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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
機械仕掛けの国編
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国外追放で料理をする

今日ビーフシチューの話を書いていたら夕食がシチューでした

「「…………」」


 リリスが一人だけで作った料理が完成してカーティスが見に,厨房へ行くとリリスは悟ったような目で料理を見ていた。なにかあったのかとカーティスもそれを見たのだが,料理とはいえない光景が広がっている。


「ま,まあ料理は見た目よりも味だからね……すっごいしょっぱい」


 フォローしようとしたカーティスだったが,無理なものは無理だ。ふと文化祭で出された料理とスイーツのクッキーを思い出す。すごく塩が入っていた気がする。そう考えてカーティスはリリスに質問をしてみた。


「あのさ,大さじとか小さじとかそういうのってどうやって測ってる?味見は?」

「もちろん目分量だけど……味見だって食べる量減ったら嫌じゃない」

「なんでっ!?」


 目分量で測る,味見をしない,火加減を調節しない,などと色々とまずいことはあるのだが一つだけでは大惨事にはならない。問題はそれらが重なることなのだ。カーティスが料理の基本を質問したが,リリスはほとんど正解できていなかった。カーティスはため息を吐きながら,


「なんていうか,リリスの料理音痴ぶりを馬鹿にしてごめん。もっと酷かったよ」

「諦められてる……」


 少し傷ついたリリスだが,別に構わない。料理なんかよりも早く町を探索したいのだ。素早く片付けて彼女自身で作った料理を食べた。カーティスが言っていたよりも不味くはないと思ったリリスはそれを半眼で彼女を見ているカーティスに言うと,


「……味覚もおかしいの……?」


 真面目な顔でそう言われたのでさらに傷ついたリリスだった。

 二人が外へ出てみると,雰囲気がなんとなく海底都市に似ていることに気づく。一つだけ違うとすれば,魔法も併用しているわけではなく,ただ機械産業が発達しているだけに見えた。

 ルーナは機械人形(ロボット)しか住んでいないと言っていたが本当かどうか分からない。疑っているわけではないが,流石に『しか』ということはないだろうと考えて町にいた人達に聞いてみたら皆は口を揃えて,


「ここには私たち機械人形しか暮らしていないんですよ」


 と言うばかりだった。それだけではなく,人間とは珍しいですねと言われてジロジロと見られたりもした。怖くなった二人はさっさとホテルに戻って次の日から町の探索をすることにした。

 暇になったカーティスは椅子から立ち上がってなにか意気込んでいる。どうしたの,とリリスが尋ねるとカーティスが彼女の手を掴んだ。手がとても温かい。


「リリス,今日は料理しようか!」

「え゛?」

「だから……はいっ,料理本買ってきた」


 いつの間にと思っていたリリスだが,背中を押されて厨房まで来てしまった。ここまで来たなら作るしかない。そう決意したリリスは髪を結んでよしっと言ってカーティスに質問をする。


「先生,まずはなにを作ればいいですかっ!」

「せ,先生……?」


 戸惑っていたカーティスだが,ビーフシチューを作ってみな,と言ってくれた。まずは食材を切ってみる。目の前に出されたのは牛肉に玉ねぎ,そしてカレールウに似た固形状の何かだった。固形以外を切って全てを煮込んだら完成するらしい。リリスは【仮想兵器】と言ってナイフみたいな刃物を具現化させた。


「待って,それでなにするの?」

「?食材を切るんだけど……」


 リリスがきょとんとしながら言うと,カーティスがため息を吐きながらリリスの方を見てきた。ついでに,碧帝も出てきてカーティスと一緒に呆れている。彼には碧帝のことが見えないのだが。


「リリス……それは,戦闘用の刃物だよね?」

「うん。けど使いやすいから」

「ちゃんと調理用の刃物を使いなさい」


 えー,とリリス。しかし,カーティスの冷たい視線に耐えられずちゃんと調理用の刃物を持って食材を切っていった。あと半分というところで交信術式で誰かから連絡が来た。


「あっ,今日って会議の日だった!」


 リリスが急いでそれに出ると,皆がとても嬉しそうな表情で話していた。

 何があったのかを聞くと,以前より解読をし続けてきた【薔薇の書】の内容が分かったことを報告していたらしい。

 リリスさんこそ何をしているんですか,とダンテに聞かれて嫌そうな口調で料理ですと言うと,会議の中に静寂が流れた。


「リリスーもう焦げそうなんだから集中して!」

「えっあっ,ってことで少し待っててもらってもいいですか?」


 そう言って,一級魔術師の会議を待たせてしまった。カーティスは慌てている。本当にビーフシチューが焦げてしまいそうなのだろう。交信術式を続けたまま,いよいよ料理も最終に入った。盛り付けをするらしい。リリスは用意した皿に盛り付けをしていった。この工程はリリスもきちんとできた。カーティスは味見をして頷く。それを見てリリスは認められたとよろこんだ。


「食べていい?これ,私が最後まで作ったんだよ!!」

「美味しいね。一緒に食べよう」


 いただきます,と二人が同時に言うと,食べ始める。二人で感想を言い合っていた。満腹になり,それとともに満足の気持ちでいっぱいになっていると,忘れかけていた一級魔術師の誰かがボソッと言う。その量のビーフシチューはどうするんだ,と。幸せになりかけていたリリスは現実とともに作りすぎたビーフシチューの方を見た。カーティスの見た料理本は十人分だ。そして,これを食べるのはリリスとカーティスの二人だけだ。

 リリスはジロリとカーティスを見る。彼はウインクして誤魔化そうとするが,即座にリリスがツッコミを入れる。


「カーティス,私の記憶によると量を間違えるのも料理音痴の一歩だったと思うんだけどー?」

「……申し訳ございませんでしたぁっ!!」


 ふん,と言いながら会議の席に着いた。この間の【薔薇の書】の報告とそれに付属してきた本について話し合った。それといって特別なものはない。リリスが意図的に情報を隠しているのだから当然だろう。

他にも,色々な研究について話した。


『それでは,本日はここまでとしましょう』


 交信術式を切断し,カーティスは正座してリリスの方を申し訳なさそうに見ていた。そして謝罪をして,


「本当に申し訳ない……で,これどうする?」

「ほんと,どうしようかなぁー?これ,消費期限とかないかな。なかったらこの国での食事はこれで済むんだけど」


 料理をしていたからか,疲れてリリスは眠ってしまった。カーティスはリリスの頭を撫でて微笑んでいる。それをされて,リリスも笑っていた。カーティスは目を擦りながらリリスの頬にキスをして眠りについた。


 * * * 


「ん,おはよー」

「おはよう。今日は町探索だけど……不安だね」


 機械人形しかいない国。少し不気味に感じたが,昨日作ったビーフシチューを食べると元気が湧いてきて,それと同時に意欲も湧いてきた。


「行こう」


 リリスはうん,と言って扉を開けた。

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