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悪役令嬢は国外追放で旅をする  作者: 駱駝視砂漠
海底古代都市編
83/106

二神戦争Ⅲ

 アリスとアレンが陣営の拠点を見つけてからおよそ二年が経過した。二人が布教した甲斐あってか,陣営の中でも,名もなき神を信仰する人が多くなった。そして,二人もその環境の中で楽しく過ごすことが出来た。


「アリスちゃん,今日は君とアレン君で食事当番だったよね」

「あっ,ごめんなさい。今行ってくる」


 拠点にはルールがあり,それには食事当番がある。食材を持ってきて料理を作る。これはトレーニングの意味も含んでいるらしいのだが,今となってはそれを意識する人はいないらしい。


 この二年間でアリス自身にも変化があった。それは,アレンと付き合い始めたということだ。少し恥ずかしかったが陣営の人達は皆,祝福してくれた。


「アレンー,食材採りに行くよー」


 アリスは大きな声でそう言ったが,反応はないし辺りを見回してもいない。先に採ってきてくれたのだろうとアリスは思い,急いで(ほど)けかかっていた靴の紐をしばって走り出した。


 * * * 


「なんでこいつと……」

「しょうがないでしょ。ちなみにその勢いでわたくしを殺したら貴女も死ぬんだから,気をつけてね。碧帝」


 マリーにそう言われてため息を吐いた碧帝はもう少し警戒しておけば良かったと過去を振り返り始めた。


 碧帝は街の探索をしていた時,マリーは兵器の素材を買いに行ってた時に偶然にも再開してしまった。碧帝の方は穏便に済ませたかったのだが,流石にマリーの方は何体もの兵器を碧帝に壊されたので鬱憤溜まっている。

 それを発散させるかのように魔法と魔術の戦いが始まってしまう。一般人を傷つけてはいけないという考えが二人の頭をよぎり,近くにあった遺跡に足を踏み入れた瞬間。

 蟻地獄のように二人は吸い込まれ,気がつくと地下にいた。そして首元を見ると首輪がはめられているではないか。お互いの首輪を見てみると,どちらも【呪い】と書かれていた。

 首輪を強引に外したり,片方が死ぬとどちらも死ぬという連帯責任らしく,二人は一時的に停戦協定を結びしかなかった。


「はぁ……なんか,よろしくね」

「ねえマリー。これってどうやったら解除できるかな」

「とりあえず……この遺跡を探してなにか情報を調べないと」


 そんなわけで,仲が悪い二人の遺跡探索が始まってしまった。


「碧帝ーこれさ,破壊してくれない?」

「はぁ?自分でやってよ」


 マリー曰く,魔法では壊せないらしいので魔術で壊して欲しいと考えているそうだ。仕方なく,【仮想兵器】で明らかに怪しい岩を破壊した。すると,比較的最近に書かれたと思われる石板を発見した。

『二つの神の戦が終わる時,一つの異常は取り除かれるだろう。そして,その片割れが世界を創る。そうなった時に首の呪いは解ける』


「ってことはさ,この戦争が終わらない限りわたくし達は解放されないんだね」

「はぁ……戦いに参加できない……」


 念の為,他も探してみたが石板はそれしか見つからない。よって,それが正しいことがほぼ判明した。


「この異常ってイレギュラーってこと?」

「分からない……けど,前はこの時代はイレギュラーが二人いるって名もなき神が言ってた」


 悩んでいてもしょうがないし,何より戦争が終わらないとどうやったって脱出が出来ないので諦めて一時的ではない停戦協定を結んだ。ずっと何もしないままだと暇なので,マリーはドローンを飛ばした。見たことのないものだったので碧帝は首を傾げている。


「なにこれ」

「ドローンって言ってね。これがあればここから出られなくても外の様子が見れるんだ」


 見ている途中で兵器が襲ってきたりしたが,二人は何もなかったような表情で破壊していく。鬱陶(うっとう)しいと思ってマリーが兵器の山を見ると,見知ったフォルムのものがあったらしい。


「わ,わたくしの初めて造った監視者がぁ……」


 あぁ,と碧帝は悟りの目でマリーを見る。話からするに,人生で初めて造った兵器を自らの手で破壊してしまったのだろう。死んだような目をしているマリーは置いておいて,碧帝はドローンで誰を追っていくかを探していた。すると,マリーが急に生気を取り戻した。


