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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
海底古代都市編
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二神戦争Ⅳ

 マリーは何が起こっていたのか分からなかった。碧帝を睨んでいるが,彼女は何も知らないようだ。実際,碧帝はマリーに攻撃していないし,何なら触れてすらいない。停戦協定を結んでいたので先程まで笑って会話していたところだ。碧帝が駆け寄ってくると,マリーの先の崖が崩れ落ちて石板が出現した。


「『戦争が終わりしとき,敗者は呪いで死すだろう』」


 碧帝がそう読み上げると,二人の間に沈黙が流れる。そして,碧帝は自分自身の心臓付近に手を突っ込んで神核のわずかを取り出した。神ではないと言っていたではないか,とマリーは辛そうに言うが,碧帝は,


「私は仙人って扱いだけど,神核はあるの。これ,食べたら死なないから!!」


 マリーは碧帝に強引に食べさせられ,何か,不思議な感覚になった。不老不死,とでも言うのだろうか。碧帝の【仮想兵器】に刺されても血の一滴すら出さない。碧帝は神核の種明かしをした。神核というのは名もなき神が創った神にしかないもので,それを所有しているものは神格を持ち,不老不死になって『魔術』という理論を持った超常的なものを使えるようになるということをマリーに教えた。すると,マリーは楽しそうな表情で彼女にアドバイスをしてみる。


「だったらさ,人間にも魔術が使えるようにしてあげなよ」

「どういうこと?」

「神様にしか使えないってのは卑怯でしょう?わたくしが研究してみてもいいのよ?魔術って理論なのでしょう。なら研究者として,いろんなことを調べたいわねー」


 碧帝はマリーの横顔を見た。彼女の瞳は,好奇心で覆われている。そんな様子を見て,少し和んだ。すると,マリーの懐から石板のようなものを取り出した。碧帝が何か,と尋ねると,マリーはただ携帯,とだけ答えた。


「なんて書いてあるのーわぁ光ったぁ!?」

「ふふっ,古代人かな?」


 二人が携帯の中を覗き込むと,『敗北』とだけ書かれている。二人が顔を見合わせて,笑い始めた。


「なんで戦おうとしたんだろうねー!」

「確かに。わたくしは碧帝と出会えて良かったわ。また会ったら,その時はよろしくね?」


 二人はハイタッチをして,遺跡を出た。マリーは携帯の画面を指でスライドさせて下へ移動させた。同じ陣営だった人からメールが来ていた。内容は,負けたから海底に行けというものだった。

 またね碧帝,とマリーは虚空へ手を振り,近くにあった海に飛び込んだ。不老不死になったことで,彼女は色々なことを見ていくことになるだろう。数週間話しただけの友達に再び会えることを願って,海底を探索し始めた。


 * * * 


「アレン……」


 アリスは,数週間前のことを思い出していた。フェンリルに噛み殺された死体。今でも考えただけで吐きそうになる。ドミニクは彼女を宥めることしかできなかった。そんなことをしていると,アリスは突然閃いたように目を見開き,ドミニクに顔を近づけた。


「どうしたんだい?」

「ねえ,団長。私の魔術の被験者になってくれないかな」


 ドミニクは魔術は神しか使えないものだと思っていた。確かに,現在では神しか使ってないだけで,人間に使えないという保証もない。二人はいたずらな笑みを浮かべて,早速研究を始めた。

 しかし,魔術を使えるのは現段階で神しか使っていない。二人が悩んでいると,もう誰もいなくなった拠点の扉の前に人影があることに気がついた。アリスが扉を開けると,やあやあと碧帝が入ってきた。ドミニクは彼女の顔を見て,神であるということに気がつく。


「何をしているんですか?碧帝様」

「あっ,君は私のことを知っているんだねー」


 神様という単語を聞いて,アリスは唐突にわぁっ!と驚いた。そして碧帝の手を握り,研究の協力をしてくれませんか,とお願いした。神というものだったから気まぐれで断るのだろうと思っていたアリスは覚悟をしていたが,碧帝は快く受け入れてくれた。


「で,どんな魔術を使って欲しいの?まずは基礎魔術からかな」

「あの……なんで引き受けてくれたんですか」

「えっとねー私の友達にアドバイスされたんだよ。魔術を人間にも教えてあげたら,って」


 碧帝はアリスとドミニクに基礎魔術といわれる属性魔術から,応用である総合魔術を伝えた。総合魔術の基礎を,習得するのには時間がかかったが,アリスは総合魔術に特化し,ドミニクは属性魔術に特化した。そうして彼女らは,書物に書き残した。その名も【薔薇の書】,それだけでは不安だったのでまずは拠点にいた人達を探し出し,彼らに伝えた。

 魔術はいつか,世界の中心となるのだろう。


「ドミニク団長。貴方はこれからどうするんですか?」

「どうするって……このまま地上にいるよ。不老不死になったなら時間はたくさんあるんだし,いろんな地域を見て回るよ」


 アリスとドミニクは微笑みながらそれぞれの道へ行こうとした時だった。碧帝は話しかけてきた。


「二人とも,人間が魔術を使えるようにしたんでしょ?」

「そうですけど……」

「ならさ,特別な称号を与えられてもいいんじゃないかな」


 どういうことかを碧帝に聞くと,左手の人差し指を立てて,片目を閉じながら話し始める。一級魔術師にならないか,と碧帝は二人に持ちかけてきた。


「「一級魔術師?」」

「そう!まあ,私が今即席で決めた名前なんだけど……魔術師の指標になればいいんじゃないかな?」


 アリスとドミニクはその提案に賛成した。その後,三人は別れて別々の場所へ行った。


「アレン,もうすぐで転生させることができるんだね」


 アリスはそう言って【薔薇の書】のあるページを開いた。その中には,基礎魔術や総合魔術ではなく,転生の方法について書かれていた。


 * * * 


 これは,終戦の前の話である。


「流石にこれは……セトくん,止めないとだよね」


 名もなき神とセトの戦いは,二人だけの戦いから全世界を巻き込んだ戦いにまでなってしまった。セトの方の天才研究者が造った【神殺しの光】は,名もなき神側の神をたくさん殺した。あれは厄災だ,封印していないといけない。そう考えた名もなき神は地上へ降り立ち,【神殺しの光】を回収することにした。

 たとえ,自分が死のうともこの戦争は終わらせる。そう決意した名もなき神だった。

 彼は顔も知られていなかったので簡単にマリーの研究所へ立ち入ることができた。


 しかし,その光から出ていた神々しさによって,彼は死にそうになっていた。なんとか光の発生源まで辿り着き,直に掴んだ。段々と魂が吸い取られていくのがわかる。彼が封印と言うと,【神殺しの光】は一瞬にして光を失った。

 彼はその場に倒れ,意識を失ってしまう。

 彼は特別なことは何もしていない。ただ,根性でなんとかしただけだ。


 突然現れたセトは悲しそうな表情で倒れている兄を見ている。


「本当,兄さんは無茶をしすぎだよ」


 負けた,と明るい声で言ったセトは悔しそうに泣いていた。

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