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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
機械仕掛けの国編
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国外追放と機械人形Ⅱ

「さてと,まずはどこに行こうかなー」

「あそことかどう?というか一風変わった魔道具屋に見えるけど」


 魔道具屋だと確認したリリスは,とても嬉しそうにそこへ入って行った。静かな場所だった。リリスは魔道具屋を営んでいる老人のような人に話を聞いてみる。


「貴方も機械人形なんですか?」

「そうじゃよ。その言い方だと,君達は違うのかね?」


 リリスが電脳の国に知り合いがいてそこまで向かうと簡潔に伝えると,老人は細い目を見開いた。電脳の国に何かあるのだろうか。そう考えていたらその老人は先ほどの様子へ戻っていき,呑気に話し始める。


「電脳の国。(わし)らの国に似ているところじゃよ」


 詳細を聞いてみると,電脳の国は見たこともない技術を使っているらしい。電脳(コンピューター)という時点でなんとなく想像は出来たが,リリスはカーティスの方を見てみる。彼はとても楽しそうに想像していた。リリスは少し笑って,魔道具を見始める。


「色々なものが置いてあるんですね」

「別の国で集めたんじゃよ」


 リリスは何も買わずに店を出た。確かに魔道具は魅力的だったが,【仮想兵器】という術式を手に入れた今,魔術書以外はいらないのでは?という結論に至ってしまう。

 カーティスも,何も買わずに店を出て次に行く場所を相談した。

 そうして,二人は少し話し合った後遊戯場へ向かった。


「ここが魔道具屋さんがおすすめしていた場所か……」


 その建物には違和感がある。なぜか,他のどの建物よりも大きいのだ。遊戯場と言っただろうか。不安と楽しみの感情が混じりながら二人で入口から入っていった。

 中の様子を見てみると,たくさんの人達が淡々と何かをしていた。術式を使って邪魔にならないように覗き込んでいると,それがチェスだということに気付く。リリスもしたことはあるし強い方でもあるのだが,機械と対等に試合出来るまでには至っていない。ここは観光客も多いのか,人間らしき姿も見えてくる。

 もちろん機械相手なので負けていたのだが。

 リリスも試しに戦ってみたのだが機械は最適な方法を見逃さない。十回試合をして勝ったのはたったの三回だった。


「意外と簡単だね」


 カーティスがそう言った。機械相手に全勝しているそうだ。彼の周りに機械人形たちが集まってくる。試合をしたいのだろう。カーティスにお願いしてみて,リリスも一試合出来ることになった。


 結果はリリスの惨敗だった。長く粘ってはみたものの,序盤に詰みかけていた。


「…………強すぎない?」

「そうかな。僕も全員と試合が終わったら行ってみるけど,チェス以外にもあるらしいから」


 リリスはカーティスと別れて行動をすることにした。

 この遊戯場は国土の半分を占めているらしく,年に一回,大会が行われるそうだ。大会まであと一ヶ月ということで遊戯場にたくさん人がいるらしい。リリスも誘われたが,ジェイクを電脳の国で待たせるわけにもいかないので断った。

 しばらく歩いていると,『戦闘シミュレーションゲームはこちら』と書いてあった。他に出来そうなものもないし何より面白そうだ。興味津々に入ってみると,ちょうど決闘をしていた。

 リリスに気がついた男が近寄ってくる。


「お嬢さん,これに興味あるの?」

「はい。すごく」


 リリスが即答する。男は笑っている。それは,嘲笑に近いものだった。リリスは首を傾げて純粋な口調で言った。


「何か変なことでも言いました?」

「変ではないけど,戦闘だよ?君みたいな華奢な人間にできるのかい?」

「実際にやってみないと分からないことでは?」


 男は再び嘲笑した。リリスが奥にあった実際に試合を行うであろう場所を見る。神々の森で見たところに近い。案の定,男に聞いてみると都市伝説とされている神が住んでいる森にある競技場を参考にしていると言っていた。

 しばらく見学していると,二人の試合が終わってそこから出てきた。


「その子誰ー?」

「参加したいって言ってる人間さ……誰かこの子と殺し合いたいって人はー」


 男がそう周りに問いかける。すると,全員が手を挙げた。一ヶ月後に行われる大会では一定の成果をあげないと参加できないらしい。そのためにリリスを利用しようという魂胆だった。時々リリスが弱そうという声が聞こえてきて苛立ちが収まりそうになかったが,なんとか堪える。

 結果,リリスは全員と殺し合えることになった。嘲笑した男からルール説明を聞く。結界で守られているから致命傷を与えても問題ないと言っている。基本的にはどんなものも使っていいとのことだ。

 一戦目は屈強な大男。斧を主な武器としているようだ。


「【魔力分散】はやっぱ使えないよねー」


 リリスの術式である【魔力分散】は,強力だが弱点がある。それは,人間以外には効果がないということだ。地脈から魔力を練ったりする強力な魔物には効果がない。

 戦闘シミュレーションと言ったものだから当然機械である相手は計算に強いが,対応力はあるのだろうか。


 例えば,ずっと魔術しか使っていない突然剣を使い始めたら?


「なにっ……!?」

「計算は貴方の方が得意のようですが,私は貴方よりも場数を踏んでいるんですよ」


 リリスにとっては,チェスよりも実際に体を動かして想定外というものがあるようなシミュレーションゲームの方が得意だった。これは元の世界でもそうだ。唯一,恋愛シミュレーションゲームだけは苦手だったが。

 しかしこれはただの戦闘ゲームだ。相手にとっての想定外を引き起こすだけでいい。そうやって相手を混乱させることが得意なリリスにとっては,簡単なことだった。


「これで終わりっとー!」

「「「………………」」」


 あっけなく倒されてしまった大男を見て,二人の試合を見ていた機械達が絶句していた。その大男はこの競技の中でもトッププレイヤーらしく,負けたことはほとんどないそうだ。そんな奴をリリスは倒した。徐々にざわざわとし始める。しかし,まだこれをリリスの実力ではなく運だと言い張る人たちもいた。リリスは,言い張っていた人たちを片っ端から倒していく。実力だと薄々感じていた人たちは,戦慄し始める。


「(あの子,怪物だわ……)」

「(あいつと戦っちゃいけないな。絶対に)」


 機械人形と戦っているのが楽しすぎて,リリスの顔がどんどんと狂気的な笑みに変化していった。彼女が機械人形達を見ると,彼らは素早く退散していってしまった。リリスは首を傾げる。何もおかしいことはしていない。ただ,戦って勝ち続けているだけなのに,どうして恐れられているのだろう?

 走ってきたカーティスは不思議そうに見ているが,リリスの顔を見て青ざめた。


「リリス……血,というか油……」

「ふふっ,どうしたの?」


 リリスには赤黒い油がベトベトとついていた。それは,戦闘時に染み付いたものだ。


「ちゃんと拭いたほうがいいよ。ほら,顔近づけて」


 カーティスに顔を拭いてもらうと,なんだかすっきりした気がする。リリスはカーティスにチェスの話を聞いてみた。


「どうだったの?どれくれらい勝てたの?」

「一応全勝だよ」


 リリスもニコリと笑って私も全勝と言う。カーティスは褒めてくれた。少々ひきつった笑みだった気もするが。カーティスは明後日,チェスの大会に出場できることになったらしい。前哨戦というやつだ。明日は二人で街を散策し,明後日にカーティスのチェス大会を観戦することにした。

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