国外追放と機械人形
「カーティス,結局,お土産買えなかったねー」
「確かに。けど良さそうなお土産はなさそうだけど」
二人はこの国から出るために,一式の荷物をまとめ始めた。この行動で,リリスは死者の国でのことを思い出す。そういえばこんな感じだっただろうか,と懐かしんでいる。しかし,前とは違う点がある。リリスはカーティスの横顔を見てにこりと笑った。カーティスはそれに気がついて首を傾げた。
「どうしたの?僕の顔になんかついてる?」
「いいや。思えば遠くまで来たなぁって。ほら,地図だともう世界一周とかしちゃいそうじゃない!」
そう言って,リリスは地図を懐から出して広げた。そして,船が沈没する前の華國に指を差した。ローゼンタール王国からは遠く離れていて,そろそろ本気で世界一周を目指せるかもしれない。少し照れた後,ボソッと小さな声で言う。
「(カーティスがすごいいい人って分かったし,好きな人が見つかるとは思ってなかった……)」
実は,リリスはカーティス以外を好きになったことはない。初恋というものだ。元の世界でも異性を好きになったことはなかったので,どうやって対応すれば良いのか分からなかった。だけどカーティスはドギマギしていたことも知っていただろうに普通に優しく接してくれている。そんな行動から少しずつ惹かれていった。
「顔赤くなってるし,さっきのことも聞こえてたけど……僕のこと好きになってくれたんだね」
「もちろん!だって好きな人じゃない人からプロポーズされたって普通に断るわよ」
「ねえ二人ともー。すっごく時間かかってるけどーそんなに荷物あったっけー?」
マリーに扉越しで言われ,ハッとした。仮にもセト達を待たせている身だ。こんな雑談で長い時間,待たせるのは申し訳ない。すぐに扉を開けるとマリーは無邪気な笑みでこっち,と言う。ついて行ってみると,なんらかの準備をしているセトが見えた。リリスがそばにいたアリスに小さな声で聞くと,
「(これはそういう魔法よ。というか,魔法に理論なんてないから考えるだけ無駄よ)」
「(そういうものですか……)」
偶然や脳筋戦法よりも理論を重視するリリスは少し表情を曇らせる。そんなリリスの表情に気づくまでもなく,セトは淡々と儀式(?)を進行している。そして,最後に巨大な魔法と思われるものを魔法陣に当てるとリリスとカーティスの体が光に包まれていった。やはり,死者の国のヘルの時に近い。
「ありがとうー!!三人とも,元気でねー!!」
「他の末裔さん達にもよろしくって伝えてちょうだいね」
二人はアリスとマリーに手を振って消えてしまった。
* * *
リリスが目を覚ますとそこは,地上だった。立ちあがろうとすると,とても体が重い。海底だったからびしょ濡れになっているのも当然だろう。カーティスはすでに起きているらしく,頭を抱えていた。どうしたのかとリリスは聞いてみた。
「重大なことを忘れていた……」
「なにそれ?」
カーティスはリリスを指差して次に彼自身を指差した。そして,この場にいるのが二人だということをリリスに知らせる。正確にいうと碧帝を含めた三人なのだけれど……と思っていたリリスだが,カーティスは深刻そうな表情で爆弾発言をする。
「あのさ,ジェイクはどこに行った?」
「あっ」
リリスは辺りを見回すが,当然ジェイクなんているはずがない。リリス達が既に脱出したと思い込んで,別の国へ行ってしまったからだ。その真実に気がついたのはジェイクと交信術式で会話したからなのだが,その時の二人の顔は真っ青だった。ジェイクが迎えに行くと言っていたが,カーティスがそれを拒否する。
『本気で言ってる?すっごい遠いよ』
「ちなみに,ジェイクはどこにいるの」
『【電脳の国】ってところだよ。それよりさ,この国やばいよ!?なんかみたことないものがうじゃうじゃと……』
