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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
海底古代都市編
85/106

国外追放で脱出をする

 兄を天界へ運んだセトは両腕を挙げてこう言った。


「降参だ。兄さん,勝ったんだよ」


 それが聞こえていたのか,名もなき神は少し笑顔になっている。セトは彼の延命を優先し,兄に半分の神核をあげた。それを受け取った兄は目を覚ました。セトは再び兄に降参を伝える。


「本当にいいのかい?」

「いいよ」

「彼らはどうするの」


 兄は地上を見下ろした。勝った方が地上を支配するというルールで行われていたのだが,まさか人間が参加するとは思ってもいなかった。セトはため息をついて,


「彼らの中で戦争に貢献した人だけ,海底に移住させるよ。こっちの神は……大方もう地下世界にいるようだね」


 兄は苦笑する。ゼルセピナが全員地獄送りにしたのだろう。なんとなく察したセトは会話を切り上げて地上へ行こうとした。兄はそれを引き止める。


「どこに行くの?」

「皆と同じ,海底だよ」


 二人は手を振って,別れを告げた。


 * * * 


「「…………」」


 女から渡された『二神戦争』という本を読んだリリスとカーティスの間に沈黙が流れた。どこまでが真実かは分からない。しかし,なぜか信じてしまう自分達がいた。碧帝は突然出現して,


「これ,全部正解だと思うよー。少なくとも,私が出ているところに間違いはないね」


 とのことである。創世教の教えには反しているものの,妙なリアルさがある。カーティスがその本を女に返しに行く頃合いを見計らってリリスと碧帝は考察を始めた。


「碧帝の部分はどうせ昔語りとかしてて話したんだろうけど,なんでこんな一気に世界のこととか分かったのかな?」


 少し話してみたが,これ以上続けても得られるものは何もないと悟り,丁度カーティスが戻ってきたところで椅子から立ち上がって屋敷へ戻ろうとした時だった。女はカーティスの隣にいた。首を傾げて二人の方を見ている。


「あなた達,よく分かったわね。私がアリス・シュプラインだって」

「そうだったんですか!?」


 カーティスはリリスの一言に驚いている。彼は予想していたのだろう。そして,本を返す時に確認をした。そしたら正解だったという流れだとカーティスは教えてくれた。リリスの目の前にいる女がアリス・シュプラインだということを踏まえてリリスは質問をした。


「なんか,雰囲気が違いすぎません?」

「よく言われるわ」


 気づく人などいるのだろうかと思ったが,言ってくる人がマリーだと考えると納得できる気がしなくもない。何十億という長い期間過ごしていたら性格だって変わっていくのかもしれない。そう言ったかと思うと,今度はアリスがふらふらとリリスの側を通り後ろから抱きついてきた。


「……っ!?」

「うふ。驚くようなことかしら?慣れてないのね。末裔さん」


 末裔と言われて首を傾げたリリスだったが,アリスはリリスが一級魔術師だということを伝えたかったらしい。

 セトの屋敷に戻るとアリスに報告すると,私もついていくわと言われて三人で屋敷へ向かうことにした。


「交信術式かしら?」

「あっ,私のです」


 魔力を検知したのか,アリスはリリスに報告をしてくれた。出てみると,映し出されたのは翠蘭兄妹だった。


『リリスー,空いてるー?まあ空いてなくても話すんだけどさ』

「どんな内容ですか?」

『【薔薇の書】の解読がようやく終わったんだよ。結局はドミニクさん以外の全員で徹夜で解読なんだけどねー』


 どんな感じに解読したのと食い気味に尋ねるアリス。しかし,彼女のことなど全く知らない翠蘭と春雷(チェンレイ)は怪訝な顔をする。そしてアリスの声を聞いて他の一級魔術師達も翠蘭達の周りに集まってきた。


