや,と小さく笑ったリリスはその手紙を持って会場へ向かった。

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