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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
機械仕掛けの国編
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国外追放とただのゲーム

「今日は町をまわるわけだけど,カーティス。どこか行きたいところとかある?」

「うーん。特にはないかな」


 リリス達は機械仕掛けの国の遊戯場がない残り半分を散策することになり,あくびをしながら歩き始める。街には色々あった。食べ物や衣服類はもちろん,刃物を取り扱っているところまで。普段は多くは売っていないようだが,大会が近づいてきたので人間も生活できるようにという配慮らしい。

 さらに進んでいくと,受付嬢が椅子に一人で座っているのが見えた。座っているのは一人だが,周りには大勢の人が立っている。

 女剣士,メイド,魔術師,さらには前日に戦ってリリスが圧勝した大男までいる。リリスは何をするのかと彼女らに尋ねた。するとメイドは,


「生き残りゲームです。面白いですよ」


 生き残りゲームに面白いという単語が付属して,リリスは一瞬にして目の色を変えた。しかし首を振る。今ここにはカーティスがいるのだ。残念そうに別の場所へ行こうとするとカーティスが引き留めてきた。


「今日はリリスのしたいことをすればいいよ。明日は僕なんだしさ……あ,受付さん!僕たち参加します」


 リリスが参加すると聞いて昨日あの場にいなかったメイド以外は全員,戦慄した。リリス本人は「?」というように首を傾げるが,カーティスはなんとなく察したらしく苦笑している。

 二人の後に大勢の人たちが参加を申し出た。申し込み時間を過ぎたらしく,受付嬢は説明を始めた。


「ルールは簡単です。ただの生き残りゲームです。隠れて様子を見るのもよし,戦って人数を減らすのもよしです。ちなみに,会場は死なないように結界を張り,時間経過も早めています故,個人の時計は参考にならないことをご了承ください。あとは勝利条件を見つけられるように頑張ってください」


 それだけ言って,二人は光に包まれてゲームの会場に転移された。

 転移先は森だった。やはり,なんとなく神々の森に似ている。ということは,神々もいるのだろうかなどと考えたが,流石にそんなことはないだろう。リリスはカーティスと散策することにした。


「何にもないねーって何これ」


 カーティスが拾ったのは錆びた短剣だった。リリスは近くに隠してあった石板を見つけ,読み上げる。『神核を武器に捧げよ』と古代文字で書かれていた。

 碧帝はあげようか?と軽いノリで言ってくるが,リリスはそれを拒否する。


「多分これを有効に使うためにはこのエリアにいる神を倒さないといけないっぽいね」

「神核……こんなところまで把握しているんだね。リリス,よく古代文字読めたね」


 静かに笑うと,二人は神を探すことにした。

 時間経過速度を速くして,それでゲーム内時間で三日間だそうだ。受付嬢が主催者の一人ということを知ったリリスは,ゲームが始まる前にチェス大会と重ならないかを確認した。種目ごとに重ならないようになっているらしい。これは,二つ以上のゲームに参加できるための配慮だそうだ。

 それを聞いて安心したリリスはカーティスと方針を決めることにした。


「まずは前提条件だね。二人一組の生き残ればいいゲームで,なんでも使用可能か……」

「まあ,出来るだけ戦いは控えるっていう方針にした方がいいよねー」


 リリスの言葉を聞いてカーティスは驚く。てっきりガンガンと決闘を仕掛けようという方針だと思っていたからだ。

 それをカーティスがリリスに伝えると,彼女に呆れられてしまう。


「私をなんだと思ってるの……普通に体力の消耗は抑えておいた方がいいし」


 それ以外にも,疲れて集中力が切れてそこで襲撃されたら元も子もないという理由もある。

 リリス達が歩いていくと,偶然にも地図を見つけた。リリスは走ってそれを取ろうとしたが,掴んだところで別の人物の手があることに気がつく。カーティスではない。つまりは敵だ。

 リリスを見て,機械人形は嫌そうな顔をした。リリスは戦闘シミュレーションゲームの場にはいなかったと考えていた。機械人形の間にでもなんらかのネットワークがあるのだろうか。


 考察している間にも,男女はリリス達に語りかけてくる。


「貴女達に地図を渡すわけにはいかないよ」

「二人とも昨日は暴走していたらしいですね。町で話題になっていましたよ。これはもう戦うしか……」

「「戦わなくて結構なので!地図もあげますので!!」」


 リリスとカーティスは同時に言った。確かに地図はあったらラッキーなものだが,こちらには天才的に方向音痴なリリスがいる。あってもなくても変わらないだろう。そんなものを巡って戦って疲れを蓄積させるよりはさっさと逃げた方がいい。二人はそう判断した。