『リリス,その人誰?』

「アリスって言って……友達です!!」

『本当に友達多いよねー。あと数年したら全世界に友達できてそー』


 海底世界で統治している神も違うから同じ世界でまとめてもいいのかと考えたが,リリスがアリスをみると意外とノリノリそうだった。

 本題を思い出したアリスは再び問い詰める。どうやって解読をしたのか,と。


『リリスさんにも伝えておいた方がいいと思うので言いますけど……属性魔術の基礎と総合魔術の基礎が記されていました。これが世界最古の魔術書となるとこれを基にして魔術は広められたんでしょうね』


 それについては事前に本を読んで知っていたが,事実だったということに驚いた。ダンテは不思議な顔をして書物を見ていた。


『それと,【薔薇の書】には転生の方法というものが書かれていて,それを読み終えると本が現れたんですが,見覚えとかがありませんか?』


 そう言ってダンテは本の表紙を見せてくれた。表紙を見て,リリスとカーティスはさらに驚いた。それだけではなく,アリスもなんでという表情をしていたが一級魔術師も含めて全員が気づくことができなかった。


「なんで!!あれは団長にしか渡していないはずなのに……」

「あれ,そういえば団長君,【薔薇の書】を埋める時に一緒にあの本を埋めて術式をかけてたなぁ」


 この場で碧亭の声が聞こえるのはリリスとアリスだけだった。すぐに平常心を取り戻したアリスは微笑みを浮かべていた。


「うふ。そこに書かれていること,全てが真実よ。」

『だとしたら創世神話とは矛盾していますよ!だって,戦争なんてない平和な世界ですし』

「最初から最後まで平和な世界なんてないでしょ。大方,今信仰している名もなき神が戦争に負けそうになって神を創ったなんてださいでしょう?」


 アリスはため息を吐きながら,画面の方を指差す。そして,


「はぁ……この世界にまだ存在していて創世神話とやらには詳しく記載されていないルーツ,それには載っているんじゃない?」


 そう言われて春雷はあっ,と言った。どうやら気がついたようだ。


「【神殺しの光】ですか?」


 そうよ,とアリスは言って図書館を出ようとした。それを見て,リリスとカーティスは彼女を追いかけた。


 * * * 


「アリスさんっ……!」

「リリス流石にこれに追いつけないのはまずいんじゃ……」


 三人は屋敷まで競走をしていた。アリスとカーティスは余裕で走っているが,問題はリリスだ。魔術の補助がないとリリスはただの運動音痴になってしまう。今も喘ぎながら辛そうに走っている。リリスは,カーティスとアリスを見て,


「なんで……そんなにっ,走れるの……」

「逆にリリスはなんでそんなに走れないの?」


 カーティスが真面目な顔をして尋ねてきたので,少しダメージを食らったリリスだった。そんな彼女を見て,アリスは微笑ましそうに口角を上げていた。最終的には二人に協力してもらって走り切ったリリスは少し休憩してある疑問が浮かんできた。それは,なぜ交信術式が使えたかというものだ。マリーの説明によると,この海底世界では魔術が使用できなかったはずだ。そして実際にリリスも魔術が使えなかったので走っていたのだ。しかし,あの時の交信術式だけは使えていた。それを追及する気もないほどに疲れていたので,そのまま屋敷へ向かった。


「わあ,こんなに大きいのね。ここ」

「神様が住んでいるってだけはありますよね……」


 リリス達が屋敷へ入ると,マリーが出迎えてくれた。


「久しぶりだねー。雰囲気変わった?」

「何百年も会っていないもの。変わるに決まっているわ」


 そんなこと話しながら,マリーに案内してもらうとそこにはセトがいた。全てを知ったかのような表情でリリス達を見ている。座りなさい,とセトに言われて四人は食卓に座った。何か,重大なことを話すらしい。早速座って料理を食べ始めると話題を持ち出した。


『君たち,この世界から出してあげる』

「「え?」」

『だから,明日には解放してあげるから,今日のうちに荷物とかあったらまとめておきなさい』


 唐突に言われたものだから,びっくりしてしまった。マリーはとても喜んでいる。地上へ帰れるリリス達が羨ましかったようだ。

 食事を終えたリリスとカーティスは荷物をまとめるために部屋へ戻った。

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