会話の途中でジェイクにブツ切られたが,最終目的の国が決まった。リリスが地図を取り出すと,二人は目を丸くしてそれを覗き込む。その国は,ローゼンタールの真隣だったからだ。しかし,東回りで来たリリス達にとっては最後に立ち寄る国となる。ここからだと結構遠いので,二人は話し合って寄り道をしながらそこへ向かうことにした。ジェイクには悪いと思いながらも,とてもノリノリだ。馬車がないので歩いて行くことにし,その周辺にいる雑魚敵を一掃することに決めた。
「ふぅ……疲れた……」
「流石にないよね?というか,今までどうやって街巡りやってたの……」
リリスの運動能力のなさというか,持久力のなさに呆れてため息を吐いたカーティスは彼女に尋ねた。
「リリス,魔術は使えないの?」
「使えはするんだけど。魔力の消費が激しくてね。海底世界から抜けた後っていうのもあるのかな」
そんなことを話しながら雑に敵を倒していく。その途中で魔物に襲われかけていた女性を助けた。彼女がカーティスにアプローチしているところを見て,やっとここが【乙女ゲーム】の世界だということを思い出した。正直,『二神戦争』の内容が乙女ゲームとはかけ離れすぎていて本当にあの愛と魔術の世界かを一瞬疑ってしまった。
思い返せば,カーティスがたかが悪役令嬢の微笑みで一目惚れするのもおかしい。それに,唯葉が彼の攻略のコツを教えてくれたときに言っていたはずだ。カリヤルの好感度を夏休みまでに一定の数値以上に上げておかないといけないらしい。その数値がどれくらいなのかは分からないが,幼少期から相当に仲が良かったはずだ。夏休みも学園祭の前に来ているのでそこで恋愛フラグが建つはずなんだろうが,カーティスはリリスにとても甘い。
まあこんなことだってあるのだろうと思って,リリスは気にしないことにした。
「ところで,そこの貴女はなぜこんなところにいたんですか?」
「え,えぇ。それは,食材調達のために魔物を狩りに来ていたんですけど……意外と難しくって」
「食材調達?近くに住居があるんですか」
リリスが質問すると,女性は指をさして国のある場所を教えてくれた。
「そういえば,食材ってなんですか?よければあげますよ」
「本当ですかっ!?ならば,琥珀をください!!」
琥珀と言われて,リリスはポカンとする。琥珀は宝石であって食べるものではない。リリスの様子を見て気がついたのか,女性は追加情報をくれた。
「えっと,正確に言うと琥珀は充電に使うんですけど……」
「「充電?」」
今度はカーティスも驚いてしまった。どうやら,女性の住んでいる国は機械産業がとても発達しているらしい。その女性はルーナと名乗り,そこまで案内してくれることになった。
機械人形しか住んでいないという謎情報をルーナに加えられてリリスとカーティスが混乱しかけてしまった。
「ここが私たちの国です。あ,一応人間が観光に来た用のホテルもありますから」
人間というどこかよそよそしい言い方に苦笑しながら,そのホテルへ案内してもらう。そのホテルを見て,リリスは絶句してしまった。一軒家なのだ。ホテルの従業員もいないし,今日から数日間,ここで過ごすことになる。しかし問題は従業員がいないことや一軒家であることではない。料理を提供してくれないことだ。リリスの料理音痴レベルを舐めてはいけない。カーティスは少し楽しそうに見ているが,リリスはそれどころではなかった。
「なんか,二人暮らし始めたみたいだよねー……リリス,顔色悪いけど大丈夫?」
「料理,作れない……」
絶望しているリリスを見て,カーティスは呆れている。
「そういえば修行サボって師匠のところに行ってたみたいなこと言ってたね」
「楽しそうで良かったです!それでは私はこれで」
そう言ってルーナは家の扉の鍵を手渡しし,どこかへ行ってしまった。魂が抜けたような表情をしているリリスを見てカーティスは,
「…………料理の練習,しよっか」
とだけ言ってリリスの方を軽めに叩いた。
どうでしたでしょうか?
少し過去が分かったキャラがいたり,神様の話だったり色々あったと思います。
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