 機械人形二人組は首を傾げるが襲ってはこない。彼らも出来るだけ戦闘は避けたいのだろう。

 ここでも体力消費を避けるために二人は早歩きをしてその場から立ち去った。二人組が見えなくなってリリスは不安そうに言う。


「やっぱり地図とらなくて良かったかな……迷いそう」

「大丈夫,リリスは地図を持っててもちゃんと迷うから」


 カーティスにそう言われたリリスは頬を膨らませた。そんなことをしていると,碧帝が突然現れた。

 このエリアにいる神は碧帝が人間に操られていた時代に近く,ただ標的を殺すために存在する大ボスとのことだ。また,碧帝が見てもこれはグリーシア神話に登場する森にそっくりらしい。なぜグリーシア神話にこだわるのかは知らないが,さらに森の中心部らしきところへ足を運んでいく。


 一ヶ所だけ,切り開かれているところがあった。一つの切り株だけが置かれており,そこにはカードが刺さっていた。カーティスはそのカードに書かれてあった『召喚』と言う。すると,切り株を中心に魔法陣が展開される。

 その魔法陣にリリスは見覚えがあった。アルティスタで天使・マスティマを召喚させた時,今の魔法陣にとても似たものが展開された。


 少なくとも天使,最悪なケースはここで主神級の何かが現れることだ。

 カーティスもまずいと思ったのか,バックステップでリリスの方へ戻ってきた。その瞬間,魔法陣から光が飛んだ。咄嗟に腕で目を覆うと,碧帝からは油断しないで!という叱責をいただく。

 光が収まり,リリスとカーティスは目の前を見た。するといるではないか,ゼルセピナに似た『何か』が。

 リリスはそれを見てつい舌打ちをしてしまった。とりあえず先ほど拾った短剣を取り出す。取り出した錆びた短剣はその錆を落としていき,黄金の短剣となった。これを幸運と思ったリリスは【わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか】と詠唱した。しかし,何も起こらない。おかしいと思い,リリスは他の術式でも確認してみたが,やっぱり何も起こらない。


「これ……やっぱりこれしか使えない!?」

「じゃあ,戦うしかないのかぁ……」


 二人はため息を吐いて戦闘体制に入る。偽ゼルセピナは不敵の笑みで素早くリリス達に近づいてきた。それを必死に避けながら,反撃のチャンスを狙う。ゼルセピナは氷属性と風属性を最大限に使用した。基礎的な術式を尖らせに尖らせまくったのがゼルセピナである。具体的な対策などない。ただ,隙を見て攻撃を仕掛けるだけだ。


「カーティス,後ろから攻撃してっ!!」


 了解と言って,カーティスはゼルセピナの後ろへと回る。ゼルセピナからは攻撃されたが,それをリリスが全て受け止める。彼はゼルセピナに見つからないようにして短剣を彼女の腹部に突き刺した。そこでゼルセピナからの魔術攻撃が止んだ。それを見て,リリスは小さく笑う。あとは彼女から神核を奪えばいいだけだ。

 二神戦争で読んだ話だとほとんどの神の神核は人間でいう心臓部分にあるそうだ。それを覚えていたリリスはカーティスに押さえられたゼルセピナにゆっくりと近づき,心臓付近に手を伸ばす。抉り出すと,すぐに『神核』と思われるものは見つかった。

 ゼルセピナは消えてしまう。それが終わったあと,魔法陣も同時に消え,リリスの持っていた神核は短剣に吸収されていった。再び錆び始めていた短剣は神核を吸収することによって黄金の輝きを取り戻した。


「終わったーっ!短剣には『1』って書かれているね。なんだろう」

「うーん……?神核を吸収したあとすぐにそうなったから神核の量なのかな……だとしたらなんで?」


 いつもなら思考停止してすぐに別の話題に変えるリリスだったが,これはゲームだ。勝利条件が分からないとそもそもが始まらない。


 今,なにを考えた?


 受付嬢は『ルールは簡単です。ただの生き残りゲームです。隠れて様子を見るのもよし,戦って人数を減らすのもよしです。ちなみに,会場は死なないように結界を張り,時間経過も早めています故,個人の時計は参考にならないことをご了承ください。あとは,勝利条件も見つけられるように頑張ってください』と言っていた。つまり,これは勝利条件を探すことから始まっていたのだ。

 これは単なる憶測に過ぎない。とてつもない記憶力を持つカーティスに聞いてみる。リリスが考えていた文言と一字一句間違えがなかった。

 神核を吸収することで使えるようになる刃物。しかし,リリスの持つ術式よりも弱かった。これは他の人たちにも当てはまることだろう。実際,戦闘シミュレーションをしている人の中には錆びた短剣よりもよっぽど頑丈な武器を使っていた人だって少なくはない。だとすれば,リリスが持っている短剣には別の使い道があると考えたほうがいいのだろう。そこから導き出される結論は。


「神核を多く吸収させることが『勝利条件』だ!!」


 色々とこじつけだが,こう考えるしか他に勝利条件が思い浮かばない。

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