「そこの人達,というかそっちの青年。あれってそっちの陣営の中でも強力な神よね?」

「えーそうなんだ。私たちの陣営は詳しく人とか覚えてないんだよね」


 そう言った碧帝に呆れながら,マリーが画面に近寄ると青白い光が足元に残っていることに気づく。


「思い出した。わたくしが仕留め損ねて逃がしてしまった奴だ」

「だとしたらおかしいんじゃないの?だって,神格が高い神は触れただけで即死なんでしょ。一人だけ例外って訳でもなさそうだし」


 マリーと碧帝は顔を見合わせて意見を出し合っていたがどれもあり得なさそうなものだった。碧帝の根性で何とかした,という仮説にマリーは鼻で笑う。そんな訳ないだろうと。


 しかし,碧帝の仮説は正しかった。


 * * * 


 アレンに追いついたアリスは彼となにを作るかを相談していた。話し合いの結果,サンドウィッチを作ることに決まった。食材を見つけるために二人は楽しそうに歩いていく。


「ねえねえアレン,サンドウィッチに激辛調味料入れようよ!」

「だめ。団長さん,辛いの苦手だったの忘れてるの?」


 えー,というアリスの声を聞いて,アレンは笑っている。しばらく歩いて最後の食材を探していると,突然冷気に襲われた。それにははしゃいでいたアリスも気がついたらしく,一気に雰囲気が変わった。

 それでも冷気のした方へ歩き続ける。そこで二人が見つけたのは,怯えてヘルとゼルセピナの戦いを見ているプレーメスだった。


「あの,そこで見てて大丈夫なんですか?」


 アリスがそこそこ大きな声で言ってしまった。ヘルがその声に気がついて三日月のような笑みを浮かべる。そしてフェンリル,と満面の笑みで言った。地面から這い上がってきたフェンリルが三人に向かって走っていく。そして,フェンリルが喰らい付いたのはアレンだけだった。アリスが彼を庇おうとして前に出たが,もう遅い。フェンリルはなぜかアリスたちを食べずに地下へ戻っていく。

 その場にいた全員,何が起こっていたのかが分かっていなかった。そこに転がっていたのは少ししか残っていないアレンの体。それに気がついたアリスは口を押さえて吐き気を我慢する。


「ヘル……今のは?」

「なんで……なんで,フェンリルが死んでいるのよ!?」

「なに,やってるんですか。こんなに無惨に殺しておいて。心配しているのはいない怪獣なんですね」


 四人の間に沈黙が流れた。そして,動揺をしていたヘルをゼルセピナは地下に埋めた。顔が見えなくなるその最後まで,ヘルはなにが起こっていたのかが分からないような顔つきをしていた。ゼルセピナは最後にオーリルとだけ言うと,ヘルは恨めしそうに彼女を見つめていた。半身だけになったアレンはアリスに話しかける。


「ねえアリス。こっち来て……」

「どうしたの?回復するよ!」


 アレンは諦めの笑顔だ。アリスが彼の下半身を探していると,青白い光に包まれたものを発見した。それは,アレンの足首だった。


「なんで前の傷があるの……治療したはず!」

「多分,治療できてないよ。彼,気合いで光を消したんだ」


 アリスは目を見開いて驚いた。そして,彼の神核だけが残る。ゼルセピナは空の方向を見て目を細める。アリスが泣きながら彼女に尋ねると,優しい口調でゼルセピナは答えた。


「戦争が……終わった?」

「「え?」」

「今,セトが降伏をしたわ……けど,なんで?【神殺しの光】があれば勝つこと間違いなしなのに」

「詳細は分からない。それじゃあ,私たちはこれで」


 ゼルセピナと申し訳なさそうにしていたプレーメスはどこかへ消えていく。いなくなったことを確認したすると,さらに泣き始めた。そして,辛そうにアレンの神核へ手を伸ばす。掴んだアリスは,それを口に入れた。味は甘くてしかし苦さがあった。アレンはなぜ神核を残して死んでいったのか,そんな世界常識のようなことを考えていられるほどにアリスは余裕がなかった。


「アリス!?アレン君はどこに行ったの」


 団長はアリスの口元と神核を見て,なんとなく察していた。アリスは完全に正気を失い,ドミニクと呼ばれた団長に神核を勧めてくる。


「ドミニク団長,食べます?不老不死の効果があるんですよ」


 ドミニクはしょうがなくそれを食べて,彼女を拠点へ連れて行った。


 * * * 


「ないっ!?」

「なにがないのー。研究者なら造ればいいんじゃないの?」

「違う。神核がないと造れない【神殺しの光】が消えた!!研究所に置いておいたままにしてたわたくしがバカだった!」


 どうやら,何者かに【神殺しの光】を奪われたようだ。マリーが本気で死にそうになっていると,首輪の呪いが解除された。碧帝は脳によぎるあの石板の内容を考えていた。


「『二つの神の戦が終わる時,一つの異常は取り除かれるだろう。そして,その片割れが世界を創る。そうなった時に首の呪いは解ける』……終わったんだね。どっちが勝ったんだろうね」

「それも気になるけど,異常が取り除かれたってことは誰かが死んだってことだよね?世界を創る……わたくしも気になり始めてきたわ」


 二人で談笑していた時,マリーの胸から血が飛び出てきた。

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